未更新の1000形が廃車されるようになり、小田急から急速に電磁直通ブレーキを装備した車両が減少しています。
10年以上前には、電磁直通ブレーキを装備した多くの車両が活躍していましたが、現在は8000形の8251Fと、1000形の未更新車が残るのみとなっています。

今回は小田急がいつまで電磁直通ブレーキを装備した車両を製造していたのか、なぜ電気指令式ブレーキの採用が遅れたのかについてまとめたいと思います。

通勤型車両に電磁直通ブレーキを採用し続けた小田急

1954年に登場した2200形は、小田急で初めて電磁直通ブレーキを採用しました。
発電制動を常用するHSC-D形で、以降の形式は4000形の一部を除き最初から電磁直通ブレーキを装備しています。

小田急で電磁直通ブレーキを装備した形式は、後に改造された車両も含めると以下のとおりとなります。
括弧内は製造初年です。

・2200形(1954年)
・2300形(1955年)
・2220形(1957年)
・3000形(1957年)
・2320形(1959年)
・2400形(1959年)
・3100形(1963年)
・2600形(1964年)
・1800形(1967年以降改造)
・4000形(1968年度以降製造の編成・従来車もその後改造)
・5000形(1969年)
・9000形(1972年)
・8000形(1982年)
・1000形(1987年)

このように、数多くの形式が同じ制動装置に統一されていました。
1980年代には多くの事業者が電気指令式ブレーキに移行していきますが、小田急では1990年代に入っても電磁直通ブレーキの1000形を製造していたのです。

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1000形は1993年まで製造が続けられ、最終増備車の1094Fが小田急で最後に電磁直通ブレーキを装備して製造された車両となっています。

電気指令式ブレーキの採用が遅れた理由

1993年まで電磁直通ブレーキの車両を製造し続けた小田急でしたが、電気指令式ブレーキの車両がなかったわけではありません。
ロマンスカーでは、1980年に登場したLSEから電気指令式ブレーキとなっていました。

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通勤型車両だけが電磁直通ブレーキでその後も製造されていましたが、それには小田急特有の事情が関係しています。
当時の小田急では、急行が途中駅での分割併合を頻繁に行っており、異形式での併結運転も当たり前となっていました。
連結できる車両が限定されると効率が悪いため、それを考慮して1000形まで電磁直通ブレーキが採用されたのです。
車両の性能も極力合わせられており、高性能車に限れば全ての車両が相互に連結可能となっていました。

通勤型車両で初めて電気指令式ブレーキを採用したのは2000形で、8両以上の編成を前提としたことから、異形式との連結を考慮する必要がなくなり、採用することが可能となりました。
3000形では、ブレーキ読み替え装置を搭載することで、併結を行う車両での電気指令式ブレーキの採用を実現しています。

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車両の置き換えとリニューアルによって、年々電磁直通ブレーキの車両は減少、小田急からの消滅は秒読みとなりつつあります。
数年後には、親しまれた音が聞けなくなっていることでしょう。

おわりに

小田急といえば電磁直通ブレーキでしたが、3000形の登場によってあっという間に勢力図が変わってしまいました。
現在は一部の車両だけとなってしまいましたが、もうしばらくは見ることができそうですね。