(鹿島参宮鉄道) ◯水 佐貫から 竜ヶ崎ゆき 記入式硬券乗車券 | 菅沼天虎の紙屑談義

菅沼天虎の紙屑談義

交通機関を利用する為の切符・・・一般の方々にとっては使い終わってしまえばタダの紙屑で、最後は係員に渡して終わりになるモノです。
そんな紙屑に夢中になってしまった大馬鹿モノの戯言にお付き合い下されば幸いです。

昭和36年12月に発行されました、「◯水 佐貫から 竜ヶ崎ゆき」の乗車券です。

 

 

JPR/てつどう青地紋券となります。

 

発着区間とも記入式となる券で、「通用当日限り」は印刷となっておりますので、社線内専用の券なのかも知れません。

 

 

 

 

 

同じ様式の小児専用券も存在しておりました。

 

 

この類の券は、印刷された常備券が不足した際に用いられる一時的な券と思われますが、大人用、小児用とも発行日が同じであり、双方の券が同時に不足する事態は通常時には余り考えられません。

 

双方の券とも「2等」と印刷されておりますから、3等級制から2等級制となった昭和35年7月1日以降に調製された券と考えられ、また運賃変更印が押印されておりますので、この券は運賃改訂前から設備されていたものと思われますが、当時の運賃改訂の期日が不明なため、発行日が運賃改訂からどのくらい経過しているのか判断出来ませんが、発売枚数が多いと思われる区間でもあり、このような応急的な様式の券を通常時に長期間用いていたとは考えにくいのですが・・・。

 

先に「通常時に・・・」と申しましたのは、当時の鹿島参宮鉄道は労使関係が非常に混迷を極めていた時代で、度重なるストライキが行なわれており、「関東鉄道株式会社七十年史」によりますと、この乗車券が発行された昭和36年12月18日の前日の12月17日には、11月19日に続いて2回目となる全社24時間のストライキ、12月21日には3回目の全社24時間のストライキが断続的に行なわれ、闘争は現業部門の鉄道全駅の出改札業務拒否、運転士、車掌の乗務拒否などの他、本社の事務、経理部門にも及んでおり、このような応急的な様式の乗車券が、大人用、小児用とも同じ日に発行されているのは、鹿島参宮鉄道から国鉄窓口への券の供給が一時的に滞るなど、労使関係の混迷で何らかの影響があった結果なのかも知れません。