ピロのブログVer3

Ver2の続きです

近鉄一般車 車両撮影記 その他の鉄道

現行近鉄一般車の妻面縦樋

■ 記事概要

車両の外観を視る時、見た目の違いとして認識出来る要素は、各部位で多様に存在します。

色々な箇所を観察してみる中、近鉄車両の車体妻面を視ると、屋根肩のRや窓が埋められているか否かといった大まかな差異の他、手摺の数・長さ・形状や配管の位置、配電盤・ツナギ箱の有無といった細かな違いで、見た目のバリエーションが大分と存在する事に気づかされます。

そうした差異が生まれるきっかけは、増備途中の設計変更だったり、系列の中長期に渡る改造工事内容に仕様変更が入った事だったりと、様々です。

今回の記事では、車両妻面に見られる様々な差異要素の内、屋根上から中間妻面側に降りて来る雨樋配管が外に露出しているか否か(外付け縦樋の有無)に着目し、2020年4月1日時点で在籍中の近鉄一般車等を取り上げ対象として、その縦樋の配置状況を各車両の登場世代別で簡単に紹介します。


■ 記事本文

こんにちは

ここ数か月は【資料】記事ばかりの更新でしたが、今回は久々の通常記事です。

取り上げるのは近鉄電車。紹介する話題は、現在活躍する近鉄一般車の妻面形態です。

妻面形態といっても、外観のどの部位を視るかでその分類も様々になる事かと思いますが、今回の記事では、屋根上から中間妻面に降りる雨樋 (以下、縦樋) に着目し、それが外付けされているか否かについて取り上げます。

人によっては全く気に留める事がない話題かと思いますが、個人的には前々から気になっていた要素の一つでした。言及こそあれど、特にこれといって取り上げているような本やサイトはあまり見当たらないので、今回ここで取り上げてみる事にします。

以下、登場世代別かつ新しい順で、近鉄および元近鉄の各車両における中間妻面の縦樋外観を簡単に紹介します。

第17記事目 目次

1:「シリーズ21」以降

2:量産VVVF制御車以降

【参考文献】

3:新製冷房車以降

【参考文献】

4:ラインデリア車・非冷房車

【参考文献・情報】

5:おわりに

6:リンク集

では、記事内容に移ります。


1:「シリーズ21」以降

2020年現在、未だ近鉄の最新通勤形車両群の位置付けにある「シリーズ21」ですが、いずれの車両も妻面はスッキリとした見た目に仕上げられました。

この項目では、3220・5820・9020系以降に登場した車両群の縦樋状況について、ざっと紹介します。

〈五位堂検修車庫/2012-11-11〉
<大和西大寺/2020-02-12>
〈五位堂検修車庫/2011-11-13〉

3220系から始まり、5820・9020・9820・6820と系列展開してきた「シリーズ21」の縦樋は、いずれも車体に埋め込まれる形で機能しています。

屋根上の両側には、縦樋へ雨水が流れ込みやすいようにする工夫なのか掘り込みがあり、集まった雨水は、それぞれの端部に設けられた計4か所の穴から埋設された直線状の縦樋を通じて床下へと落ちていく様子です。

妻面上の突起物は、手摺や電気系統の配管および配電盤が主であり、量産アルミ車以前の車両妻面と比べると、全体的にスッキリとした見た目となりました。

〈五位堂-近鉄下田/2020-08-13〉※中間車
〈五位堂-近鉄下田/2015-07-03〉※中間車
〈五位堂-近鉄下田/2020-08-13〉※先頭車

一方、「シリーズ21」と同世代である7020系に関しては、編成を構成する全車両の妻面で屋根上からの縦樋が外付けとなっています。

7020系は、中間車妻面で縦樋が外付けとなっている7000系の車体をベースとした設計で生まれた系列です。「シリーズ21」と違って雨樋が外付けとされたのは、同系が7000系の要素を多く踏襲した事が影響しているのかもしれません。

