かねてからの経営危機に加えてコロナ禍による利用客の急減と、何かと明るいニュースに恵まれないJR北海道ですが、同社は12月9日に2021年春に予定されているダイヤ改正(同社では「ダイヤ見直し」と呼んでいる)についての概要を発表しました。

 

JR北海道プレスリリース「来春のダイヤ見直しについて」

 

その全容を紹介するとあまりにも長くなってしまうため、今回の記事はその中からいくつかピックアップして紹介したいと思います。

 

 

①特急列車の減便・減車

特急北斗、おおぞらについてはそれぞれ基本編成を5両に減車し、利用状況に応じて増結される事になっています。

本数も6往復のおおぞらは不変ですが、12往復だった北斗は現行の5号と14号(キハ281系)が閑散期の曜日運休、つまり不定期化され、これにより元々車両数に余裕のあるキハ281系にも一部廃車の可能性が出てきました。

 

 

それに加えて、北斗の上下ともに最終便である23号と24号(キハ261系)が廃止される事になりました。

このうち下り23号は新函館北斗で東京を15:28に発車する新幹線はやぶさ33号に接続していましたが、改正後は1本早い便に乗る必要があるため東京での滞在時間が1時間程短くなってしまいます。

上り24号は札幌を20:00に発車するため、遅くまで仕事をした後乗る分には便利だっただけに残念ではあります。函館や新函館北斗に深夜に到着し、駅周辺のホテルで宿泊後、北海道新幹線の上り初電であるはやぶさ10号に乗るというのを私は2回程した事がありましたが、改正後は同じ行程を使うのは不可能になります。

(せめて、夜行列車の急行はまなすが残っていれば…)

 

 

北斗24号廃止の穴を埋めるために、改正後は最終便となる22号が現行より36分繰り下げますが(これに関連して後続の東室蘭行すずらん10号も時刻繰り下げ)、それに伴い22号から新函館北斗での新青森行新幹線はやて100号への乗継は不可能になり、利用が低迷している北海道新幹線の利便性はさらに低下します。

今回の時刻繰り下げにより、函館よりも遠い釧路への最終便・おおぞら11号(現行19:39)よりも北斗の最終便は1時間近くも早い出発となります。

 

 

この他に特急カムイは2往復が土休日と多客期のみの運転となり、大雪の全列車とサロベツの1往復は閑散期の曜日運休という形で不定期化されます。

 

 

運休日は4・5・10・11月の火・水・木とされていますが、その日に関しては運転間隔が大きく空いてしまうため非常に不便になるのは必至です。元々利用客が少ないからといえばそれまでですが、だからといって本数維持のまま短編成化するワケにもいかず、キハ183系ならば最短3両(※先頭車でトイレ付のキハ183-1501・1503のいずれかを連結すれば2両でも可)で走らせる事が可能だとしても、方やキハ261系は2両1ユニットによる構成なので最短でも4両編成にせざるを得ないという、気動車ならではの機動性に欠けたローカル線に不向きの車両設計なのが仇になってしまっています。キハ261系こそ、西日本や四国の特急気動車のように最短2両で走れる車両として開発すべきだったのですが、そこまで短編成にするなら特急を走らせる必要はないというのがJR北海道の考え方なのでしょうか。

 

 

 

②普通列車の減便

札幌圏をはじめとして、地方路線の普通快速列車も減便の対象になりますが、ここで取り上げたいのが、根室本線の滝川~富良野~東鹿越の普通列車と、2016年の台風による被災で長期間不通となっている東鹿越~新得の列車代行バスの一部廃止です。

滝川を9:42に発車する2475Dは、12:00に東鹿越に到着後5分後に発車する新得行の代行バスに接続しますが、途中の富良野でも別に運行される代行バスの快速便に接続し、これに乗り継げば12:50に新得に到着後、5分後に発車する釧路行2427Dに接続するため、災害で分断される以前は『最長普通列車』だったスジに乗る事ができました。釧路到着後は根室行や網走行にそれぞれ乗り継ぐ事ができ、札幌をはじめとして倶知安、苫小牧から1日でぐるっと北海道を廻る事ができるため、18キッパーには重宝されたコースでした。代行バスは18きっぷ期間の休日は混雑する事もあった程です。

