【都営三田線】新型6500形が落成!6501編成が近畿車輛から甲種輸送で志村へ

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以前より中期経営計画でその存在が記されていた都営三田線の新型車両。2020年10月29日にはその形式名が6500形であることや、車両の概要が明らかになっていました。

翌々日となる10月31日、近畿車輛にて完成したトップナンバー・6501編成8両が完成し、志村検修場への長旅を始めました。

都営三田線新造計画と発表までの推移

東京都交通局では、都営三田線の世代交代・8両化のために新形式・新造をする計画を明らかにしています。

情報の初出は5年近く前の2016年2月に発表された「東京都交通局経営計画2016」まで遡り、2021年度までに9編成の車両更新を行うことが記載されています。その後も2018年夏の都政改革本部会議資料、その後の東京都交通局経営計画2019にて、同様に2021年度に9編成の車両更新を行う旨が記載されていました。

また、2018年夏には競売入札により近畿車輛が8両13編成を136億円で落札・受注することが報じられています。この際、車両デザインは東京都交通局内のプロジェクトチームがイメージ画像を手掛けたとしています。

その後目立つ報道がないまま時間が経過しましたが、2020年10月15日発売の商業誌(鉄道ダイヤ情報2020年11月号)にて輸送計画と形式名が“6500形”であることが記され、その計画の概要がやっと明らかになりました。

輸送前々日となる10月29日には正式なリリースが出されており、形式名とともに車両の概要が明らかになりました。

車両外観を見る

今回落成したのは、都営6500形6501編成です。先代の6300形や他路線同様に編成名ハイフン1〜8で車号が割り振られています。先代では8両化を意図して2両分欠番がありますが、本形式では綺麗な-1〜-8となりました。

6300形と同様であれば、編成向きについても-1が西高島平方先頭車・-8が目黒・日吉方先頭車となります。また、車体にはハイフン以下と同一の番号が号車番号としてデザインされていますので、やはり従来同様と捉えて差し支えなさそうです。

10月31日からの輸送では、機関車側・編成最後尾側双方に養生が施されており、シンプルで“三田レンジ”・“キングジム”などと話題を集めた前面形状は伺い知ることはできませんでした。

一方で車内では、プレスリリース画像でも描かれていた、車内案内表示ディスプレイが横長のワイドタイプであること、広告ディスプレイも併設されていることなどが確認できます。

編成構成は8両編成で多く見られる、Tc-M-M’-T-T-M-M’-Tc’と見られます。先代が将来的な8両化を意図した構成としていましたが、6500形は逆の編成短縮を前提とはしていないようにも見受けられます(東急3020系同様に中間付随車を脱車して運用するには補助機器類の移設も必要?)。少なくとも、帯にデザインされている号車番号表記は8両編成での使用のみを想定したものと言えます。

走行機器類としては、主制御装置(VVVF)に三菱電機のロゴマークが確認できます。近鉄”ひのとり”と外観形状も近似しており、プレスリリース通りのハイブリッドタイプのSiC(炭化ケイ素・シリコンカーバイト)を使用したIGBT素子のインバータ装置となっている模様です。

総括としては、デザイン面もさることながら、都営5500形に比べて技術面でも若干退化した印象が拭えません。地上設備の改修・両数が増えたことで製造コストも増加・今後の保守コストも増加……といった観点を考えると、1両辺りの製造コストは抑え気味になったとしても不思議ではありません。

ただし、近畿車輛は136億円で8両13編成の製造を落札していますので、単純計算で1両辺りの製造コストは1.3億円程度と特段割安になっているわけでもなさそうです。

現行の6300形が個性的な前面形状でしたので、この辺りはファンからの賛否を集めるのも止む無し……といったところでしょうか。

一旦埼玉入りしたのちに陸路で搬入か

今回の甲種輸送は、近畿車輛を午後出発し、翌11月1日に関東入り。2日午前0時半ごろ(1日終電後)に埼玉県・越谷貨物ターミナルまで輸送される計画です。

そこからの輸送については消去法ですが、陸路で東京都交通局・志村検修場へ向かう(陸送となる)ものと考えて差し支えなさそうです。同様の経路は6300形の大半が過去に経由しています(一部編成は新座貨物ターミナルから)。

越谷貨物ターミナル周辺は比較的道路が整備されており、2019年〜2020年にもつくばエクスプレスの増備車・TX-3000形が搬出されたことで話題となりました。

つくばエクスプレスの例では翌日から1日3両程度が搬出されましたので、3〜4日程度で現役の6300形との“顔合わせ”が実現しそうです。

デビューは2022年まで持ち越し?