2:量産VVVF制御車以降

「シリーズ21」以前の量産VVVF制御車群、すなわち1980年代中盤以降2000年前までに登場した車両群については、ほぼ全ての車両で縦樋が外付けです。

この項目では、3200・7000系以降に登場した車両群の縦樋状況について、ざっと紹介します。

〈橿原神宮前/2020-06-18〉
〈大和西大寺/2020-08-06〉

VVVF制御車群の車体の多くは、普通鋼に比べて軽量のアルミニウム合金製ですが、量産アルミ車体で竣工した最初の系列である3200系以降、アルミ製車両の縦樋は全て車体に埋め込まれる形で機能しています。

構内入替を想定した簡易運転台付き妻面を持つ3200系サ3300形や1026系モ1096形&サ1196形、9200系4連化用に単車で竣工したサ9310形など、編成内で異彩を放つ車両の妻面に関してもこれは同様です。

一方、VVVF制御車群において普通鋼製車体で竣工した系列に関しては、その大半で妻面の縦樋が外付けとなっています。この項目は、以下、5200系列群と7000系について少し触れて〆ます。


先ずは5200系列群です。

〈五位堂検修車庫/2012-11-11〉
〈恩智-法善寺/2019-10-19〉

5200・5209・5211系は、連続窓の採用で車体強度を確保する都合上、普通鋼製の車体とされた系列群ですが、いずれの形式も妻面の縦樋は外付けとなっています。

系列群の各形式が登場した時期には、既にアルミ製車体で竣工した車両も多数在籍しており、この時点で一般車の縦樋は、アルミ製車体が埋め込み・普通鋼製車体が外付けと規定されていたのかもしれません。

ちなみに、特急車の縦樋に関しては、昔から現在に至るまで普通鋼製の車体に埋め込む事が基本となっているようです。5200系と同時期に登場した21000系「アーバンライナー」も最新の80000系「ひのとり」も、普通鋼製車体に縦樋が埋め込まれています。後の項目で触れますが、かつての一般車も埋め込みが基本だった事を踏まえると、特急車の縦樋が基本的に埋め込みで貫かれているのは、とにかく見た目を重視しているという事の現れなのかもしれません。普通鋼製の車体を採用し続けるのは、後の改造等を見越した故という内容の記事を前にどこかで読んだ気がしますが、改造に伴う縦樋外付け化の話題等含め、ここではこれ以上触れない事にします。


続いて7000系です。

大阪メトロ中央線と直通するけいはんな線向けに製造された7000系の各形式は、その全車が普通鋼製で竣工しました。妻面の縦樋状況としては、中間車が全て外付け、両先頭車が屋根上からの外付けで直接降ろさない見た目となっています。

〈五位堂検修車庫/2017-10-28〉
〈大和西大寺/2020-03-30〉

中間車で外付けされている縦樋の形状に関しては、先ず屋根上からの配管が車体上部のRに沿う形で降ろされ、そこから途中の転落防止幌先端前で少し迂回して床下部に到着する見た目となっています。

迂回区画については、転落防止幌の設置器具を明らかに避けており、転落防止幌設置前の外観が掲載されている「サイドビュー近鉄4」で直線形状の縦樋となっている姿を見る限りでも、現在の形状は転落防止幌を設置した車体更新後に定着した見た目である事が伺えます。

ちなみに、7000系の縦樋では外側に向かって迂回していますが、7020系の縦樋では内側に向かって若干迂回する形となりました。これは、7000系と7020系の妻面で貫通路両側の窓の大きさが異なっている事が影響していると思われ、窓が小さめにされた7020系は内側に配管を回す区画の余裕があったのに対し、窓が大きめで他の配管も窓横に併存していた7000系では外側に迂回せざるをえなかった事が考えられます。

7020系の妻面窓が転落防止幌の設置も念頭に小さくなった事は、妻面に延びる管の配置で迂回を出来るだけ少なくする事に貢献しており、この点は7000系からの改良の一つなのかもしれません。

