皆様こんばんは。ブログおよびホームページ管理人の神@北見です。

 

Tomixさんからは限定品も含め非常に沢山のキハ58系バリエーション製品が模型化されています。その中でも、塗装の種類の多かった金沢地区においては数種類の塗装が発売され、非常に充実した内容になっています。今回はその中から「氷見線セット」をご紹介します。

 

この氷見線セットはキハ58+キハ28に加え、キハ58系が高岡で本格的に使用され始めた頃に登場したキサハ34をセットに加えています。私はキハ58系専門なのでキサハ34についてはさらっと済ませますが、1991年9月の七尾線電化に伴いそれまで使用されていたキハ58系が各地に転属し、特にキハ58系は冷房車であったことから各地のキハ45系や50系客車を優先的に置き換えてゆきました。そして非電化当時七尾線には朝夕の輸送力列車用に客車列車が残っており、晩年は近郊化改造された12系が使用されていました。この12系についても七尾線電化時に活用法が模索され、なんと平坦線な氷見線へ転じてキハ58系の中間に挟んで輸送力列車に使用されることになりました。これを模型化したのが今回の製品です。

 

 

↑キハ58+キハ28に加え、キサハ34を入れたセット内容。

 

キサハ34の模型化に際しては、ほぼ同時に種車となった12系1000番台も製品化されており、単にこれの色違いのようにも思われますが、実はこのセット専用に仕立て上げられています。

 

↑キサハ34です。実車の通り完全に12系です。図らずとも12系の成れの果てを手に入れることになりました。オハ改造の0番台は種車と見た目に変わりがありませんが、スハフ改造の500番台は、スハフの1000番台時代から乗務員室にドアが付いています。しかも、この乗務員ドアは車体の断面に合わせた気動車のドアと異なり、客車標準で平面のドアが付いています。平面ドアは24系の電源車でも同じです。

 

トイレ側妻面です。これを見て違いに気づくと思います。スハフ改造のキサハ34 500番台には方向幕がありません。オハ改造の0番台には12系のまま便所窓上部に方向幕が付いています。

 

↑オハ12改造のキサハ34 0番台です。通常の12系客車はこの形態ですよね。

 

↑スハフ12改造のキサハ34 500番台です。便所窓上の方向幕がなく、良く見ると車番表記の上あたり、窓下にサボ挿しがあります。

 

これは、キサハ34 0番台の種車となったオハ12は1019と1021で元金沢配置、そして500番台の種車になったのはスハフ12 1001と1003で元広島車です。広島では以前ご紹介したキロ28でもそうでしたが、窓下サボを使っていました。例えば新製時にはドア脇のサボを使用していたキハ58系やキハ40・キハ47に至るまで、全て窓下サボ挿しが追加されています。そして普通列車用の12系1000番台も広島車は側面の方向幕を使用停止し窓下サボになっていました。その種車の名残がずっと引き継がれていました。

 

今回のTomix製品では、12系1000番台改造のキサハ34について、このような細かな点まで再現されています。ほぼ同時に発売された12系1000番台では全車両方向幕を使用するタイプになっているので、わざわざこんな細かな点が作り分けられたことになります。

 

このようなキサハ34の方向幕の有無を作り分けるようなパワーがあるのであれば、キハ58系の乗降ドア下部の丸窓が埋められた車を再現するなんて簡単なように思えるのですが気のせいでしょうか…。

 

話が脱線してしまいましたので、気を取り直してキハ58系を見てみましょう。

 

↑キハ58+キハ28のオーソドックスな2連に見えますが、実はTomixさんのキハ58系製品バリエーション上、極めて重要な車が入っています。

 

まずはキハ58から見てみます。

 

↑キハ58の高岡色Ⅱ-1です。高岡では途中の細かな変化も含め、極めて多くの塗装が見られました。このアイボリー・青・黄色の塗装に関しては、当初はこの模型のように正面の青帯がバーコード状、アイボリーに見える部分は顔周り以外はライトグレーという芸の細かさでした。

 

↑しかし1997年頃にはご覧のように正面青帯のバーコード状は無くなり、またアイボリーとライトグレーの塗り分けも無くなりアイボリーに統一されました。さすがに塗装工程が手間だったのでしょう。また同時期に床下の台車や車端部機器も灰色になります。そして福知山から来たキハ58系モデルチェンジ車を塗り替える2000年頃よりワインレッド塗装へ再変更されます。キハ58 792です。

 

模型に話を戻しますと、その塗装による時代設定より屋根上の通風器は押込み通風器のままで、屋根上水タンクが角型になっています。これは実車と合ったものになっています。

 

↑良く見ると、便所窓が横長になった車両を模型化しています。

 

