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ж 32 ж あれから20年

 投稿日時 2010/7/18(日) 午前 6:05  書庫 鉄道の間  カテゴリー 鉄道、列車
 

 




 今年はJR最後の牙城であった各新幹線を元とするL.Sの運営がそれぞれの道州に移管されてから20年である。以前は「JRで行く」などとつい口に出で恥ずかしい思いをした事もあったが最近ではそれもなくなりやっと私にも定着した様である。でも今年の卒学者はJRを知らない世代だ。私が就学中は末期とは言えJRが主体であった。同じLファンでも話はかみ合わない。なんだか寂しくてとてもJRが懐かしく思えてきた。そんなわけで、今回は初期にL化されJRの色を結構残している信濃州鉄道を巡る旅に出た。
 出発は新東京駅から。
 乗りこんだのは6:45発「かいじ101号」諏訪行き。
 6:30発の始発の大阪中央行き「ひかり1号」の後、しかも区間列車でなおかつ平日とあって乗車率は30%程だ。
 座席につくとすぐにウエルカムVが始まるのでプライベートからパブリックへと切り替える。
 プライベートにすると右上に出る到着までのカウントダウンが鬱陶しくて仕方がないのだ。それに旅の始まりはやはりパブリックがいい。列車の各停車駅の時刻を見ればいよいよ旅立ちという感じがする。
 もう何回も見たことがある路線説明や沿線案内までしっかりと見ているうちに発車。ウエルカムVが終わったところで車窓モードへ切り替え。
 6:52に新八王子を発車したところでパーソナルキャップをはずしてくつろぎモードへ。
 今までの車両ではキャップを通しての方がよりリアルな車窓画像が見られたのだが、今日乗っているTML700系はモニターが大型化されているのでキャップ無しでも十分であるし、所詮は50m上の地上RBで一部には古典的なCGも使われていると言う。それに500Km/hでのリアル近景モードをキャップで見たら目が回るだけだ。
 ちなみに、曽祖父のコレクションに20世紀末の列車走行音というのがあり、やたらバイト数が大きいのでどんなものであろうと思っていたら映像は無く音だけ。それなのにバイト数が大きいのはやたら時間が長いからだ。現に所要5分の八王子ですら40分もかかっていて新名古屋まで行ってしまう時間がかかっていたのだ。
 ウエルカム放送とでも言ったのであろうか、途中停車駅の案内などだけでも5分ほどかかっている。私の様にパブリックモードが好きならともかく、プライベートモード専門の人にはいらいらしてしまってしょうがなかったであろう。
 甲府7:05着。区間列車なのでやはり時間がかかる。
 駅前のLHで朝食。セットでも良かったのだが、ここはやはり駅御膳。
 駅御膳「煮貝」は煮あわびの寿司。モンモリナイト製の器に盛られなんとも良い風情である。これ、かつては駅のプラットホームで売られていて列車の中で、窓を開けて(!!)、風に吹かれながら食べたという。いやはや昔の人の衛生観念には恐れ入る。
 朝食を終えてしばし甲府駅前を散策。ひっきりなしに発着するDMVに混ざって旧式の燃料電池バスも見られるので時間はあっという間に過ぎてしまう。
 8:30、信濃州鉄道甲斐L.L小淵沢行きに乗る。ずっと昔は小淵沢まで10分であったがDMVの本数が増えた為現在では15分かかる。
 こちらは地上線なので生の風景が見られる。だが、窓が小さいのでせっかくの風景もキャップを通しての方がワイドなのはちょっと残念。なぜS規格のCSを使ったのか理解できない。
 甲府市街地は旧中央本線の跡地を利用した区間。塩崎の手前で大きくカーブするがそこまでは比較的直線なので利用しやすかったのであろう。塩崎を過ぎてからは各駅を直線で結ぶ新ルートになるが駅前後の旧線跡はしっかりとDMV分岐路線として使われていて「線路」の面影が見られる。
 ひっきりなしにすれ違うDMVを見て信濃州鉄道の大英断に改めて誉めてあげたいと思う。JRから切り離された路線を引き受けて窮地に陥っていた信濃州鉄道の3年間の全線運休によるL化大改革。まもなく建設負債もなくなるという。この成功が全国のL化に火をつけた。結果利益保全のためにリストラした部門に逆に食われてしまうという形でJRはなくなってしまった。旧知の者には寂しいところではあるが。 
 そんな事を考えているうちに気づけば八ヶ岳が目の前。小淵沢到着だ。う~ん。DMVでのんびりと、の方が良かったかなー。
 小淵沢で第一の目当て、保存鉄道。21世紀中ごろまでJR中央本線や小海線で使われていた車両が展示され一部は動態保存されている。中でも目玉は内燃機関という石油からの精製物、軽油を燃やして走るキハ120。
 もっとも、軽油が手に入らないので東京湾旧沿岸地区の埋蔵プラスチックから作られたLPKを使用しているのは仕方ない事だが。
 小淵沢鉄道保存館に入るにはまず切符という物を買わなければならない。エントランスには10台もの券売機が並んでいてタッチ画面で好みの切符を選んで買うのである。私はかねてから考えていてすんなりと昔の「北斗星」の寝台券を買ったのだが、いっしょの列車だった人たちは券売機の前でどれにしようか悩んでいてやたらと時間がかかっている。そもそもタッチ画面の使い方が解らない。係りの女性が説明してなんとかさばいているがずらりと並んだ券売機の理由はここにある。これが現役だった頃には更にカードを入れるという事もしなければならなかったそうである。なお、どのような切符を買っても値段は入館料の300Wである。