〈松塚/2017-06-28〉
〈大和西大寺/2020-03-30〉

先頭車の縦樋と水出しに関しては、妻面側の車体構造が分からないので何ともなのですが、雨水を下に落とす穴自体は屋根上端部に存在している様子です。なので、縦樋状況の推測としては、内部に縦樋を仕込んでいて穴から直下で水を落としている、もしくは内部に組み込んだ短めの縦樋を屋根直下で他の配管と合流させ、外付けしたその配管から水を出している事が考えられます。

ちなみに、7020系の先頭車では、前項目で触れた通り、中間車ともども外付けの縦樋が備えられており、妻面では窓横の「持ち手」や他の配管と併存しています。7000系の先頭車で縦樋が外付けにならなかった理由は分かりませんが、個人的には、窓の大きさと窓横の「持ち手」設置の都合上、外に出せなかったのではないかと思えます。7020系を見る限りでも、この「持ち手」の設置は引き続き必要とされている事が伺えますし、他の中間車に合わせる等の目的で窓の大きさを小さくできないのであれば縦樋も内に組み込まざるを得なかった、という事なのかもしれません。


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●文献

『サイドビュー近鉄4』、レイルロード、2002年8月8日発行

→車体更新前・転落防止幌設置前の7000系の車両側面写真が掲載(妻面外付け直線形縦樋)

【参考文献】


3:新製冷房車以降

量産VVVF制御車以前において、制御方式を問わず初めから冷房装置を搭載して製造された系列群の事を、便宜上、ここでは新製冷房車と呼称しますが、普通鋼製で竣工したこれらの車両群の縦樋も基本的に外付けです。

この項目では、一般車冷房化の試作車である2680系から一般車VVVF制御化の試作車である1420系までに登場した車両群の縦樋状況について、ざっと紹介します。

〈富吉[改札外より撮影]/2020-06-01〉
〈五位堂検修車庫/2019-10-19〉
〈恩智-法善寺/2020-08-21〉

新製冷房車の内、角ばったRの車体を持つVVVF制御試作車1420系および界磁チョッパ制御採用系列群(1200/1201/1400/2050/6600/8810/9000/9200)は、当初より外付けの縦樋を装備して竣工しました。縦樋の形状は、妻面の窓を避ける必要もあってか、先ず車体上部のRに沿う形で妻面の両端寄りまで配管を寄せており、そこから直線状で床下部まで降ろす見た目です。

ちなみに、9200系に関しては、前項目でも少し触れた通り、4両化に際してアルミ製車体の中間車を編入しており、同系各編成の縦樋状況としては、縦樋が埋め込まれた編入車と外付けの縦樋を備える既存車が混在しているという事になります。

〈五位堂検修車庫/2015-10-31〉
〈高安検修場[敷地外より撮影]/2015-11-05〉
〈壺阪山-市尾/2020-04-18〉

続いて界磁チョッパ制御以前の車両、すなわち丸まったRの車体を持つ界磁位相制御ないし抵抗制御を採用した車両群ですが、こちらも一系列を除く全ての車両が当初より外付けの縦樋を装備して竣工しました。縦樋の形状に関しても、先述した見た目とほぼ同様であり、裾を絞った車両は、車体下部の裾絞りに合わせて床下近くで配管の傾斜があります。

一方、竣工当初において車体の縦樋が外付けでなく内蔵であった系列は、一般車冷房化の試作車である2680系です。同系以前に登場したラインデリア車・非冷房車新系列の妻面縦樋は、見た目を重視した故か車体内蔵が基本となっており、同系各車の縦樋もこの流れで妻面埋め込みとされた事が伺えます。