目黒線系統では南北線と埼玉高速鉄道は増結に消極的な姿勢も見られましたが、東急目黒線と都営三田線の混雑はなかなか激しいものとなっています。

三田線ユーザーからは早期の8両化を望む声が多く上がっていますが、残念ながら8両編成の運行開始は2022年上半期より順次とされています。

そして、今回製造された6500形についても、当面は各種試験を行うために使用され、営業運転開始は同様に2022年上半期からとされています。

団地の下にあり、比較的手狭な印象を受ける三田線の車庫=志村検修場。

遅れていなければ、2021年度のうちに9編成が導入される計画です。8両編成での運行は出来ず、6両に短縮しての運行も想定されていないことは少し不思議な印象を受けます。

(直通先の東急目黒線では、3020系が8両編成での試運転を終えたのちに中間付随車2両を長津田で脱車・6両編成にて営業運転を実施)

志村検修場以外の留置場所としては御成門駅・新板橋駅にある留置・折り返し線程度しかなく、改良工事が進む直通先の東急目黒線奥沢駅や元住吉検車区、更にはそれ以外の直通先に訓練を兼ねて疎開する動きなども考えられなくはありません。

奥沢駅の工事は、既に最初に手掛けた留置線延伸を終えて現在は駅構内の改修へ移行していますので、ここに6500形が数編成疎開する動きが考えられます。もしくは、夜間に本線上での停泊を設定することで回避するのでしょうか。

いずれにせよ、苦しい采配となることは想像に難くありません。

また、地上設備側が編成長延伸に対応して日中試運転を実施している例としては、東急東横線の武蔵小杉駅〜みなとみらい線元町・中華街駅間が挙げられます。

こちらの事例では、直通開始前に東武・西武の車両での乗務員訓練を実施するための事例でしたが、やはり5050系4104F〜4106Fのうち2編成を両社に貸し出し状態としていました。こちらも“トンネルが繋がった”直通運転開始初日に最後の編成が戻るというなかなかハードな運用で乗り切っています。

以上を総合しても、やはり2021年度に9編成を投入して寝かせておくことは難しそうに思えます。相鉄との直通運転開始が遅れたことと前後して、2021年度に9編成……という計画に修正が加わっている可能性もありそうです。

6500形は相鉄線直通で走れない……?

筆者も運転台の無線装置までは確認できませんでしたが、少なくとも屋根上には在来のL字型アンテナに加え、デジタル無線装備ならではの2本の棒状アンテナが設置済です。

東京都交通局の路線では、浅草線のみが三菱、それ以外の三田線・新宿線・大江戸線は日立国際が落札しており、在来車両もそれに合わせて無線のデジタル化が進められています。6300形では6314編成からデジタルに対応したアンテナに交換されており、こちらはアナログ時代より若干細いものが片側に1本のみで対応しています。

一方で、乗り入れが考えられる相模鉄道では、JR線との直通運転を行うに先立つ格好で、JR東日本と同様の三菱製のデジタル無線が採用されています。この三菱製の無線装置は独自の特許がある関係で、他社無線装置では代用できません(逆の三菱製無線装置搭載車両が他社無線装置を使用することは可能)。

今回登場した6500形は両運転台側に2本のアンテナ。在来車両とは何らかの異なるものとなっていそうですが、これだけでは相鉄対応とは言えません。

なお、都営6300形のほか、東京メトロ9000系のB修施工車両についても日立国際のものが採用されており、両形式とも都営・東京都交通局ともに相鉄直通を意識した構成とはなっていませんでした。

6500形ではこのほかにもアンテナの準備工事がされているようですが、現時点ではおそらく非対応(東横線系統と同様の状態)=今後必ずしも相鉄直通で使用されるとは限らない……と言えそうです。保安装置についても、相鉄が採用しているATS-Pには対応している様子はありません。従来車同様にATO,ATCの機器箱とされています。

この辺りの対応では、東横線5050系・東京メトロ副都心線の10000系や新型17000系も三菱製を採用していながら受話器が相鉄非対応のタイプになっているなど、どの会社・形式も相鉄直通を前提とした動きにはなっていません。

民間ではない東京都交通局という特殊性を考えると、過去に日立国際が落札した経緯から、相鉄直通改造として調達するまでは三菱製を搭載できなかったという事情も考えられます

この無線機と直通運転の問題は過去記事で記していますが、直通の詳細が決まってから各社が一斉更新をするのか、はたまた相鉄がシステムを再変更するのか。

車両こそ登場したものの、今後の動きについては疑問符が多く付くものとなっており、引き続き注目したいところです。

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