堺市では市民からの声を募っており、これは市政に関することに限らず、市民の生活などに深く根ざす事柄についても広く対象となっています。

「公共交通機関」たる鉄道ももちろん対象のひとつで、堺市内で鉄道事業を展開する南海電鉄、泉北高速鉄道、西日本旅客鉄道などにも多くの声が集まっています。

今回は、市民から集まった声や市、鉄道事業者からの回答などを踏まえ、堺市内の鉄道の輸送改善について考察していきたいと思います。

≪下に続く≫
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1.中百舌鳥・三国ヶ丘駅関連

 1.1 急行・区間急行停車問題

堺市内の鉄道問題、といえば、真っ先に上がるのが南海高野線の中百舌鳥駅、三国ヶ丘駅の急行、区間急行停車問題です。

中百舌鳥駅では泉北高速線、地下鉄御堂筋線と、三国ヶ丘駅ではJR阪和線と接続しており、区間急行以上の優等列車の停車論が根強く存在します。

「市民の声」にも、「南海電鉄が区間急行を中百舌鳥、三国ヶ丘駅に停車させなければ、協定を破棄してください」「南海高野線中百舌鳥駅を急行停車駅にしてください」などの声が多数寄せられています。

ただ、これらの声の多くが平成28年頃に集中しています。これは、平成27年12月のダイヤ改正で日中時間帯の準急行が、それまでの毎時5本から毎時2本に大幅に削減され(残る3本のうち1本は減便、2本は区間急行に置換え)たものによるものと思慮されます。

これについては、平成29年のダイヤ改正により準急行を再び増便することで解消されており、本数の問題はなくなっています。

ほかにあるとすれば乗り換えの問題ですが、JR線に乗り換える旅客は新今宮で、関西空港や和歌山方面へ行く旅客は天下茶屋で南海本線に、御堂筋線に乗り換える旅客は難波でそれぞれ乗り換えるのが常ですので、わざわざここに優等列車を停めて乗り換えを促すメリットが存在するのかと言われると少し厳しいところです。

残るは中百舌鳥での泉北高速線との乗り換えですが、確かにこれは少々不便なところがあります。

朝のラッシュ時の各停は白鷺で退避するものが多いですし、全時間帯とも北野田で各停に接続しない区間急行というものも存在します。後者の場合、そのあとの急行を待って北野田で各停に乗り換えをしなければなりません。

これについては遠近分離の解消に伴う優等列車の混雑増加度なども考慮して慎重に判断する必要がありますが、たとえば中百舌鳥〜堺東間に分岐駅通過の特例を設けるというのも一案です。

分岐駅通過の特例とは、分岐となる乗り換え駅を優等列車が通過する場合に次の優等停車駅まで出たうえで折り返してもよいという特例です。

南海電鉄では岸里玉出〜天下茶屋間で設定されており、本来ならば「堺東〜(高野線各停)〜岸里玉出〜(南海本線普通車)〜堺」と乗車しなければならないところを、岸里玉出〜天下茶屋間を複乗のうえ「堺東〜(高野線優等)〜(岸里玉出通過)〜天下茶屋〜(南海本線優等)〜(岸里玉出通過)〜堺」と乗車することが許容されています。

これを中百舌鳥〜堺東間にも設けて、「北野田〜(急行/区間急行)〜(中百舌鳥通過)〜堺東〜(泉北準急/区急)〜深井)」と乗車することを許容するという案です。

上に述べた通り現行の遠近分離の一部を崩すわけですから、優等列車への混雑の集中などの影響については当然考慮する必要はありますが、あくまで高野線と泉北高速線とを相互に乗り継ぐ旅客に限るのであって、御堂筋線に乗り換える旅客については対象外となりますから、極端にパターンが崩れると言うわけではありません。

また、ホームの幅が短い中百舌鳥駅の混雑が緩和されることにより、ホーム上の安全がより担保されるというメリットも見受けられますので、検討の余地がないわけではありません。

(リンク)

https://www.city.sakai.lg.jp/city/info/_shimin/data/21089.html
https://www.city.sakai.lg.jp/city/info/_shimin/data/20758.html