〈高安車庫[敷地外より撮影]/2020-06-01〉
〈高安/2017-07-21〉
〈高安検修場[敷地外より撮影]/2020-06-26〉

2680系が登場した時期は、新製車体の縦樋を内蔵から外付けへと変更する過渡期だったようで、新製冷房車の新系列として1971年6月に竣工した2680系が縦樋を内蔵した状態の車体で各形式製造されたのに対し、同年10月にラインデリア車の新系列として登場した2430系の各形式は、縦樋が外付けされた車体での竣工でした。これ以降、近鉄一般車の普通鋼製車体は、ナロー線区を除いて縦樋を外付けする仕様が基本とされており、2680系の試験実績を踏まえて1972年度に製作された新製冷房車の量産系列である1200(初代)・2610・2800系の縦樋は、いずれも外付けとされています。この仕様は、1973年度に製作された奈良線系統8600系や1974年度に製作された南大阪系統6200系でも同様です。

普通鋼製の新製一般車で縦樋が外付けに変更された事は、縦樋内蔵車体で竣工した既存一般車両に対しても影響を与えており、1971年度以降で改造機会があった車両に対しては、埋め込まれた縦樋を外付けに変更する工事が順次施行されました。2680系に関しては、車体A更新時に外付け仕様へと改められています。恐らく大半の車両は、同系と同様の車体更新時か冷房設置改造時に外付け化が行われたものと思われます。

ちなみに、ナロー線区では、1971年度以降も縦樋を車体に埋め込んだ仕様の系列(260/270)が新造されており、近鉄から移管された後も、この仕様で系列各形式の増備が続きました。

〈東員[改札外より撮影]/2020-09-15〉

また、1971年度以前に製作された縦樋埋め込み車体の車両に対して外付け化を行う流れ自体は、ナロー線区にも波及しており、近鉄時代にサ120形・ク140形・サ140形の3形式で改造が行われています。

それ以外の車両は埋め込んだままとされ、四日市あすなろう鉄道からサ120形が引退した現況では、三岐鉄道北勢線のクハ140形およびサハ140形のみがナロー線区で外付け縦樋を有する車両として活躍中です。


【参考文献】…2020.10.10時点

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●文献

東京工業大学鉄道研究部、『私鉄電車ガイドブック5 近鉄』、誠文堂新光社、1978年8月10日第1版発行

→マルーン単色時代の2680系モ2680形C#2681[M]の写真が掲載(妻面内蔵縦樋)

→マルーン単色時代の2800系モ2800形C#2801[Mc]の写真が掲載(妻面外付け縦樋)

→マルーン単色時代の6200系モ6200形の写真が掲載(妻面外付け縦樋)


『サイドビュー近鉄3』、レイルロード、2002年8月8日発行

→赤白ツートン塗装(裾帯付)・車体更新前の2680系2683Fの車両側面写真が掲載(妻面内蔵縦樋)

→赤白ツートン塗装(裾帯付)・車体更新後の2680系2編成の車両側面写真が掲載(妻面外付け縦樋)


「近畿日本鉄道 現有車両プロフィール2018」『〈特集〉近畿日本鉄道 鉄道ピクトリアル2018年12月臨時増刊号』、2018年12月10日発行、第68巻第12号 通巻954号、P217-284

→マルーン単色時代・新製直後の2430系モ2430形C#2431[Mc]の写真が掲載(妻面外付け縦樋)


「詳説 近畿日本鉄道8000系列」『とれいん 2020年1月号』、2020年1月1日発行、第46巻第1号 通巻541号、P40-57

→マルーン単色時代・新製直後の8600系8602Fの写真が掲載(妻面外付け縦樋)

【参考文献】


4:ラインデリア車・非冷房車

新製冷房車以前に竣工した現役の抵抗制御車群、すなわちラインデリア搭載車ないし非冷房車(扇風機搭載車)として当初竣工した車両群の縦樋は、現在、ほぼ全ての車両で外付け状態となっています。

但し、前項目で触れた通り、外付け状態で竣工した車両自体は少数派です。竣工時車体の縦樋状態としては、1971年度以降に竣工したラインデリア車が外付け状態での登場で、それ以前に竣工したラインデリア車および非冷房車は、見た目が重視された故か、車体内蔵状態で竣工しました。

上記車両群の現在までの縦樋状況を整理するにあたって、この項目では以下、当初から縦樋外付けで竣工したラインデリア車群とそれ以前の当初縦樋内蔵で竣工した車両群(ラインデリア・非冷房)に分け、その上で紹介を進める事にします。


