【気動車…?】外観はホキ貨車!GV-E197系GV-E196落成

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JR東日本が新型の事業用電気式気動車を投入してファンから驚きの声が上がっています。

GV-E197系が姿を見せた翌日となる1月19日、今度はバラスト輸送用とみられる貨車……のような外観のGV-E196が新潟トランシスからお目見え。新潟東港鉄道藤寄駅まで陸送にて搬入されています。

工事用臨時列車には根強いファンも多いですが、新たな歴史の幕開けとなりそうです。

全国各地で活躍するホキ800形

バラストは線路の砕石のことで、走行音・揺れの軽減効果のため多くの路線で長年使用されています。

近年では「省力化」のため、スラブ軌道をはじめとするコンクリート製のものに代替されつつありますが、騒音軽減・コストの安さなど様々な要素からバラストが採用され続ける路線・区間も存在しています。

バラストは維持コストがかかる点がデメリットで、列車の重量・揺れにより噛み合わせを定期的に直している(マルタイと通称される保線用車両が活躍)ほか、列車重量・振動により角が丸くなってきたバラストは新しいものに交換を進める必要があります。

この新しいバラストの輸送〜散布作業で活躍しているのは、国鉄が開発・製造したホキ800形です。

活躍範囲はJRだけではなく、国内各地の私鉄に譲渡された車両、同型車両を私鉄が発注した車両、はたまた新幹線用の標準軌に履き替えて新幹線の貨車という異端車となった車両も存在します。

1958年から1974年と長らく製造されており、現在もなお国内各地で使用されているのはホキ800形ですが、後継形式が登場しないまま若い車両でも45年と鉄道車両としてはかなり長寿となっています。

新造車は工臨列車の革命児となるか

バラスト輸送については、近年の道路網の拡充や機関車牽引列車の衰退とともに徐々に活躍の場を狭めています。トラックでの輸送と保守用機械に代替される例が多く、これは今回GV-E197系を導入したJR東日本でも同様です。

JRでは北海道・東海・四国・九州は運用を終了。大手私鉄の同型車も既に相次いで淘汰されています。

引き続き工事用臨時列車として運行している鉄道会社についても、後継車両が見つからないまま令和の時代に突入した……というのが実状でしょうか。

この流れに反して牽引用途の機関車を新規設計で製造した名鉄も、貨車の方はホキ800形譲渡車であるホキ80形にブレーキ引き通し改造を追加で施して運用しています。

ファンの多くがこのまま衰退を予想していましたが、令和3年に後継の貨車が登場することとなりました。

EF81形電気機関車の代替としてEF510形500番台を投入したり(過去記事)、半世紀ぶりに新造食堂車を開発したり(過去記事)と時折“ぶっとんだ”車両を製造してファンの度肝を抜いてきたJR東日本。

JR東日本の工事用臨時列車の改革では、トラック輸送の方が合理的な路線は転換しつつ、鉄路の方が合理的な路線にはしっかり専用形式を投入する……というマネジメントをしているのかと思いますが、それにしても特異な車両を一から設計するコストに軍配が上がったのは驚きを隠せません

引き続き鉄路でバラスト輸送をしているホキ800形や同型貨車を運用する事業者にとっては、こちらの車両の存在がかなり気になっているところではないでしょうか。先代同様に、他社でも同型貨車が登場することに期待が持てます。

蛇足ではありますが、最近の終電見直しは保線作業の時間確保という建前がありました。列車運行をしている終電前・始発後にも移動できるのは保線機械ではなく車籍を有する貨車の強みです。

特に関東私鉄では廃止された会社が多いですが、この車両の活躍を機に工事用列車を復活させる鉄道事業者が出てくれば面白いな……などと淡い期待を抱かせてくれます。

既に牽引用途で使える車両を有している京急・小田急、最近機関車を買い込んでいる東武辺りは導入環境が整っている状態ですので、もしかしたら遠くない未来にあり得なくもなさそうです。

新造されたGV-E196を見る

今回製造されたのは、GV-E197系のGV-E196-1・GV-E-196-2の2両です。

いずれも所属表記が「高タカ」でGV-E197と同様に高崎車両センター所属となります。

編成番号表記は見られませんでした。ただし、車両の動きやここまでの仕様から、今回登場した車両などを含めてTS01編成と考えることができそうです。

外観としてやはり目を惹くのは、洗練されたライトグレーの塗色でしょうか。西武鉄道で活躍していたアイボリーのホキ81形を彷彿とさせますが、牽引車のような緑帯は入りませんでした。

車両構造としては一般的なホッパー車の形状を踏襲しており、ホキ800形同様に上から積載して下から線路へ散布する設計も同様です。

車体長としてはホキ800形よりは長く見えます。正確な寸法は不明ながら、最大積載量はホキ800形と同一となっており、車端部(デッキ)が長く取られている印象を受けます。

デッキにはブレーキ関連の機器が複数設けられています。

連結器は密着連結器となっています。前日に登場していたGV-E197形では両端となる車両に反射板仮設用フックが設けられていましたが、今回落成した2両には設けられていません。この車両たちは中間に挟まる格好であれば妥当で、留置順序としても合致します。

そして、両端に双頭連結器付きのGV-E197を連結したプッシュプル方式が実運用の基本であれば、双頭連結器同士の連結は困難……という運用上の疑問、GV-E197系が2両で同じ編成番号という疑問も解消します。

名鉄工臨方式の気動車版を基本としつつ、間に挟む両数や車両を付け替えて柔軟な運用がされるのでしょうか。

作業は雪のなかで進められていました。撮影をしているだけでも手足の感覚が麻痺してしまうほどでしたので、関係各社の皆様には頭が上がりません。なお、撮影時点ではGV-E197-1との連結はされていません。

編成順序としてはGV-E197-1+GV-E196-1+GV-E196-2+(距離があるためもう2両程度?)+GV-E197-2と構成されるものと見られます。

甲種輸送時点からこのプッシュプルスタイルが実現しそうです。

このほか、改めてGV-E197-2を確認したところ、甲種輸送時のブレーキ読み替えを示唆する貼り紙が見られました。

GV-E196では従来のホキ800では見られなかった機器箱とそのためのデッキ部が広く取られており、GV-E197系は電気指令式ブレーキをベースとしているものとみて差し支えなさそうです。

JR東日本・新潟トランシスでは過去にバラスト散布に関連した遠隔制御を特許取得しており、この車両で採用されていると推測できます。今後の詳細情報が待たれるところです。

輸送の様子(YouTube動画)

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