 

しかし、2475Dは富良野止まりとなり、それに接続する代行バスは快速便も含めて2本とも廃止となります(東鹿越からの折返し2480Dの全区間と接続する新得からの代行バスも廃止)。つまり上記のコースでの乗継は不可能になってしまい、18キッパーにとってはますます移動しづらい北海道となってしまいそうです。18キッパーのために列車を走らせる余裕がないのもそうですが、代行バスを並行して2便も走らせる運行経費もバカにならなかったのでしょう。この富良野~新得はJR北海道がバス転換を希望している区間でもあり、減便は廃線に向けた布石なのでしょうか。

 

もう一つ廃線への布石といえば、存続が危ぶまれている留萌本線も前後の列車と運転時刻が接近している下り1本、上り2本の列車が廃止されます。特に留萌13:30発の4930Dは12:07に到着する4925Dに連結されて締切回送されてきた車両の折返し運用で、そのため4925Dは同線で唯一の2両編成でしたがそれも消滅する事になり、全列車が単行での運転となります。運転本数も下り8本、上り9本と変則的だったのが改正後は上下7本ずつに揃えられます。

終着駅のある留萌市が廃線を容認した一方、通学利用が多い深川~石狩沼田の自治体はあくまでも存続を希望しており、同線の存廃問題の行方は如何に…?

 

 

 

③H100の大量導入によるキハ40の置き換え

 

 

既に函館本線山線区間に導入されている電気式気動車H100が本格的に増備され、旭川運転所と苫小牧運転所にも配置されます。これにより宗谷本線の旭川~名寄のほとんどの列車(名寄以北で活躍するキハ54の送り込みを兼ねた列車以外)、石北本線の旭川~上川の1往復、室蘭本線の長万部~東室蘭の全列車、室蘭~苫小牧の大半の列車が置き換えられ、石北本線直通を除く宗谷本線と室蘭本線の苫小牧以西の普通列車からは長年活躍したキハ40がついに撤退する事になるでしょう。塩狩峠を越えるキハ40はもうすぐ見納め、そして『日本一の秘境駅』小幌へはキハ40で行く事もできなくなります。

 

 

ただ、新車のH100は一般の乗客にとっては決して良い事ずくめではなく、車椅子に対応するためのトイレの極端な拡大による客室スペースの縮小、詰め込み重視で立席スペース確保のためBOX席を削減と、細部をカスタマイズした以外は基本的にベースのJR東日本GV-E400と接客設備は変わっていません。せめてBOX席を2+1ではなく2+2の構成にするなど、もう少し座席数を増やす必要があったのでは…と思ってしまうのです。

乗客へのメリットは、新車置き換えによるスピードアップ(後述する駅廃止による停車駅削減もそれに寄与)、冷房搭載で夏場の快適性が向上する事でしょうか。その点では明るい話題といえそうです。

 

 

④廃止になる駅と命拾いした駅

毎年JR北海道のダイヤ改正で恒例行事となってしまった駅廃止ですが、今回は一挙に18駅も廃止される事となり、路線廃止を除いて一度に廃止される駅の数としては最多です。

 

その18駅にリストアップされていた中で意外だったのが、函館本線の伊納と宗谷本線の徳満です。両駅ともに以前においてJR北海道や自治体から廃止についての発表は特に行われていませんでした。

伊納は旭川市内に位置し、函館本線の終着駅の旭川から2駅目でありましたが、駅周辺は市街地から遠く離れており、石狩川の対岸(台場)にあった北都商業高校の学生のためにあったといっても過言ではない程でしたが、2011年に同校が閉校となった後は駅の日常的な利用客はほとんどいないという程までに激減してしまいました。