先ずは当初から縦樋外付けで竣工したラインデリア車群です。

この車両群において、当初から縦樋を外付けした状態の車体で竣工した系列としては、920・1000・2430の3系列が挙げられます。その中で一番早い1971年10月に竣工した2430系は、外付け縦樋の車体を持つ最初期の車両でした。

〈大和朝倉[改札外より撮影]/2019-09-27〉※2433F
〈大和朝倉[改札外より撮影]/2019-09-27〉

縦樋の形状に関しては、新製冷房車群とほぼ同様です。ただ、平屋根である分、水が落ちる穴は新製冷房車よりも若干低めの位置にあり、配管が下に伸び始める場所も併せて若干低めの位置となっています。

一方、2430系各形式の竣工と同じ時期に並行して増備が進められていた他系列の新製車については、2430系登場以降で外付け縦樋の車体へと変更されています。

〈橿原神宮前/2020-06-10〉※6063F
〈壺阪山-市尾/2020-04-18〉※6043F

増備途中で新製車体の縦樋が内蔵から外付けに変更された系列は、2410・6020・8400の3系列です。内分けとしては、2410系が2427-2430F・2410F、6020系が6043F-6077F、8400系が8416FおよびC#8465[M]・C#8315[Tc]・C#8417[Mc]となります。

2410系と6020系の各編成については、車体設計の方も2430系に準じた仕様へと変更されており、当初からの排障器取付や車体幅の拡大など、外付け縦樋化以外の変更点も幾らか存在しました。


続いて、当初縦樋内蔵で竣工した車両群(ラインデリア・非冷房)です。

先述した通り、こちらの車両群は、登場後しばらく経ってからの改造によって大半が外付け縦樋化されました。現在の近鉄線では、モ8450形C#8459[M]を除き、当初ラインデリア車として竣工した車両のみが在籍しています。

ここでは、先にラインデリア車の縦樋状況について触れ、その後に非冷房車および異端車の縦樋外観を紹介します。

先ずは後の改造で縦樋外付け化されたラインデリア車群です。

〈五位堂検修車庫/2018-10-28〉※2413F
〈大和西大寺/2020-08-06〉※8079F
〈橿原神宮前[改札外より撮影]/2020-08-17〉※C#24「はかるくん」

ラインデリア車の外付け化された縦樋の形状に関しては、新製冷房車群とほぼ同様です。配管の位置についても、当初から外付け縦樋を備えていたラインデリア車群とほぼ同様と言えます。

外付け縦樋化を行った時期については、詳細は不明ですが、恐らく車体更新か冷房設置改造を行うタイミングで改造されたのではないかと思います。

ただ、この改造は、全ての車両に対して行われたわけではないようで、現在も一部の編成で縦樋内蔵車体の車体が現役中です。

〈五位堂検修車庫/2019-10-19〉※2422F
〈五位堂-近鉄下田/2020-06-25〉※2423F
〈高安/2020-08-07〉※2425F
〈橿原神宮前[改札外より撮影]/2019-08-26〉※6039F
〈橿原神宮前[改札外より撮影]/2019-08-26〉

2020年4月1日時点において縦樋内蔵車体で現役中なのは、2410系2422F・2423F・2425F・2426F、6020系6039Fの計5編成12両です。

ラインデリア車縛りを無くして近鉄線外の車両も含めるのであれば、当初非冷房車として竣工した養老線管理機構の620系621F-C#561[T]も加えて計13両となります。

他の車両が(恐らく)車体更新のタイミングで縦樋外付け化を行った一方、これらの車両だけ改造が行われなかった理由は不明です。ただ、その後も手を付けられていない所をみると、引退までこのままの状態をキープするのかもしれません。