キサハ34が活躍した当時、高岡にはキハ58 443・468・792・795・1016の5両のキハ58が居ました。しかしこのうち443・468・792の3両はワンマン改造されており、基本的にキハ28と2連で運用されていました。そしてキハ58 795・1016の2両は近郊化改造車ながらワンマン化されておらず、もっぱらこのキサハ34を組み込む編成で使用されていました。そしてこの795・1016の2両はキハ58平窓最終グループの14次車にあたり、便所窓が横長小窓になったグループです。

 

↑キハ58 795です。先のキハ58 792と比べると助手席側正面窓下部に「ワンマン」の表示器がありません。また、1枚目の窓下にワンマン用のスピーカーもありません。よってこの車は非ワンマン車であることが分かります。反対側が写っていないのが残念ですが、当車は便所窓が横長小窓になったグループです。

 

Tomixさんは、このように実車で何番がキサハ組み込み運用に使われるかを研究の上、的確に便所窓が横長小窓になったグループを採用しています。さすがとしか言いようがありません。またこの写真のようにクーラー脇は押込み通風器、水タンクが角型というのは標準的でTomixさんの再現性の高さを示しています。

 

この便所窓が横長小窓になったグループ自体は、急行「たかやま」、急行「砂丘」、急行「きのくに」、快速「シーサイドライナー」、タイフォン違いで急行「のりくら」等にも入っており、その製品自体は単品販売は無いもののそんなに珍しくはありません。

 

続いてキハ28を見てみましょう。

 

↑キハ28です。ぱっと見は普通の製品を色変えしたように思えますが…

 

↑良く見ると、機関冷却水給水口が車体中央付近へ移った車両を模型化しています!! 前位側の4枚目と5枚目の窓間に機関冷却水給水口があります。

 

↑ここです。

 

当時の高岡にはキハ28 2158・2350・2351・2411・2412と5両のキハ28が在籍していましたが、2158・2350・2351の3両はワンマン改造されており、キハ28 2411・2412の2両が非ワンマンでキサハを組み込む運用で使用されていました。このあたりの事情はキハ58と似ています。そしてこのキハ28 2411・2412はキハ28の10次車に当たり、わざわざ機関冷却水給水口が車体中央付近へ移ったグループを新規に模型化しています。

 

↑半逆光で醜い写真でごめんなさい。車体中央付近、赤丸で囲った箇所に機関冷却水給水口があります。また緑丸で囲っていますが便所窓はノーマルです。水色で囲っていますが1枚目窓下にワンマン用車外スピーカーは無く、助手席側正面窓下部にワンマン表示器もありません。同じく当時非ワンマン仕様のキハ47と組んでいました。

 

ちなみに通常の単品を見てみましょう。

↑通常の単品製品はここですね。Tomixさんから発売されている平窓キハ28の大半がこの形態です。

 

しかし、以前この単品キハ28の形態については投稿したことがありますが、このグループはキハ28 357~397の4VK付冷改車に限られた形態で、しかもその冷房車の4割近くが水戸に配置されたという分布に非常に偏りのあるグループです。水戸以外には、各管理局に2~3両ずつくらいしか存在せず、四国や広島・金沢のように存在しない地区も多いです。ありふれた形態に見えながら、実は困った車でした。

 

ということで、Tomixさんはこのセットで給水口が車体中央付近に移動したグループを模型化していますが、今のところこのセット以外に入っているのを見たことがありません。この形態は398~437に該当し、尾灯を気にしなければ453まで、床下の機関予熱器を気にしなければ485まで使えます。よってキハ28の模型再現性が大きく上がるのですが、残念ながら今のところこのセットにしか入っていません。

 

ちなみにこれに似た車両は…

 

↑実は今年2020年5月に発売された急行「のりくら」セットにも機関冷却水給水口が車体中央付近へ移ったモデルが入っています。しかしこの車は更に便所窓が横長小窓になったグループ(青丸)で、キハ28の最終増備車14次車に該当します。これは486~494の冷房車のみ(2486~2493)のみに該当し、非常に少数派です。

 

山陰地区や九州にはキハ28の24XX番という車が沢山配置されており、これを再現するにはこの氷見線セットに入っている車が非常に重宝するのですが、急行色のモデルは模型化されていません。折角金型があるのだから是非とも模型化して欲しい車の1つです。

 

 

ということで、当時時期を同じく発売された12系1000番台に合わせ、キハ58系と12系をただ単に色変えしただけの製品と思いきや、実は各車に新要素を含んだ非常に手の込んだ製品だったのでした。実際に使用される車両の製造区分や形態からわざわざ新規金型で車両を再現するという力の入れようです。しかし実際はあまり人気が無かったのか、今でも並んでいる模型店もあるし、中古やオークションでは非常に安値で流通している可哀そうな製品です。確かにいくら興味があっても1セットあれば事足りてしまいます。地味ながら特徴一杯のセットでした。

 

このままこの金型を眠らせておくのも勿体ないので、ぜひ次なる展開を期待したいところです。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。それでは次回もお楽しみに!!

 

是非私のホームページ

 

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にもキハ58系各車の解説がありますのでご覧になってください。