卒業検定がやってきました。
15泊お世話になった寮から、荷物をまとめて教習所に乗り込みます。
もしも卒検に落ちたら、この荷物ごと寮に戻るのかと思うと、恥ずかしいような気がします。
つい前の日、一時停止を不停止して、「そこ、止まれって書いてあったの、見えましたか?……明日これをやったらもう一泊ですね」と言われた私です。最終日でも交差点でエンストしています。
さらにその前の日、高速シミュレーター(近くに高速道路がないのでシミュレーター教習です)で2回も事故った私です。
目標は、最後まで走りきること。卒業試験は、最後まで走り切れたらだいたい合格するようです。
手元には乗車ぎりぎりまでこのアンチョコが。
「止まったらロー確認」
「ふみ切 マドあける!!」
(笑)
仮免試験と同じく、後部座席に別の受験生一名を乗せて走らなくてはいけません。この日もマニュアル車の卒検受験者は私一人だったので、オートマの男の子に乗ってもらって試験を行うことになりました。
試験官は、やっぱり、一度も教わったことのないはじめましての教官でした。
まずは後部座席に乗り込み、試験開始地点の駐車場まで教官の運転で向かいます。
教官の運転が、私と同じマニュアル車と思えないほどスムーズであまりにも上手すぎて、かえって緊張が高まります。
クルマってこんなスムーズに走るもの!?すごいんですけど。
「では、運転席に座ってください」と言われ、ついに卒業試験開始です。
超慎重に運転する私。ちゃんとローから発進です。
途中、交差点での右折で、対向車も右折しようとしていたので右折を続けたところ、対向車の陰から左折のトラックが出てこようとしたときは焦りました。
教官がトラックに向かって「すみません!」というように左手を上げて合図して、なんとか曲がり切ったのですが、これは止められてしまうのではないかと心臓が縮みました。
一時停止はちゃんと止まりました。恐ろしく顔をキョロキョロさせて進みます。もうここはアピールです。めっちゃ「自分の存在をアピール」して進んでいきます。
ブレーキで教官と後ろの男の子が若干ガックンガックンしていますが、もう、私、ごめんなさいは言いません! 言い訳しても仕方ないんです! できる限り揺らさず運転することをとにかく心がけるしかないんです!
教官の指示に従って、いったい何分運転したんでしょう。
30分くらいでしょうか。
ついに止まることなく路上の試験が終わりました。
構内で行われた縦列駐車の試験も、滞りなく終わりました。(方向転換と縦列駐車のどちらか一つだけが試験に出るのですが、方向転換の方が難しく、縦列駐車の日だったのでラッキーでした!)
車内でそのまま講評があって、教官は「さっきの(路上での)右折は、あわやというところでしたね。あれは気を付けないと。」と言いました。(怖)
そして「慎重に運転するのはいいんですが、出すところではちゃんとスピード出さないといけません」と、いつも何度でもどなたからも言われた注意をまた、私にくださいました。
法定速度の60キロ、出せないことはないということをアピールしようと、たまに60キロに近づけていたのですが、それでは足りなかったみたいです。
待合室に帰る途中、後ろに乗っていた男の子に、一言だけ、「ガックンガックンしてごめんね」と言いましたら、「いや、ギアは大変ですよね」と優しく同情してくれました。彼のオートマ車の運転はスムーズで素晴らしいものでした。
受かるんだろうか。帰れるんだろうか、今日。
多種多彩な免許の卒検が行われていたこの日、合格発表まではかなりの長い時間がかかりました。
大型二種、つまり大型バスの運転手さんの試験は1時間近くかかるもので、路上のポールに寄せて停めたら教官が下りて行ってポールとの距離をメジャーで測るんだそうです。
恐ろしすぎる。バスの運転手さんというのは全員こんなに怖い試験を乗り越えているのかと思うともう尊敬の気持ちしかありません。
仮免試験の時と同じモニターに、合格者の番号が発表されます。
運命の時間。
私の受験番号「1」がモニターに表示されました。
「終わった……」
喜びというか……
力が抜けるような。
合格でした。
これは、寮で仲良くなった23歳の女の子が私にくれたお手紙です。
可愛いすぎて、泣きそうです。
中身はもちろん内緒です。
卒業写真を撮って(友達になった子たちが一緒に入ってくれた!)、
卒業式を受けて(卒業式っていい響き)、
卒業証明書と若葉マークをいただきます(厳密にはまだ免許はとれていません)。
そして、地元の運転免許センターでの免許の取得方法を教わります。
場内コースを見下ろせる食堂で最後のお昼ご飯を食べて、
そうこうしていると、すっかり顔なじみになったバスの運転手さんが声をかけてきます。
「受かりました。今日帰ります」と言える喜び。
本当にお世話になりました。教習所の皆さん、本当にいい方ばかり。
16日間過ごした学校とお別れ。たった16日間だったけど、ここが私の母校になりました。
(まだちょっとつづく)