続いて後の改造で縦樋外付け化された非冷房車です。

〈大垣[改札外より撮影]/2020-05-31〉
〈西大垣/2020-05-31〉

今は近鉄車ではないですが、近鉄で当初非冷房車として竣工した車両群が現役中の養老線では、上述したC#561[T]を除き、全ての車両で縦樋が外付け化されています。

これらの車両の縦樋の形状に関しては、やはり新製冷房車群とほぼ同様です。外付け縦樋化を行った時期については、ラインデリア車群と同様、恐らく車体更新時か冷房設置改造時のタイミングで行われたのではないかと思います。

〈西大垣/2020-05-31〉
〈西大垣/2020-05-31〉
〈大垣[改札外より撮影]/2020-05-31〉

C#561[T]については、パンタグラフがある2位寄りのみ縦樋が内蔵されており、同1位寄りは縦樋外付け化されているのが特徴です。620系の種車系列で現在は各車形式消滅済の6000系には、片側のみ縦樋外付け化された車両が一部存在していたようで、C#561[T]は、現在もその名残を残す最後の1両となっています。

さて、元東急車を除けば、非冷房車として竣工した元近鉄車のみが活躍する養老線ですが、一方の近鉄線でも、元8000系の先頭車であるモ8450形C#8459が現行近鉄一般車で唯一の元非冷房車として活躍中です。この項目もとい今回の記事の最後は、異端車の縦樋状況として、中間車化改造が行われた上で現役中の元先頭車2両(モ8450形C#8459&C#8461)の外付け縦樋外観を紹介して〆る事にします。

先ずはC#8459[M]です。

同車は、元8000系8059F-C#8559[Tc]で、1975年12月に電装の上で中間車化され、現在はラインデリア車の8400系先頭車に挟まれて活躍しています。縦樋は8000系時代からしばらく車体埋め込みでしたが、現在は外付け化済です。改造時期は不明であるものの、1位寄り・2位寄り共に恐らく中間車化改造時(=事故復旧時)に外付け化が行われたものと思われます。

〈Twitterより埋め込み・引用〉
〈佐味田川[改札外より撮影]/2018-07-18〉
〈佐味田川[改札外より撮影]/2019-08-11〉

縦樋形状に関しては、同車1位寄りは新製冷房車群とほぼ同様です。ただ、ラインデリア車と比較すると屋根にRがあるため、水が落ちる穴は連結車両よりも若干高めの位置にあります。

新製冷房車との高さ比較は、C#8459[M]と同じく8059Fから捻出され8600系8617Fへ組み込まれたC#8167[T]が既に廃車となっているため直接に行う事は出来ませんでしたが、ラインデリア車との比較を踏まえた様子からみるに、縦樋の降下開始位置はかなり近いのではないかと思います。

〈黒田-西田原本/2020-02-24〉
〈但馬-箸尾/2018-10-07〉
〈佐味田川[改札外より撮影]/2018-07-18〉
〈佐味田川[改札外より撮影]/2019-08-11〉

同車2位寄りの縦樋は、その上部が元先頭車の名残を色濃く残す独特の形状です。その外観は、元々あった水溜部分から横に穴を空けて配管を通す見た目となっており、車端部までの配管は、先頭形状のRに併せて先ず斜め縦方向に延びています。元々あった屋根上の内部縦樋の穴が塞がれているかは不明ですが、わざわざ外付け化するぐらいなので、改造と同時に塞いでいる可能性が高そうです。

ちなみに、近鉄高性能一般車群において、元先頭車の運転室寄り縦樋を外付け化する改造は、1975年度後半改造のモ8450形を始め、以降サ1550形・モ6000形・サ6100形・サ8150形といった形式で実施されていますが、それ以前の1973年度終盤から1975年度前半にかけて改造された運転台撤去車(モ1470形・モ1600形・サ1780形)では、縦樋外付け化が行われていません。運転室撤去後の客室窓処理に関しても、1975年度前後の改造車はスタイルが分かれています。こうした差異の発生要因としては、当時の予算都合や改造工場による差という事が考えられそうですが、もしかしたらこの時期は、中間車化改造のスタイルを選定する過渡期だったのかもしれません。