 1.2 高野線・泉北高速線-御堂筋線 乗り換え問題

上記の優等列車停車問題に次いで議論されるのが、高野線、泉北高速線系統と御堂筋線との乗り換え問題です。

現在両線は直接接続しておらず、乗り換えるには地平の高野線、泉北高速線ホームからホーム中央部の階段、エスカレーターをのぼり、一旦2階のコンコースへ上がり、改札を抜けて1階の出入口から屋外へ出、御堂筋線の出入り口から地階のコンコースへ下り、さらにその下の階(地下2階)のホームに向かう、というかなりハードなルートを辿らねばなりません。

特に泉北高速線などは地下線から中百舌鳥駅の地平階のホームに上がってくるので、「そのまま地下で接続していればどれだけ楽だろうか」というのはユーザーならば一度は考える事柄です。

「声」でも、「中百舌鳥駅の乗り継ぎが非常に不便なので、南海電鉄のプラットホームから大阪メトロのプラットホームまでつながる地下道を作ってはどうでしょうか」という提案がなされています。

これに対しては、
第一案として、現況約300メートルの乗換経路について、南海高野線の高野山方から直接地下に下り御堂筋線ホームへ向かうことで約115メートルに短縮される案が検討されていましたが、乗継利用者が狭いホーム南端側に集中し安全性の確保が出来ないとの結論に至ったとお聞きしております。そのため、現在は、南海プラットホームの中央寄りに乗換専用の地下通路を設ける案を中心に検討が進められているとのことですが、この案においても施工段階における安全上の課題があるとして、引き続き両鉄道事業者間で協議が進められているとお聞きしております。
との回答がなされています。

よく「南海にとってメリットがないからわざわざそんなことしない」という声が聞かれますが、実際には地下鉄側とも協議を行なっている様子です。

地下通路を設けるのが難しいとなれば、線路とホームごと地下に潜らせるくらいでしょうが、流石に難しいでしょうね。

あとは、この辺りの地質だとかそのあたりを全く考慮していない空論にはなりますが、地下鉄側の7番出口について、現行の階段を取り壊して南海、泉北側の出入口付近まで地下で伸ばし、その出入口付近から南海、泉北側のコンコースまでふた階分直通のエスカレーターを設置するなどでしょうか。

これだと移動する高低差は変わりませんが、体感的には幾分かましになるのではないでしょうか。

(リンク)
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/kocho/shiminnokoe/h30/h300717/4.html

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2.南海高野線・泉北高速線関連

 2.1 連続立体交差事業関連

南海電鉄は、平成52年度を目処に、高野線の浅香山〜堺東駅間を高架化し、この区間で問題となっている「開かずの踏切」の解消を目指しています。

これについてはつい先日事業化が決定したところですので今更議論を蒸し返しても仕方がないかもしれませんが、高野線を毎日使う身としても無関心ではいられない話ですので、勝手ながら触れさせていただきます。

事業への反対意見として、「阪神高速大和川線の全線開通後にもう一度各踏切の渋滞状況を調査し、そこから事業の決定を判断しても遅くはない」「20~30年後の人口減少、車両減少、自動運転の時代を想定すると、当区間の高架化が必要かどうか疑問が残ります」と指摘されています。

対して市は「渋滞解消だけでなく、バリアフリー化された道路を整備し、安全で快適な交通環境を形成するなど、まちづくりにおける課題解消に寄与するもの」と回答しています。

確かに踏切では電動車椅子に乗った足の不自由な方が踏切内で取り残されるという事故も発生していますので、市の主張は至極真っ当です。

区間についても、堺市に拘らなければ大和川以北のほうがどうにかすべきなような気がしますが、これはあくまでも堺市の事業ということですので、さらばこの区間が最適ではないでしょうか。

2.2 北野田駅構内改良関連

また、北野田駅についても意見が出ています。

いずれも運行ダイヤに対するものではなく施設設備に対するものですが、具体的には「列車扱室の取り壊し」「エスカレーターの設置」「案内設備の更新」などが挙げられています。

このうち列車扱室の取り壊しについては昨年実施されています。

エスカレーターの設置については、南海電鉄側より「予定はございません」との明確な回答が出ています。

北野田駅にはエレベーターの設備はありますが、エスカレーターの設備はありません。しかし、中央の改札とエレベーターの設けられている改札は近接しており、特にバリアフリー設備が必要な方が迂回を強いられるということもありませんし、そのエレベーターについても特に利用が逼迫しているような状況も見られませんので、設置の必要性は低いように感じます。

案内設備の更新ですが、これについても南海電鉄は予定なしとの回答をしています。「案内設備」というのが漠然としているのでわかりづらいのですが、発車標も当然含まれているのでしょうか。

