前回に続き、宗谷本線ネタです。

今朝の北海道新聞朝刊に掲載されていたこの記事を目にして、私はショックと寂しさを隠し切れませんでした…。

音威子府「駅そば」閉店 店主・西野さん亡くなる』

Yahoo!ニュース版 『創業80年、全国人気の「駅そば」閉店 北海道・音威子府村 闘病中の店主・西野さん、84歳で死去』

(※予告なくリンク切れになる場合があります)

 

濃いツユと、そば殻ごと挽いた黒い麺という独特の個性で全国にもファンが多く、道内で最も有名な駅そばであった音威子府駅の『常盤軒』ですが、闘病中だった店主が2月7日に亡くなられた事に伴い、翌8日を以て閉店してしまったそうです。

店主の方は既にご高齢で体調があまり思わしくなかった事もあり、2018年8月から長期休業していたそうですが、もう一度食べたいというファンからのラブコールに応える形で翌年の4月に再開を果たし、その年の夏に運転された臨時の観光列車『風っこそうや』運転時には列車が到着すると行列ができる程の大盛況でした。私は稚内行の風っこそうや1号に乗車する前、札幌からの特急宗谷で音威子府に着いた後に頂いたのですが、まさか…あの一杯が最後になろうとは…。

 

 

 

その後、2020年初頭から世界中を震撼させたコロナ禍の影響で同年2月から再び店を休業しており、結局再開する事はないまま、残念ながら店主の死去によって寂しい終焉となってしまいました…。

 

 

 

音威子府の駅そばは昔から有名で、何でもNHKが(番組名は不明)「日本一うまいそば」と太鼓判を押した事で、またそれが『鉄道ジャーナル』や当時の姉妹誌『旅と鉄道』で音威子府駅が記事に登場する際にそれに触れられた事によって全国区の知名度を得たと思います。

私がこの名物そばを初めて頂いたのがJR発足後1年目の1987年の夏で、当時中学1年だった私が初めて稚内まで普通列車で宗谷本線の旅をした時でした。当時は音威子府駅で長時間停車する列車も多く、往路に乗車した名寄8:04発の幌延行339Dは41分も停車していたため、その間に食べたのですが、初めて見る黒い麺に驚いたものでした。しかし、ツユも含めて確かに旨かった。「コレこそ本物のそばなんだ!」と妙に納得したものです。

帰路は翌日天北線経由で、早朝の稚内発722Dを敏音知で途中下車し、そこから乗った後続の浜頓別発740D(722Dとの列車間隔が43分と短かった)で音威子府へ到着し、乗り換えた10:17発の普通340Dでは車内持ち込みで頂いております。

天北線がまだ健在だった当時、店は島式の2・3番線ホーム上にある待合室(この建物自体はかなりの歴史があったらしい)に構えており、停車時間や乗換列車までの間に旅人はもちろん、列車の乗務員も名物そばで腹ごしらえをしたものでした。

 

その後、天北線が惜しくも廃線となり、駅舎を交通ターミナルとの合築駅舎に建て替えた際、ホーム上から現在の駅舎内に移転したのですが、来店客のメインは列車の乗客からクルマやバイクで乗り付けて来る人に移っていき、いつしか店の営業時間中に長時間停車する普通列車もなくなった事から、列車に乗って食べに行くには難易度が高くなったように思います。

 

 

 

それでも、名物そばを食べるために全国各地から多くの人が訪れ、時期によっては店が開店する前から行列ができる程の人気店でしたが、昭和ひとケタの時代から3代続いたこの店も結局後継者には恵まれず、いつかはこの時が来てしまう…と覚悟はしていたでしょうが残念ながら店主の死去に伴って静かに幕を下ろす事となりました。

最後まで、味を守り続けてきた店主様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

 

 

もう一つ北海道の名物駅そばといえば、知名度は音威子府に劣るものの味としては互角に渡り合える(※あくまでも私個人の意見です)石北本線の遠軽駅の『北一そば』がありましたが、コチラも残念ながら2019年に店主の死去に伴い閉店となってしまっています。

麺は至って普通ではありましたが、出汁のしっかり利いた濃いツユ(音威子府は昆布と煮干しで出汁を取っているそうだが、遠軽は昆布と鰹と思われる)は何処のお蕎麦屋さんで食べるそばよりも美味しく感じ、何といっても具材に合鴨を使用したメニューがユニークでした。

コチラの店主だった優しいおばあちゃんの笑顔が目に浮かぶ…。

今だから言えますが、お代わりを頼むとお代をまけてくれたりしたものです。

 

 

 

 

遠軽に続いて音威子府までもが駅そばの営業を終了してしまい、北海道から「コレはウマい!!」と何杯でも食べたくなる程美味しい駅そばは残念ながら消滅してしまったように思います(あくまでも私個人の意見です)。かつては北海道各地の主要駅に駅そばが店舗を構えておりましたが、その中でも私が勝手に『横綱級』としてランク付けしていたのが今回取り上げた2駅でした。別に、他の駅が不味いというワケではなく、旅の腹ごしらえをするにあたって味に関しても一級品であるという意味合いです。

現在、北海道内でいわゆる『駅そば』(駅舎内で一般の蕎麦屋店舗として営業している箇所は除く)が食べられる駅というと…

(太字以外は全て改札外のみの店舗)

函館本線…札幌、旭川

根室本線…富良野、新得

宗谷本線…士別、稚内

日高本線…静内

留萌本線…留萌

(※2021年3月現在。但し、コロナ禍の影響で休業している場合があります)

もう上記の駅だけです。近年まで営業していた駅としては、私の地元だった網走をはじめ北見、名寄、岩見沢、苫小牧、函館などがありましたが、様々な事情で撤退してしまいました。かつては列車に乗る前や停車時間の間、ちょっとした腹ごしらえに駅そばを食べるのが楽しみだったのですが…。

上記に挙げた各駅には、まだまだ頑張って頂きたいです。ただ、静内は3月末限りでの日高本線部分廃線後、駅共々どうなるのか気になる処であります…。

 

(※初投稿時からの記事を一部加筆修正させて頂きました)