続いてC#8461[M]です。

〈黒田-西田原本/2020-02-24〉
〈黒田-西田原本/2018-06-17〉

同車は、元8400系8411F(2連)-C#8411[Mc]で、1984年12月の冷房設置および省エネ化時に運転室撤去の上で中間車化されました。現在、8411F(3連)-C#8411[Mc]として活躍しているのは、当初から縦樋を外付けした車体で竣工した元C#8417[Mc]です。

C#8461[M]の縦樋は、C#8411[Mc]時代は車体埋め込みでしたが、2位寄りは中間車化改造時に、1位寄りは(恐らく)冷房設置改造時に外付け化改造が行われています。

外付け縦樋の形状・高さに関しては、同車1位寄りは他のラインデリア車群とほぼ同様です。一方で運転室撤去&客室化が行われた同車2位寄りは、上部の形状が独特のものになっています。

その外観は、C#8459[M]と概ね同様です。上部は、元々あった水溜部分の端から管を伸ばし、先頭形状のRに沿って床下部まで降りるスタイルで、こちらも先ず斜め縦方向に配管が延びています。元々あった屋根上の内部縦樋の穴が塞がれているかは不明ですが、わざわざ外付け化するぐらいなので、こちらも改造と同時に塞いでいる可能性が高そうです。

ちなみに、元先頭車の現役中間車は、近鉄だと上記2両のみですが、元近鉄線を含めるのであれば、ナロー線区の北勢線でも現役車が存在しています。

〈北大社車両区[敷地外より撮影]/2016-09-26〉
〈東員[改札外より撮影]/2020-09-15〉

北勢線で運転室撤去車として現役なのは、サハ130形C#136とサハ140-1形C#142・C#144およびサハ200形C#201の計4両です。

C#136は、制御車化を見据えた車体のT車をTc車化した後、他車がモ277形に合わせた前面見付けへ変更する前の時期に再度T車化されたため、他のサ130形とそこまで外観は変わりません。他3両は、運転室があった跡が明確に残っています。

ただ、縦樋に関しては、前項目末で記載した通り、ナロー線区では縦樋内蔵車体が基本のようで、近鉄時代に後から外付け化改造を行ったク140形およびサ140形以外の縦樋は埋め込まれたままです。また、ク140形時代に1位寄り妻面の縦樋外付け化を行っていたC#142とC#144の2両は、北勢線が三岐鉄道へ移管された後に2位寄りの運転室が撤去されていますが、この時は雨樋外付け化は行われていません。運転室撤去車以外の車両についても、移管後に外付け化される気配が長らくない辺り、特に改造する必要がないのであれば、今後も現状維持なのだと思います。


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●文献

東京工業大学鉄道研究部、『私鉄電車ガイドブック5 近鉄』、誠文堂新光社、1978年8月10日第1版発行

→マルーン単色時代の200系ク200形の写真が掲載(妻面内蔵縦樋)

→マルーン単色時代のモ1470形・モ1600形・サ1780形の写真が掲載(妻面内蔵縦樋)

→マルーン単色時代・冷房設置改造前の8400系モ8450形C#8459[M]の写真が掲載(2位寄り妻面外付け縦樋)

→マルーン単色時代・冷房設置改造前の8400系モ8450形C#8466[M]の写真が掲載(外付け縦樋)


『サイドビュー近鉄1』、レイルロード、2001年3月15日発行

→車体更新前後のラインデリア車・非冷房車の側面写真が多数掲載


飯島 巌・藤井信夫・井上広和、『【復刻版】私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ 通勤車 他』、ネコ・パブリッシング、2002年7月1日初版発行

→マルーン単色時代・冷房設置改造前の8400系モ8400形C#8417[Mc]の側面写真が掲載(外付け縦樋)

→マルーン単色時代・冷房設置改造前の8400系ク8300形C#8311[Tc]の側面写真が掲載(内蔵縦樋)


