枯野に吹く風に野焼きの仄かな香りが漂っていた。一年の締めくくりが近づいていた。思い出したように103系の電動機の音がひときわ高く響き、去っていった。

どこかの記事で読んだ記憶がある。京都と奈良を訪れた外国人へのインタビュー。どこが印象に残りましたか?という質問である。
~京都も奈良も確かに良かった。しかし移動中に電車の車窓から眺めた田園風景が特に印象に残っている~というのである。
JR奈良線であれば、この棚倉辺りの風景かもしれない。



古代から、どれほどの人々が行き来しただろう?その年輪のようなものがあちこちに刻まれていた。
ふと、コンビニが見当たらないことに気づいた。玉水まで出れば有りそうだが103系のインターバルには間に合わない。撮影地の近くに酒屋があった。そこでポテチを買う。コンビニが普及する前には駅前の商店でこれを買ったりしていたのを思い出した。


小学生の黄色い下校の列が去ってゆくと、冬枯れの田園に本当の静寂が訪れようとしていた。