鉄道模型は、おもちゃ?美術品?精密機械? | 模工少年の心
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テレビ番組「開運なんでも鑑定団」は、何らかの品物を収集することを趣味にしている人たちには、楽しく、お宝を見る目を肥やすことのできる好番組だと思います。

何度か鉄道模型が取り上げられたこともありました。

 

波多野茂氏が鑑定人の一人として番組に出演され、2013年放送の際に1960年代の輸出用機関車を、また、2019年放送の際には天賞堂のモハ151型電車の鑑定をされたことで、鉄道模型に向けられる社会一般の人たちの目が変わり、お宝になるとの認知も得られたのではないかと思います。

 

鉄道模型を集めたり、作ったりすることは、もともと趣味ですから、自分でいいと思えば人がどう思おうとも、それでいいのですが、その模型の評価(取引価格、査定額)が全く気にならないといったら嘘になります。

 

「鑑定団」のお宝ジャンルで言うと、北原照久氏の担当の「おもちゃ」では、メーカー完成品であり、箱やおまけで付いている付属品等が完備しているか、シリーズ物の場合には無欠で全て揃っているかどうかが、高評価を得られる絶対条件になります。

 

一方、中島誠之助氏ら骨董品の査定の場合にも、もちろん、落款や刻印の有無が評価の重要なポイントのひとつになりますが、必ずしも、それらがなくても、作品そのものに目をやり、製作された年代、場所、材料の質、製作技量等から真贋を見極め、高評価が得れれることがあります。

 

私もメーカー完成品の良さは、よく分かっているつもりです。

各メーカーには、それぞれメーカーとしての設計思想があり、また、同じ形式でも年代によって作り分けられるなど、各製品ごとに特徴があり、それを知ることで、鉄道模型を収集することが、より楽しくなるのだと思います。

 

それゆえ、品物にキズが付いたり、塗装が剥げたり、走行やライト点灯に支障が生じたりしないよう大切にして、いつまでも買った時のままの状態をキープしたいと思います。

 

ただ、箱や付属品がないと価格が下がるのは当たり前ですか、そのことで極端に評価が下がるとしたら、少々残念に思うところもあります。

 

しっかり貼られているインレタでも、貼付済みだからというのがマイナス要因になるようです。

(説明書、図面の類いは維持管理に書資するという実用面で付属していてほしいと思いますが。)

 

もっとも違和感があるのは、キット組み(模型店や上手な個人による)にも、メーカー完成品を超える素晴らしい作品があるのに、それらは、なかなか正当な評価がされていないことです。

 

これまでに、私は何台ものキット組みの中古品を購入してきました。

かつては、いつかは、自分の手で完成品のような出来の作品を組み上げたくて、少々難ありでも、組みのお手本と思い購入しました。

 

しかし、そうではなく、完成品を超える素晴らしい出来のキット組みの作品に感嘆し、お宝にしたいと思って購入したものもあります。


2年ほど前に秋葉原の模型店で手に入れたC51は、そうした作品です。

デフなしのC51とこのデフありと、2作品が店頭に出ていて、迷っているうちに、デフなしの方は売れてしまいました。

 

ベースは、アダチの総合キットですが、素組みをはるかに超える上質な作品に仕上げられています。










写真のように、表面にハンダ付の痕跡は全くなく、ブラスの地肌の鈍い輝きが美しく、塗装を施すのは無粋というものです。

 

最大の見せ場は、バルブギア類です。洋白板から切り抜かれたものと思われますが、角がカチッと鋭く仕上げられています。関節のかしめピンも通常と逆の内側から目立たないよう留められています。

各パーツの寸法、組が正確であるため、走行も静粛そのものです。

 

このような完成品のレベルを超えたモデルが、それに相応しい査定がされているかどうか、箱から出して眺めるたびに考えてしまいます。

 



近頃、日本酒やお米、和牛等のブランド化が野菜にも及び、◯◯さんの畑で取れたニンジン等の商品がスーパーマーケットで売られています。

鉄道模型も、◯◯工房製といったようにブランド名を冠して完成品の機関車を特定機に仕上げて販売する例も出てきているようですので、今後はこうした動きが広がっていくかもしれません。

 

さて、ネットオークションで落札した商品を宅配していただくときに、品名を「精密機械」と表示し、お送りいただくことが多いようです。

配達員の方に、少しでも丁寧に扱っていただきたいとの思いもあるかとおもわれますが、鉄道模型の下回りは、「機械」そのものですし、DCC化でギミックが充実する線現行モデルは、そのジャンル区分がふさしいと思います。

 

結局のところ「おもちゃ」であり、「工芸品」でもあり、「精密機械」でもある、という3つの側面をもっているのが鉄道模型、と言えるのかもしれません。