「近畿日本鉄道 現有車両プロフィール2018」『〈特集〉近畿日本鉄道 鉄道ピクトリアル2018年12月臨時増刊号』、2018年12月10日発行、第68巻第12号 通巻954号、P217-284

→マルーン単色時代・新製直後の2430系モ2430形C#2431[Mc]の写真が掲載(妻面外付け縦樋)


「詳説 近畿日本鉄道8000系列」『とれいん 2020年1月号』、2020年1月1日発行、第46巻第1号 通巻541号、P40-57

→マルーン単色時代・冷房設置改造前の8400系モ8450形C#8459[M]の写真が掲載(1位寄り妻面内蔵縦樋)

→マルーン単色時代・冷房設置改造前の8400系8413Fの写真が掲載(妻面内蔵縦樋)

→マルーン単色時代・新製直後の920系921Fの写真が掲載(妻面外付け縦樋)


●ソーシャルメディア

古い車輛の写真 近鉄奈良線 4 670、800、8400

(里山工房)

→マルーン単色時代・新製直後の8400系8413Fの写真が掲載(妻面内蔵縦樋)

【参考文献】


5:おわりに

以上、近鉄および元近鉄の現役一般車両で見られる中間妻面の縦樋状況について、各世代の車両別にざっと紹介してみました。

まとめとしては、各世代の車両で外付けと埋め込みの2種類が存在する近鉄一般車の妻面縦樋は、一時期外付け状態が基本となったものの、アルミ合金製車体の車両が主流となった現在は、内蔵を基本とする車体で新造車が竣工しているという事になります。

〈壺阪山-市尾/2020-08-07〉※6039F

普通鋼製車体の車両に関しては、外付け化が進められた理由は定かではありませんが、元内蔵車も車体更新時等を機に外付け化されていった辺りから察するに、車体腐食対策の一環で順次改造されていったのかもしれません。

ラインデリア車群で改造から漏れた車両が居たのは、もしかしたら対策が必ずしも必要でなかったからなのかもしれませんが、これに関してはよく分からないです。


個人的に、縦樋を外に出す出さないの判断の根底にあるのは、車両の見た目を気にするか否かにあるのかなと思います。

一時期の阪神電車では、先頭車でも中間車でも関係なく縦樋を外に出していた事がありましたが、そうした傾向は、近年の日本の新造車両ではほぼ見なくなりました。近鉄でも、特急車の新造車では内蔵スタイルを貫き続け、一般車もアルミ製車体の採用で再び内蔵スタイルに戻している辺り、例え中間車の妻面でもごちゃごちゃした配管を外に出したくない意向があるのかもしれません。

近年登場している新造車では、いわゆる“武骨”な雰囲気が減ったスタイリッシュで滑らかな見た目を持つ車両がトレンドですし、車両の見た目もといデザインというのは、今回取り上げた縦樋処理を始めとして、色んな箇所で気にされ続けているのかなと思えます。


そういえば、縦樋とは全く関係ありませんが、デザイン関連の話題として、先日に80000系「ひのとり」が『2020年度グッドデザイン・ベスト100』なる賞を受賞したそうですね。

各所各所でこれまでの近鉄特急らしさから逸脱した同系ですが、一方で外観やサービス面などが評価されたようで、中でもバックシェル付き座席を標準装備した点は、応募時に推していただけあって高評価されたようです。

〈高安検修場付近/2020-10-06〉

最近は8両固定編成の搬入も始まり、年度内の増備完了にむけて着々と数を増やしている同系も、ぼちぼち近鉄特急として馴染む存在になってきた感じがあります。今後は、多くの人に新しい「近鉄特急」として認知される存在になっていくのでしょうね。

私個人としても、そろそろ一回ぐらい乗らんと…と思ってはいるのですが、なかなか機会がなく今に至ります。乗るとしたら一先ず来年以降になりそうです。

最後は関係ない話題でしたが、今回の記事は以上です。

6:リンク集

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近鉄電車が見える家で育った鉄道オタク。車両の差異や変遷に興味あり。鉄道の他に鳥も好きで、最近は鳩に癒される事がしばしば。