【ロングレール工臨】JR東日本キヤE195系0番台量産車が登場

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JR東日本では、線路保守のために運行しているレールやバラストの「工事用臨時列車」について、従来の機関車牽引方式から事業用気動車への置き換えを急ピッチで進めています。

2017年11月に先行量産車として登場したロングレール輸送用のキヤE195系0番台ですが、量産車となるLT-2編成が日本車輌製造にて落成。2021年2月7日より輸送が始まっています。

先行車が故障頻発?苦節3年

増備が進み、尾久車両センターに大量配置されるキヤE195系

JR東日本では輸送効率が悪い機関車牽引列車の削減のため、エリア全域で運行されているレール輸送の内燃車(ディーゼルカー)への転換に取り組んできました。

このために投入されることとなったE195系の量産先行車は2017年秋に製造されました。

外観・基本仕様ともに先発のJR東海キヤ97形を踏襲し、耐寒・耐雪性能や保安装置の変更。カラーリングも帯色が異なる程度でした。

キヤ97形同様に2種類が製造され、ロングレール輸送用が0番台・定尺(25m)レール輸送用が1000番台とされています。

車両自体は既にJR東海で走行実績があるものでしたが、2018年から管内各所で始められた試運転では複数回の車両不具合が発生。置き換え対象となるはずの機関車に複数回牽引されて所属区へ帰還しています。

その後も何度も試運転を重ね、2020年4月よりようやく定尺レール用のST編成の量産車が落成。現在までに先行車を含めて23編成46両体制となっています。

一方のロングレール輸送については、貨車の代替の動きがあったものの、なかなか量産車が出てきませんでした。

今回、2021年2月7日よりロングレール輸送用量産車ST-2編成の甲種輸送(貨物列車としての輸送)が始まりました。

先行量産車で一通りの訓練が終わっていることから、残されたLT-3・LT-4編成の落成と前後して、いよいよ本格的に運用が開始されることとなりそうです。

落成したLT-2編成をみる

7日に出場したのは、キヤE195-102号側の8両です。

ベースとなったキヤ97形では13両編成で200mレールまでの対応でしたが、キヤE195系は11両編成で150mレールを輸送します。編成構成も量産先行車から変化がないため、LT編成は11両4編成=44両の製造で間違いなさそうです(形式全体の総数は110両)。

基本的な外観はそのままの姿ですが、排障器(スカート)が強化されたものとなっています。

先行車では定尺レール用・ロングレール輸送用ともに設計元のキヤ97形と同様の構造でしたが、定尺編成の量産車ではよりカバー範囲の広いものとなりました。同様の変更がロングレール用の量産編成に反映された格好です。

耐雪対応なのかJR東日本独自の事故対策なのかは不明です。

その他の搭載機器も若干の変更が加わったのか、車体重量についても少しだけ変化している模様です。

動力台車DT86・付随台車はTR239で、基本設計自体に大きな変更はなさそうです。

量産先行車が小牛田車両センターから尾久車両センターへ転属していましたが、このLT-2編成は新製時より尾久車両センターに配置となります。

LT-3編成・LT-4編成のいずれかが小牛田へ配置されるのか、量産車の完成を待って先行車を量産化改造してから配置を戻すか……といった動きが考えられます。

ロングレール輸送用「ロンチキ」の現在

ロングレール輸送編成の置き換え対象となるロングレール輸送用貨車、関東圏では越中島を拠点に活躍していた3編成・東北圏では岩切を拠点に活躍していた1編成です。

既にこれらの貨車の大半が運用を離脱していますが、その動きは少し珍妙なものとなっています。

まず、東北エリアで活躍していた赤褐色が特徴的だった1編成ですが、こちらは2020年9月から10月にかけて廃車のための配給輸送(いわゆる廃車回送)が実施されており、既に解体作業が行われています。

関東甲信越エリアで活躍していた3編成にはA,B,Cの編成名がありましたが、このうちC編成が2020年10月末に岩切へ転属しています。赤いロンチキ編成が淘汰されたことで次はキヤE195系……となるかと思われましたが、デビューまでのショートリリーフとして最後を迎える模様です。

当初の組合資料では仙台エリアが先行投入となる予定だったことが記されていましたが、量産先行車と今回のLT-2編成が尾久車両センターへ配置されていることと、C編成の東北エリア転用を考えると、ロングレール輸送については関東圏からスタートする動きとなるかもしれません。

関東に留まっていたA・B編成ですが、このうちB編成の一部については2021年1月に廃車のため郡山総合車両センターへ配給輸送。

A編成とB編成の残りは記事公開時点ではまだ留まっていますが、貨車上部の「緊締装置」と呼ばれる積載したレールを固定する器具が取り外されており、既にレールの輸送をする使命は終えたものとみられます。

混迷極める機関車代替

牽引側となる機関車についても、既に報道でEF64 37号機の運用終了が伝えられています。組合資料では既にEF81形の一部廃車が触れられており、これらの貨車の廃車業務が済めば、その他形式を含めて一部の機関車の廃車も始まることと推測できます。

晩年は数を減らしつつも様々なリバイバルカラーでファンを賑わせたJR東日本の機関車たち。早々に用途がなくなりそうだった田端のEF65形・仙台のED75形も検査が最近相次いで全般検査が施工されているなど、どの機関車がいつ代替されるかの予想は難しいところです。

当面安泰と言えるのは、双頭連結器を装備して車両の配給輸送が主な活躍となっているEF64 1030,1031,1032、EF81 134,139,140,141くらいでしょう。彼らは走行可能エリアも非常に広く、主な任務の配給輸送の合間に少数残された機関車のその他運用にも充てられます。

SL関連の動きは引き続き残るほか、まだ落成したばかりの新型砕石(バラスト)輸送用気動車GV-E197系・プレスリリースに留まっている牽引用「スーパークモヤ」E493系のデビューまでの機関車置き換えは一部に留まります。これらの車両の試験と量産が問題なく完了すれば、2024年度の機関車全廃という計画案もほぼ達成されることとなりそうです。

2008年度のJR東海で実施された機関車淘汰に比べるとゆっくり進行することとなりそうですので、残された機会を大事にしておきたいですね。

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画像元ツイート紹介

本記事の掲載写真のうち、2月7日出場のLT-2編成のものは、あおもみじおろし様(@HqwPDiFRxYGbRR9)より許可をいただいて掲載しています。ご自身のアカウントに未公開のお写真複数もご協力いただきました。

そのほか、尾久車両センターの写真はcentrair様(YouTubeチャンネル)より提供していただきました。

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