 手にした切符を改めて見れば東京発16:00で札幌着は9:00……。以前東京を午後5時に出て札幌で泊まってのんびりのつもりがすすき野でいっぱいやっている時につまらない用事で呼び出されて帰京し翌日改めて出直して8時過ぎに札幌に着いて仕切りなおし、という事があったが、この列車は2往復+1晩の時間かかっていたのだ。
 印刷されているJRの文字が懐かしい切符を今度は自動改札機なるものに入れる。通路が狭く分けられていてその脇にある機械に切符を入れると向こう側にピロリと出る。面倒くさい儀式だなぁ。
 正面の階段を降りれば動態保存車両キハ120乗り場。体験乗車しない人はエントランスから右へ曲がってそのまま進めばパークへと行ける。体験乗車は予約制で面倒な儀式は無いが乗車は別料金で野辺山まで行って来るコースが1000Wで約1時間、その他にも途中折り返しコースがある。私はもちろん最長コース。
 切符を仕舞いつつ階段を降りればホームだが、このホーム、ホームなんて代物ではない。ただのコンクリートの台に屋根が付いているだけの寒暖風雨耐え忍び場所であり、そこにキハ120が停まっている。ケロケロと立てている音がエンジンの音である。
 アイボリーとグリーンの車体はよく言えば古き洗練されたスタイルである。大きな窓が目立つがこれは観光用特別仕様ではなく当時の標準型である。しかもCSではなくガラスという珪素を主体とした物でできていて非常にもろい。こんなので本当に大丈夫なのであろうか。
 乗車の際驚いたのはホームと車体の間が20センチほども空いている事。これは固定されたレールの上を走る鉄道独特のもので現在の様に横方向への自由がない為車体の摺り寄せができないからである。だからRCでの乗車の際はホームと車体の間に橋を渡したり人の力で持ち上げていたそうである。
 席に着くとなんとも微妙な座り心地。とにかく体がなんとも不安定。やがて扉が閉まり発車。すると轟音と振動に身が包まれた。あまりの音に近くに座っていた幼児が泣き出してしまったほどである。
 だが、音の割には一向に速度が上がらない。まるで這っている様である。これなら不安定な座席でも大丈夫だ。ビリビリ震える窓がちょっと怖いけど。
 そのままの速度でじっくりじっくりと山を登って行く。ふと最後部へ行ってみるとなんともうもうたる煙が流れていた。昔は皆こんなだったのか、後始末が大変だったのがよく解る。右手に木々がほとんど育っていない山がちらりと見える。15年前のCO2分解施設微炭素粉噴出事故により木々が枯れてしまった山である。その向こうに見える富士山は今年の発表によるとT海抜3774m。最悪時より3ポイント回復はしているがまだまだである。
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 パークを出でから反対側にある小淵沢駅舎を見に行く。平成時代に建てられたコンクリート製でこんな歴史的建造物はもう東京では見られない。硬さと重量で支えるどっしりとした建物は、なるほどファンをうならせるだけはある。が、ご多分に漏れず建替えのうわさがあり、早くも反対運動や保存運動が始まっている。
 駅前で深呼吸。空気がうまいのは近くに数少なくなってしまったJHの水素プラントがあるためで、生産された酸素の一部を地元還元として放出しているせいもあるかもしれない。海水ではなく地下水利用なのだからなおさらうまいのであろう。
 さて、思わず時間がかかってしまい予約していた諏訪からの信濃州鉄道篠ノ井L.Lの列車に間に合いそうもなくなってしまった。
 別に自由席でも良いのだが、せっかく生の車窓が見られる線区に乗るのだから座席を取っておきたい。
 ところがパーソナルキャップに表示されたのは「個人認証が確認できません」。
 えっ、ひとりあたふたしていて白くなった頭に光がちらり。「あっ、またやっちゃった」先ほどパークに入園した後キャップをはずすと同時にホスト接続を切っていたのだった。だって楽しんでいる時に呼び出されたりするのイヤでしょ。ちなみに切ったまま列車に乗っちゃった事も何度かありまして、着席情報が確認できません(指定席の時)とかクレジット情報がありません(自由席)とかでADさんが来ちゃった事も。でもADさんが美人だとちょっと得した気分。
 ホスト接続をして御目当て列車のマルチマルスを見てみれば3号車車両中央部右窓際に空席あり。しかもこの車両LM1114-3001じゃないですか。ML1115系はJR時代まで中央L.Sで「ひかり」として使われていたもので、ちょっと古くなったのを信濃州鉄道が買取り、側板全CS化などの改造や車内のNH化がされている。つまりG乗得な車両な訳だ。
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--第32号(平成19年4月1日)--

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