JRグループは3月13日にダイヤ改正を予定しています。コロナの関係で今は見切り発車状態である、深夜運転の繰り上げを本格実施するなど、様々な部分で現在の状況を見据えたダイヤになるようです。また、例年通り、新しくお目見えする列車、車両もあれば、それと入れ替わりに去っていく列車、車両もあります。注目されるのが185系 「踊り子」 ですが、それ以上に二度見したのがJR九州の 「特急 「有明」 の廃止」 でした。えっ!? まだいたんだ・・・。

 

調べてみたら、現在の 「有明」 は大牟田-博多間の通勤特急のようで、朝だけ上りのみの0.5往復という変則運用。土休日は運休です。最盛期は昭和63年の28往復だったんですが、 それから考えたら、0.5往復って・・・。それじゃあ、アイデンティティも失われ、廃止になるのも無理からぬことです。

 

そこへいくと、国鉄時代の 「有明」 は九州島内を代表する特急で、東の 「ひばり」 「とき」 、西の 「雷鳥」 「有明」 といった具合に、エル特急の横綱格でした。

「有明」 の登場は昭和42年、九州島内初の特急ということで、門司港-西鹿児島間で運転を開始しました。この頃の鹿児島本線は非電化区間があったため、キハ82系を使用してのデビューということになります。

鹿児島本線全線電化が完成した昭和45年10月から電車化されて、 「明星」 や 「きりしま」 とペアを組んだ583系 (581系含む) が使用されまして、さらに1往復増発されて2往復となりました (昭和47年にはもう1往復増発) 。

山陽新幹線が博多まで全通した昭和50年3月のダイヤ改正では、山陽特急を追われた485系も加わるようになり、同時に10往復運転と大増発。この時エル特急の仲間入りを果たします。この頃はまだ、食堂車の連結・営業も行われていましたが、583系使用列車については50.3改正以降は営業休止となり、485系使用列車と合わせても10往復中3往復のみの営業となりました。

昭和51年には 「かもめ」 と 「みどり」 が運転を開始し、ここに九州特急の四本柱が出揃います ( 「にちりん」 は43.10から運転を開始) 。

 

昭和55年10月の改正で、急行の格上げ等で8往復増発されて18往復運転となり、それまでの 「雷鳥」 の16往復を抜いて在来線特急の中では最多運転本数のタイトルホルダーとなりました。この改正から583系使用列車が1往復減り、2往復となる一方、新たに 「にちりん」 に583系が充当されるようになります。それが国鉄時代における 「有明」 のピークで、昭和57年11月の改正では1往復減、59年2月の改正では2往復減と、ダイヤ改正の度に運転本数を減らします。そして59.2の改正では、九州島内の特急列車は485系に一本化されてしまい、長年 「有明」 の一翼を担った583系が運用から外されてしまいます。これは 「明星」 「彗星」 「なは」 といった583系使用の寝台特急が全て客車化 (あるいは廃止) された事に端を発するもので、581系の新製配置が南福岡電車区だったことから、九州とは何かと縁が深かっただけに、九州から583系が撤退するのはある意味、歴史の大転換と言えるかもしれませんね。

 

一旦は減少傾向にあった 「有明」 ですが、再び盛り返したのが国鉄最後のダイヤ改正である昭和61年11月。熊本発着便を中心に増発されて25往復運転となり、この体制でJR九州に引き継がれます。

 

画像は583系を使用した 「有明」 ですが、撮影場所は西鹿児島駅だそうです。鹿児島中央駅に改称されて久しいですが、さすがに 「西鹿児島」 という人、少なくなっているんじゃないですか? ましてや 「西駅で待ち合わせね」 という会話も誰もしないでしょう。

傍らに 「サロンカーなにわ」 が見えますので、少なく見積もっても昭和58年以降の撮影なのは間違いありませんし、583系 「有明」 の末期の姿ということにもなります。

国鉄時代の 「有明」 は、門司港・小倉・博多-熊本・西鹿児島間の運転だったんですが、門司港駅を発着する特急って 「有明」 だけでした。JRになって 「にちりん」 と 「かもめ」 に門司港発着便が加わりますけど、いずれも短命でした。新幹線接続というのが九州島内特急の使命ですので、門司港から発着する意味を為さなかったんでしょうね。ただ、小倉駅構内に電留線が無かったのか、小倉発着便の列車は折り返しに間が開く場合は、門司港まで回送されて、構内の電留線 (門司港運転区) で休みます。

 

3月の改正では七尾線に辛うじて残っていた413系も “卒業” することが決まっています。185系にも言えますが、 「有明」 の廃止は国鉄時代の “忘れ形見” がまた一つ、消えることを意味します。益々遠ざかっていく国鉄ですが、それはやむを得ないこと。数年前にJR東海が 「脱国鉄」 を完了させていますけど、次に 「脱国鉄」 を完遂させるのはどこの会社でしょうか?

 

【画像提供】

ウ様

【参考文献・引用】

日本鉄道旅行歴史地図帳第12号 「九州・沖縄」 (新潮社 刊)

JR時刻表 2020年10月号 (交通新聞社 刊)

ウィキペディア (有明、門司港運転区)