JR東海の新型特急「HC85系」量産車は64両 試験走行車も改造、2022年度から



JR東海は1月20日、特急「ひだ」「南紀」用の新型車両として開発した特急型気動車「HC85系」について、量産車の製造を決定したと発表した。2022年度から順次投入し、現在の「ひだ」「南紀」で運用されているキハ85系気動車を置き換える。

HC85系の試験走行車(右)とキハ85系(左)。試験走行車も量産車仕様に改造されて投入される。【画像:レインコート/写真AC】

量産車は2022年度から2023年度にかけ、64両を新製。2019年に完成した試験走行車4両も量産車仕様に改造して営業運転で使用する。車両製作費と試験走行車の改造費、付帯工事費を含む工事費は約310億円だ。

HC85系はハイブリッドシステムを採用した気動車。エンジンで発電した電力と蓄電池の電力を組み合わせ、モーターを回して走行する。キハ85系のような液体式気動車と異なり、推進軸などの回転部品がない。

JR東海によると、回転軸をなくすことで安全性の向上が図られるほか、液体式気動車特有のギヤチェンジが解消されることで乗り心地も向上。エンジン数の削減や駅停車時のアイドリングストップの導入により車内外の静粛性の向上が図られる。蓄電地の電力を加速時や停車時に使用するなどして、燃費がキハ85系に比べ約35%向上し、二酸化炭素の排出量も約30%減るという。

車体は一体成型を採用し、重要な溶接部は313系電車に比べ約6割削減。機器の動作状況などのデータを車両基地などへリアルタイムに送信する装置や、台車などの振動を常時監視する振動検知装置を導入する。また、踏切で障害物と衝突して脱線した場合でも列車の逸脱を抑えて対向列車と衝突することを防ぐ踏切用逸脱防止ストッパを設置する。

保安装置は、自動列車停止装置(ATS-PT)などの主要機器を二重系統化し、信頼性を向上。シカなど動物との接触による列車遅延対策として、衝撃緩和装置の設置やエンジンなど重要機器の防護の強化などを図る。

エンジンを車体に取り付ける防振ゴムを二重化して振動を抑える構造を新たに開発。二重床の防音床も導入し、車内の騒音を軽減する。台車は軸バネの硬さを上下・左右・前後の方向ごとに設定できる構造を採用し、上下・左右の振動を軽減。グリーン車にはセミアクティブダンパを搭載して左右の振動を大幅に低減する。

車内は防犯カメラを客室とデッキに設置し、セキュリティを強化。すべての車両で無料Wi-Fiサービスを提供するとともに、すべての座席にコンセントを設置する。また、全車両に収納容量を増やした荷物スペースを設置する。

また、カラーユニバーサルデザインに対応したフルカラー液晶ディスプレイの車内表示器を設置し、案内情報を見やすくする。ハンドル形電動車椅子に対応した車椅子スペースや多機能トイレも設置してバリアフリー設備を充実させるという。