小田急は東急に「買い戻す」と言う約束で相鉄の株を買う様依頼され、買った。
しかし、相鉄買収の件はバレてしまい、東急が買う訳には行かなくなった。
このお陰で、小田急は初期には相鉄株の支払いがきつくて大変であったのだ。
されど、この苦悩は長くは続かなかった。
インフレである。
その上、株価その他の資産価値も上がったのであった。
小田急の財務状況は好転しつつあった。
相鉄株は困った時に何時でも売れる・・・いや、売ってはならない。
この相鉄株を持ち続ける事で絶えず東急への圧力になる。
東急が無理難題を言って来たら「相鉄株は何時買い戻すのだ?」と・・・
この相鉄株は東急に対する小田急の「伝家の宝刀」になりつつあった。
この件以来、東急の小田急に対する態度が変わった。
今迄は色々と言う事を聴かされ、大東急分離後の民鉄各社は東急の衛星的地位に付けられていた。
小田急はこの地位から抜け出し、今では東急の同盟者・協力者となった。
東急は何をするにも先ず、小田急の意向を聴く様になったのである。
大東急分離後の民鉄での会合にも五島自ら「安藤君、安藤君」と盛り立ててくれる。
(しかし五島は、相変わらずアレコレと指示はしてくるのだが・・・)
小田急は安藤・会社幹部達も今の厚遇に満足であった。
「悪くない。
これからは色々とやり易くなるだろう」
となると、業務にも少しは余裕が出てくる。
安藤が始めたのは相鉄の株主総会へ自ら行く事だった。
その相鉄の株主総会で安藤は相鉄側の提案を全て拒否した。
「異議あり!」と・・・
西武と争っている腹癒せか、安藤は快感になった。
何の気兼ねなくアレコレと理由を付けて文句を言えるのである。
相鉄の川又はこれを聴いて憤慨した。
話が全く進まなくなるからであった。
しかし、小田急は名実共に相鉄の筆頭株主なのである。
このままでは安藤にメチャクチャにされてしまうだろう。
川又は対策を練る事にした。