伊納は旭川市に合併される前の旧江丹別村の村域で唯一の駅でしたが、滝川~旭川の複線電化が完成した1969年10月という早い時期から既に無人駅となっており、当時から駅の利用客は少なかったのでしょう。同駅で特筆すべきなのが、現在北海道に多数存在する車掌車改造駅舎(いわゆる『ダルマ駅』)の元祖であったという事です。貨物列車廃止による余剰車両の活用と老朽化した駅舎を安価に建て替えるという一石二鳥の考え方として1985年7月に伊納駅など旭川鉄道管理局管内の8駅に登場し、その後各地に広がっていきました。これは国鉄の分割民営化による新会社への維持費負担の低減、また固定資産税の絡みもあったのではないでしょうか。

(国鉄旭川鉄道管理局発行『旭川・鉄道八十八年の歩み』より引用)

 

 

そして徳満。豊富のお隣という事もあって、1984年11月に無人駅になる前は『人徳キップ 徳が満ちて豊かに富む』の謳い文句で徳満から豊富ゆきの乗車券が縁起切符として売り出されていましたが、やはり近年の1日の利用客は3人以下と僅少だったため、所在する豊富町が廃止に同意したものと思われます。せめて廃止になる前に徳満から豊富ゆきの記念乗車券を発売してくれないかな…と思っているのですが。かつては駅廃止の際、『思い出の××駅』として記念の硬券入場券を売り出していた事もありましたが、近年ではそれすらも行わなくなってしまっています。

 
 

尚、宗谷本線の名寄以北の無人化された駅は交換設備のある駅を除いて民営化直前までに前述の『ダルマ駅』となった箇所がほとんどでしたが、この徳満は大正15年開業以来の木造駅舎が残っていました。1990年代の時点では建物が歪んで見えるまでに老朽化したため、結局2000年に解体されて工事現場用の小さなプレハブが待合室として設置されています。木造駅舎時代の写真を撮っておけば良かったなぁ…と後悔する事しきり。

ちなみに今回廃止となる『ダルマ駅』は、宗谷本線では紋穂内安牛上幌延が対象になっています。

(紋穂内駅舎。伊納駅と同時期の1985年設置)

 

 

これらに対して、今回の廃止を免れたのが抜海で、戦前に建築された日本最北の木造駅舎は残る事になりました。

地元住民らの熱心な存続運動が実を結び、駅廃止の方向性を崩さなかった稚内市が折れた恰好になります。

当駅には交換設備が残されていますが、駅廃止が免れたとしても列車本数の削減で現在は交換列車がないため、根室本線(花咲線)の厚床駅のように1線を廃止して棒線化される可能性もあります。

 

 

そして、当ブログの『瀬戸瀬から志布志ゆきの旅』に登場した瀬戸瀬も廃止を免れる事となり、私としては胸を撫で下ろしております。

同駅は石北本線の廃止を検討していた5駅のうちの1つで、所在する遠軽町による維持管理を条件に存続が決定しました。

 

 

この両駅を含めた宗谷・石北本線の利用客が少ない計17駅が、所在する自治体による駅の維持管理を条件に存続が決まりました。

現在この方式で維持されている駅は室蘭本線の小幌のみで、観光資源としての価値を見出した事によるものでした。今回存続が決まった17駅は、秘境駅による町おこしや、地域住民の存続希望などそれぞれ事情が異なりますが、維持管理する自治体の負担が大きくなれば再び見直しの時期が来るかもしれません。

 

 

 

 

今回発表されたダイヤや駅の見直しによってJR北海道は6.2億円の経費節減を見込んでいるとの事ですが、同社の経営の足を引っ張る北海道新幹線については今回の見直しの対象外となっています。輸送力があまりにも過剰で減車もできない新幹線こそ減便されないのは疑問ではありますが、その場合各方面との調整も必要で、なかなか踏み切れない事情があるのでしょう…。

赤字必至にも関わらず、北海道新幹線の青函間を先行して建設・開業に導いた政治家を恨みますよ!

 

キハ40の撤退や駅廃止で、年末年始から3月ダイヤ改正前の時期は全国各地から鉄道ファンが多数『葬式鉄』として訪れるのは必至でしょう。しかし相変わらず新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない状況なのでファンの皆様には自重して頂きたい処ですが(私も引退前の車両に乗りに道外へ行くのを諦めました)、どうしても来道される方は感染予防策を徹底的に行った上で、北海道の鉄道を荒らす行為は決して行わないよう、宜しくお願いします。