名古屋へ向かうアーバンライナー車内での事です。エッセイその5。 | なまでこの鉄道写真館

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第五章    アーバンライナー
 難波から名古屋まで、近鉄のノンストップ特急アーバンライナーで帰っている時の事である。指定席の隣にたまたま座った女性が現役の高校生だった。難波駅の売店で弁当を仕入れ席に戻ってみるとその彼女が私の席の処で荷物の整理をしていた。
私は思わず「其処は私の席です」と主張した、私の云い方が何処かおかしかったのか彼女は「くすっ」と笑って見せた。
「はい、わかっていますよ、私の席は通路側ですから。」
彼女の席は窓側、私の席は通路側だった。
「今どこに住んでいるの」
「名古屋市の天白区に住んでるの」
彼女はそう答えた。
暫く会話をしていて車窓が明るくなった、アーバンライナーは鶴橋駅へ付いたのである。
とうとう会話のネタがなくなり、二人はそれぞれのヘッドフォーンステレオで音楽を聴くことにした。列車が山本駅を通過した辺りで彼女が突然
「貴方の今聴いているカセットテープと私の聴いているテープと交換してみない」
と云うのである。
「別に構わないけど」
「私は今このグループの音楽に嵌っているの」そう言いながら自分が聴いていたカセットテープを私に差し出した。
そして私も自分の聴いていたテープを彼女へ手渡した。彼女から渡されたテープを聴いてビックリした、日本グループのチューリップの曲だった。実は私が聴いていたのはビートルズの曲だったので、その彼女は今どんな心情で聴いているのか聞いてみたくなった。
 アーバンライナーが丁度伊勢中川の短絡線を徐行しながら通過しているところだった。彼女が私に「とても良い曲ですね、今この曲が外国で流行っているの」
と尋ねた。
「そのようだね」私はなんて答えて良いやら、只うなずくだけだった。
 彼女は同じテープをそのまま二度も聴いていた。
ふとした音で目が覚めた。私は借りたテープを聴きながらウトウトしてしまった様だ。アーバンライナーはすでに揖斐・長良川の鉄橋を渡り終えようとしていた。
この写真は本文とは関係ありません。名古屋線 黄金駅付近で撮影しました。
従来車と新型車が行き違うシーンです。
 
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