昨日10月14日は『鉄道の日』でしたが、そんな日にセンセーショナルなニュースが飛び込んできました。
コロナ禍による利用客減で鉄道各社は相変わらず苦境に立たされていますが、かねてから経営危機に陥っていたJR北海道にとってその影響は計り知れず、同社はさらなる経費節減のため来年3月ダイヤ改正時に各路線で特急列車や普通・快速列車の減便を実施する事を発表しました。
なかでも衝撃だったのは、旭川~網走で1日2往復運転されている特急大雪が全便臨時列車化されるという事です。臨時列車化といっても、年間で50日程度運休日があるという事なので、実際は最閑散期の一部の日以外は概ね運転されるようですが、沿線に10万人都市の北見市を擁する石北本線の定期特急列車が2往復のみとなってしまうインパクトは計り知れません。
ご存知のように、特急大雪は2017年3月ダイヤ改正の際に、キハ183系の老朽化に伴い使用車両数を削減する目的としてそれまで1日4往復運転されていた特急オホーツクの2往復を系統分割して誕生した列車ですが、札幌志向が強い道民にとってみれば旭川での乗換は不便以外の何者でもなく、ただでさえ減少傾向にあった石北本線特急の利用客がさらに減少につながるという悪循環をもたらしています。
先述のように、臨時列車といっても年間50日程度以外は運転されるので、定期列車との差はそれ程でもないかもしれませんが、ただでさえ利用客が減少傾向にあるため状況によってはさらなる減便も予想され、老朽化が進むキハ183系の代替のキハ261系新製両数の抑制もあって最終的には列車そのものの廃止、そして路線そのものの廃線(石北本線は『JR北海道単独では維持困難路線』の対象)という最悪なシナリオが浮かんできてしまうのです。
石北本線沿線には高規格道路(旭川紋別道など)が多くの区間で並行しており、それに伴い鉄道の競争力がどんどん低下する一方で、札幌~北見・網走を走る都市間バスの所要時間はJRと30分程度しか変わらず、しかも運賃も安いとなればとても太刀打ちできる存在ではありません。
運賃といえば航空機だって強敵で、普通運賃だと約2万円前後の新千歳~女満別線も早期に予約すれば6千円台と、JRの旅客運賃(乗車券のみ)よりも若干安価となるため、早くから予定が立てられる者にとっては最高の選択肢となり、速さと費用面どちらでも有利なためコストパフォーマンスは最高なモノとなります。
競合相手ばかり有利になる一方で、鉄道に関しては線路や鉄道施設のインフラを自社で管理しなければならず、固定費が掛かりすぎるため価格競争に付いていく事ができません。道路は新しい路線を続々建設し、補修や線形改良が頻繁に行われるのに対し、鉄道は老朽化したトンネルや橋梁を改修できないままだましだまし使い続け、改修できなければ速度を落としての走行を余儀なくされ、それでもどうにもならなければ廃線という最悪な結末を迎える事となります。
そんな事情があるのだから、列車や車両の魅力におカネを掛ける事ができず、スピードアップもままならない事から石北本線特急の利用客はどんどん減ってゆき、札幌直通列車の半減や今回の減便につながる事になったのですが、これを「仕方ない」だけで済ませる問題でしょうか?
国鉄が分割民営化された事によるメリットは私も認めますが、そればかりではなかった事も事実です。
利益重視の経営になれば採算の合わない路線に関しては積極的な投資を行わなくなり、他の交通機関との競争力はどんどん低下していきました。それを解決するには、国、道、自治体で税金を出し合い『上下分離方式』としてインフラを分離し、JRの負担を軽減する事が最善と私は考えますが、地方の鉄道、交通を維持するために国民みんなで考えていかねばならない問題だと私は思うのです。
国鉄の分割民営化を誰よりも推進した中曽根元首相の葬儀に税金を投入する位なら、ローカル線の再生のために使って頂きたいのが正直な処ですよ。
長々と駄文を述べましたが、特急大雪の臨時列車化は沿線自治体にとってもショックな出来事と思われ、この事がきっかけにさらなる鉄道離れに拍車を掛けないかが心配です。今後最悪な事態になる事がないよう、私もできるだけ乗ってあげたいものです。
(本記事の写真はすべてイメージです)