電磁直通ブレーキを使用している従来の車両との併結を可能としつつ、電気指令式ブレーキを採用して登場した小田急3000形。
当時の小田急は分割併合が盛んで、異なるブレーキ方式の車両を併結して運転できるようにすることで、新しい技術への移行をしつつ、運用上の制限を設けないことに成功しました。

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4両で現在も電磁直通ブレーキを使用しているのは1000形のみとなり、ブレーキ読み替え装置を搭載している車両についても、使用を停止する措置が行われた編成が増えています。
ブレーキ読み替え装置を使用した小田急での運転は、いよいよ終わろうとしているようです。

ブレーキ読み替え装置の採用によるブレーキ方式の変更

昔の小田急では、小田原線の本厚木から先と江ノ島線はホームの長さが6両までの駅が多く、急行は相模大野での分割併合を日常的に行っていました。
分割併合を効率的に行うため、小田急の通勤型車両は電磁直通ブレーキに統一されており、平成になっても1000形を製造していました。
ロマンスカーでは7000形から電気指令式ブレーキとなりましたが、通勤型車両は分割併合を行う関係でブレーキ方式の変更ができなかったのです。

1995年に登場した2000形は、8両固定編成となったことで分割併合を考慮する必要がなくなり、電気指令式ブレーキを採用することができましたが、2600形や4000形の置き換えを進めるために登場する予定の新型車両では、分割併合を考慮する必要がありました。
そこで、小田急ではブレーキ読み替え装置の採用を検討するため、1999年に2000形を使用して試運転を行うこととなります。
2000形には試験のためにブレーキ読み替え装置が搭載され、当時在籍していた全ての4両と併結して試運転を行いました。

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試運転は多摩線で行われ、小田急では通常見ることができない12両編成での運転が見られました。
そして、この試験から数年後、2001年に3000形がブレーキ読み替え装置を搭載して登場し、異なるブレーキ方式の車両による併結運転が開始されたのです。

ブレーキ読み替え装置が搭載された車両

2001年に登場した3000形は、6両の全ての編成にブレーキ読み替え装置が搭載されました。
箱根登山線への乗り入れが解禁されたことによって、急行で運用される機会が増えていた2600形を置き換えたため、3000形と従来の車両の併結運転は日常的に見ることができました。

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3000形以外でブレーキ読み替え装置を搭載した車両としては、8000形の6両も忘れてはいけません。
リニューアルによって電気指令式ブレーキに改造された6両の編成には、ブレーキ読み替え装置が搭載されています。
4両の編成についても、ブレーキ読み替え装置を搭載する予定だったと思われますが、通勤型車両による分割併合を廃止する方向となったことから見送られたようです。

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ブレーキ読み替え装置を搭載した車両の変わり種としては、総合検測車のクヤ31形があります。
1000形と繋いで運転するため、ブレーキ読み替え装置を搭載しているのです。

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ブレーキ読み替え装置は3形式に搭載され、8000形や3000形は従来の車両と併結して運転されました。
併結の対象となったのは全ての4両の車両で、4000形、5000形、9000形、8000形の未更新車、1000形の未更新車でした。

分割併合の廃止と併結相手の固定化

日常的に分割併合を行ってきた小田急でしたが、湘南急行や快速急行といった、途中駅での分割併合を行わない優等列車が増えてきました。
2008年には箱根登山線に乗り入れる急行が廃止となり、途中駅での分割併合が大幅に削減され、多くの列車は10両のままで運転されるようになりました。
そして、2012年には通勤型車両による分割併合が全て廃止となり、途中駅で併結相手が変わる運用が消滅することとなりました。

分割併合の廃止後は、併結相手をある程度固定することが可能となりました。
その後の小田急は、極力ブレーキ方式が揃った車両同士で併結を行うようになり、異なる形式での併結運転や、ブレーキ読み替え装置を使用する必要があるペアはあまり見られなくなっていきました。

8000形の全編成がリニューアルされた後は、電磁直通ブレーキを装備する4両が1000形のみとなり、3000形と併結して運転する姿が少し見られる程度となりました。
そして、リニューアルの進行や一部の編成の廃車によって、1000形の未更新車が減少し、ついにブレーキ読み替え装置の使用を停止する編成が出てきました。
小田急におけるブレーキ読み替え装置を使用した運転は、いよいよ終わろうとしているようです。

おわりに

1000形の未更新車が減り、ブレーキ読み替え装置を使用して併結運転をする必要がなくなりました。
電気指令式ブレーキへの移行を進めるために搭載されたブレーキ読み替え装置は、その役目を静かに終えようとしています。