であれば、高野線の発車標については、難波、新今宮、天下茶屋、堺東、三国ヶ丘、中百舌鳥の発車標がすでにLCDの発車標に取り替えられていますが、北野田に関しては当分お預けということになりましょう。

これに関しても、確かに更新を必要としているようには思えない(尤も北野田のそれと同型の堺東の発車標はLCDに更新されましたが)ですし、案内の内容についても2年ほど前に列車走行位置の表示がなされるようになるなど現在も改良が加えられていますので、しばらくは安泰でしょう。

(リンク)
http://www.city.sakai.lg.jp/smph/shisei/koho/kocho/shiminnokoe/h30/h300815/25.html

 2.3 泉北高速線 深井・泉ヶ丘駅間新駅設置関連

南海高野線と直通運転を行なっている泉北高速線に関しては、「JRや私鉄で新駅ができたりしていますが、深井駅と泉ヶ丘駅の間に新駅を建設する予定はないのでしょうか。深井駅と泉ヶ丘駅の間には病院や住宅も多くあり、利用者が見込めると思います」との意見が出ています。

これは有名な話ですが、意見に挙げられている深井・泉ヶ丘駅間には開業時に駅設置の検討がなされていました。未成駅となった田園駅(東山駅説、楢葉駅説あり)です。

この駅に関しては、「ニュータウン外の駅は接続駅(中百舌鳥駅)を除いて1駅(深井駅)まで」という助成の条件を呑む形で断念されることになりましたが、この辺りに駅を設置しようということでしょう。

近くの「病院」というのはベルランド総合病院のことだと思われます。

田園駅予定地は現在は変電所となっていますが、線路は島式ホームがあるかのように開いており、線路はあまり弄ることなく駅の設置が可能なように見えます。

ですが、この辺りには北野田駅などから南海のバスが出ており、近くに東山停留所も存在します。南海電鉄のグループとなった泉北高速鉄道が、同じく南海電鉄のグループである南海バスからお客を奪うような新駅設置を進めるかというと怪しいところです。

また、ベルランドについても北野田、中百舌鳥、深井、泉ヶ丘の各駅前から無料の送迎バスが出ており、現状でも特に不便というようなことがあるとは思えません。

(リンク)
https://www.city.sakai.lg.jp/city/info/_shimin/data/22694.html

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3.JR阪和線・羽衣線関連

 3.1 阪和線増発関連

ここまでは南海高野線に関する「声」が中心でしたが、JR阪和線に関する「声」も出ています。

まずは、阪和線の運行を増やしてほしい、というものです。

これに対しての回答は、
ご要望の件について西日本旅客鉄道株式会社へ確認したところ、
「阪和線はご利用実態に合わせた運行本数としており、ダイヤも過密なことから運行本数を増やす予定はありません。」
との回答がございましたのでお伝えします。

というもの。南海電鉄に比べてえらく淡白だなぁという印象ですが、実際その通りなので仕方がないのでしょう。

平成19年度と古いデータですが、JR西日本の主要線区の混雑率は
・東海道本線(列車線)茨木→新大阪:122%
・東海道本線(電車線)新大阪→大阪:119%
・大阪環状線                  鶴橋→玉造    :149%
・片町線                         鴫野→京橋    :137%
・阪和線(快速列車)   堺市→天王寺 :141%

となっており、複々線の東海道本線と比べると混雑しているものの、複線の大阪環状線や片町線(学研都市線)と比べると特別阪和線だけが混雑しているという様子はありません。

そもそも我孫子町・杉本町間以北の高架化時に複々線化しなかった以上、今更どうすることもできないというのが本音でしょう。

(リンク)
http://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/kocho/shiminnokoe/h30/h301015/6.html

 3.2 阪和線開かずの踏切問題関連

阪和線では天王寺〜我孫子前駅間や東岸和田駅付近などで高架化が完了していますが、堺市内の区間についてはすべて地上線となっています(三国ヶ丘駅付近は掘削された半地下線)。

これにより各所に踏切が点在し、いわゆる「開かずの踏切」が問題となっています。

市もこの点については認識しており、「この解消が課題であることは市として認識しております」と回答しています。

一方で「ご理解頂いているとおり、連続立体交差事業は、多大な費用と期間を要する事業です。本市では南海本線の連続立体化工事と南海高野線の事業化に向けた検討を進めており、他の区間や他の路線の連続立体化は、この2つの事業が一定の目途が立った段階で総合的に検討を行う予定です」ともしており、一筋縄ではいかない様子が窺えます。

