しなの鉄道の新型SR1系「ファンド」で資金調達 個人向け「115系部品取り」などセット



しなの鉄道(長野県)は「車両更新ファンド」でSR1系電車の導入を進めることを決めた。1月14日から募集を開始する。同社と投資会社のミュージックセキュリティーズ、三菱地所が1月6日、発表した。

しなの鉄道のSR1系(一般車両)のイメージ。【画像:しなの鉄道】

SR1系はしなの鉄道の新型車両。この車両の導入資金の一部を、インパクト投資(環境負荷軽減など社会や環境に影響を生み出す組織などに投資すること)を活用したブレンド・ファイナンス(個人や法人、官や民など、期待されるリターンが異なる投資家ごとに異なる条件を提示)で募集する。ミュージックセキュリティーズによると、第三セクター鉄道の新型車両の導入でファンドを活用するのは、日本では初めて。

募集総額は5000万円で、個人から3000万円、機関投資家などの法人から2000万円集めることを目指す。一口の金額は個人が5万円、法人が100万円。募集期間は1月14日~6月30日、会計期間は7月1日から2031年6月30日まで10年間。事業計画達成時の償還率(源泉徴収前)は個人が107.2%、法人が108.8%だ。

個人向けは、決済金額のうち半分が投資、残り半分は体験イベントや沿線特産品などの購入に充てられる。購入分は個人投資家が投資後に選択でき、観光列車の食事付き乗車券と沿線の日本酒・ワインや特産品の提供、沿線温泉地の宿泊券がセットになったプラン、115系の部品取り体験とオリジナルグッズがセットになったプラン(応募多数の場合は抽選)を用意しているという。

ミュージックセキュリティーズと提携関係にある三菱地所は、東京都心の大手町・丸の内・有楽町地区の事業者や就業者に向けた情報発信などで支援する。

しなの鉄道は、北陸新幹線に並行するJR東日本の在来線(信越本線の軽井沢~篠ノ井間と長野~妙高高原間)を引き継いだ第三セクター。車両は国鉄時代に製造された115系電車を使ってきたが、老朽化のため新型車両の導入が計画され、JR東日本のE129系電車をベースにしたSR1系が開発された。

まず昨年2020年、SR1系の「ライナー車両」がデビュー。クロスシートとロングシートの両方に変換できるデュアルシートを備えており、乗車券のほか指定券が必要な有料快速列車でおもに運用されている。今後は通常のボックスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシートのSR1系「一般車両」が順次導入され、115系を置き換える計画だ。

2020年にデビューしたSR1系(ライナー車両)。【画像:しなの鉄道】

しなの鉄道とミュージックセキュリティーズによると、2両編成1kmあたりの消費電力は115系が5.03kwhなのに対し、SR1系は約40%減の3.02kwh。導入が完了すれば、年間で約3600t以上の二酸化炭素(CO2)の削減が予想されるという。

ミュージックセキュリティーズは「ファイナンスを通じて鉄道における環境性能の向上に寄与するとともに、地域の足である第三セクター鉄道会社を支え、関係人口の増加や地域活性化につなげてまいります」としている。