確かに、例えば南海本線の事業では2.7kmの高架化に対して費用は387億円と、莫大な費用を要することがわかります。

そのため市の言うように簡単に事業化することはできないでしょうが、仮にこれが実現したとすれば、ぜひとも堺市駅の高架化、および2面4線化をお願いしたいと思います。

現在、阪和線の2面4線の駅は、和泉砂川、日根野、熊取、東岸和田、和泉府中、鳳、杉本町、鶴ヶ丘となっています。

鳳まではいずれも快速停車駅で、かつそのすべてを網羅していますが、その先の快速停車駅である三国ヶ丘、堺市はいずれも2面2線の方向別単式ホームで、その先の杉本町、鶴ヶ丘はいずれも快速通過駅です。

すなわち鳳を出ると終点の天王寺まで緩急接続ができないということになり、鳳以南で快速と普通とを乗り継ぐ場合には堺市または三国ヶ丘でしばらく待たされたり、あるいは浅香から天王寺まで向かう旅客は杉本町と鶴ヶ丘と、2回通過待ちを喰らったりというのが現状です。

仮に堺市を2面4線にすると、鳳以南でも快速、普通相互間の乗り換えがスムーズにできたり、杉本町での通過待ちが減るわけですから浅香から天王寺への所要時間も短縮されたりというメリットが発生します。

もちろん高架化するといえども土地の制約はありますし、負担は市がするのか旅客会社がするのかという問題もありますから、簡単に実現できるものではないことは重々承知です。

ですが、旅客の利便性を考えたときには、この案もひとつアリなのかなと思います。

(リンク)
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/kocho/shiminnokoe/h31/h310415/2.html

≪下に続く≫
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4.既存路線延伸、新路線設置関連

4.1 堺市内東西交通網整備関連

堺市内には南海本線、阪堺電気軌道線、南海高野線、JR阪和線、地下鉄御堂筋線の5路線が走っていますが、すべて堺市内を南北に縦断していて、東西の交通網が貧弱です。

そのため、堺市を東西に結ぶ鉄軌道を建設しようとする運動は盛んで、その起源は明治29年の「堺鉄道」構想にまで遡るとも。

最近でも堺駅と堺東駅とを結ぶ次世代型路面電車の整備計画が進められましたが、これを中止する公約を掲げて当選した竹山修身前市長により計画はふりだしに戻りました。

ところが東西交通網整備については市民からの要望の声も根強く、様々な意見が寄せられています。

例えば四つ橋線の延伸を要望するもの。現在住之江公園で終点となっている四つ橋線をさらに南下させ、大和川を越えて三宝に駅を置きつつさらに進み、堺駅で進路を東に変えて堺東駅に向かうというもの。

しかしこれはいくらなんでも無茶な気がします。この案で恩恵を受けるのは三宝のあたりに家を構えている方とその周辺の工業地帯に勤めている方くらいではないでしょうか。

ほかには堺駅、堺東駅、堺市駅、中百舌鳥駅の4駅を結ぶ鉄道の建設なども要望されていますが、いずれも本当に必要かと言われると疑問に思うところです。

堺駅と堺東との間にはシャトルバスが走っていますし、三国ヶ丘駅や羽衣線などによってそれぞれの接続はやや不便なものの図られています。

それよりも、もっと南の本当に空白となっているところにこそ鉄軌道は必要なのではないでしょうか。

例えば河内松原から美原、萩原天神、深井を経由して鳳まで至る地下鉄を建設すれば、堺市の東西を鉄道で結びつつ、市内に点在する美原区などの鉄道空白地帯を埋めることができます。

もちろん今あげた案だって採算が取れる見込みはなければ地下鉄を掘るスペースだってない拙い案ですし、実現なんてできっこないのは重々承知ですが、東西交通網の改善を言うならば、これくらいのことは言ったらどうかと思います。

(リンク)
http://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/kocho/shiminnokoe/h30/h300416/7.html
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/kocho/shiminnokoe/h30/h300717/3.html

≪下に続く≫
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今回はかようにして堺市の鉄道輸送改善についてあれこれ考えてみました。

色々な案が出ていて、市民の皆さんも色々と考えられているんだなという印象を受けました。

堺市では現在もこちらより意見を募っていますので、何か意見がおありの人は、是非とも送信してみてはいかがでしょうか。