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ж 22 ж どっすん、ガックン                        
                    投稿日時2010/2/14(日) 午前 7:08  書庫鉄道の間  カテゴリー鉄道、列車

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 昨今の電車の乗り心地の良さには目を見張る物がある。
 特にそれを感じるのは発車の時で、すべるように加速していく。
 そこで「最近の運転手は腕が良くなったなー」と感心してしまいがちであるが、それはちょっと早合点で、実際に腕を磨いたのは電車そのものなのである。
 では電車のどこが良くなったのかというと、それは電車の制御装置とモーター。
 以前の電車は速度の調節に抵抗器を用いて、直流モーターを回して走っていた。
 この方式は構造が簡単で速度、回転方向ともに制御しやすいという点で、電車というものが走り出して以来ずっと使われてきた方式である。
 しかし、欠点もあって、これはモーターの特性によるものなのだが、モーターには回転させる為に電流を流すとそれに逆らう「逆起電力」が発生し、それに打ち勝つだけのパワーを与えて(電流を大きくする)やらなければ回転を始めないのである。 つまり、抵抗器でどんなにじわじわと電流量を大きくしていってやっても、あるところまではピクリとも動かず、そこを越えるといきなりビユゥーンとまわり出すのである。
 よって、発車の時にガックンと衝撃が来てオットットッ、という事になるのである。
 また抵抗器そのものもじわじわと抵抗をへらしていく(電流を増やしていく)ようにはできておらず何段階かに分けて制御する方式なので加速中も抵抗が切り替わるたびにガクンと衝撃が来る。
 しかし、最近の電車ではこの抵抗器と直流モーターを使わずに、はやりのインバーターと交流モーターを使うようになった。
 その制御方式はなにやら難しいことをウィンウィンとやっているようで良くはわからないのだがとにかく加速がとても滑らかになりガクンという衝撃も無くなった。
 でも、実を言うと私はこの旧式の電車のガックンが好きである。
 もちろん毎日通勤通学に使っている人からすれば、とんでもない、という事ではあるが、お出かけの時ぐらいしか鉄道を使わなくなってしまった私には、その昔の鉄道旅行が思い出されるし、電車らしさというものも感じられる。
 そうは言っても、旧型電車では編成中のモーターの同調ができていなくて、後ろの車両にドカンと押され、前の車両にガンと突き当たり、その勢いで前の車両にグンと引っ張られると、また後ろの車両からドカンと押される、というようなまるでシェイクされているような揺れには、さすがの私も辟易してしまう事がある。
 電車は力がありすぎるのでこのような度を越した揺れ方になってしまう事が多々あるようだが、私がよく旅に出ていた20年ほど前はこの様な力の有り余る電車の勢力は都市圏におけるものに留まっていて地方へ行けば非力な列車のやさしい衝撃が迎えてくれたものだった。
 もっとも、このやさしい衝撃は今と違いそれこそ運転手の腕にかかっていたもので、時には窓枠に頭をぶつけたり、ビールをひっくり返されたりとひどい目に会ったことがある。
 その最たるものが、電気機関車の引っ張る客車列車の発車時で、物足りないほど静かに発車する時と、「うわっ、客車壊れちゃうよ。」というくらい派手にドカンと発車する場合様々であった。
 鉄道に限らず、停まっている物体を動かす時にはその動き出す瞬間が最も力を必要とする。よって電車の様に編成のあちこちに動力を持っているものはそれぞれが動こうとするので列車全体をいっせいに走り出させる事が可能なのだが、機関車の引く列車ではそれが出来ない。動力が機関車にしかないからだ。
 列車全体を一度に走り出せさせる為には相当の力を必要とする。しかしあいにく機関車にそれだけの力が無く一斉発車ができない。そこで連結機に少し隙間を持たせて、1両ずつ順番に発車出来る様にしてあるのだ。
 つまり、機関車が動く、1両目が引っ張られ動き出すが2両目との間の連結器には余裕があるので2両目に力は伝わらない、1両目が前進して連結器の隙間が無くなる、2両目が引っ張られ動き出すが3両目との・・・、という具合にできている。
 ところがこの時機関車が加速を続けていると後ろの方へ行けば行くほど動き出した前の車両と停まっている車両の速度差が大きくなってそれこそ最後尾の車両などではビールをひっくり返されるし、「発車だ、わーい!」などと窓から顔を出していれば窓枠に頭をガンという事になる。これは発車と言うより衝突の衝撃であると言える。真夜中の寝台列車でこれをやられたら、うわっ、と飛び起きて上の寝台に頭をガン。まぁ、今の寝台はよくなったので例え飛び起きても上の寝台に頭をぶつける事は無いが。 とにかく、電気機関車では最後尾の車両が動き出すまで一定の低速で進まなければならないのだが、一定のパワーではだんだんと客車の重みが増えてきて最後には停まってしまうので徐々に出力を上げながら一定の速度を保つ(しかもそれが客の乗り具合や線路状態などによって常に変わる)という高等技術が必要とされるのである。  
 電気機関車に限らず、ディーゼル機関車でも同様の事が言えるのだが、ディーゼル機関車の場合は電気機関車の様にモーターの力が直接車輪に伝わるのではなく、エンジンの力が一度変速機を通ってから車輪に伝わるので反応が遅く更に大変であろう。でもディーゼル機関車は電気機関車より非力なのでその衝撃は少し柔らかい。更にこれが蒸気機関車であれば更に非力なので電気機関車のドガゴン、ディーゼル機関車のゴコン、に比べてコケン程度となる。
 ちなみに蒸気機関車には走行中グン、グン、グンという衝撃がある。これはピストン1往復で車輪1回転という蒸気機関車の走り装置に由来するもので他では味わえない独特のものである。
 さて、電車、客車と来たので次はディーゼルカー。
 ディーゼルカーは電車と同じく車両毎にエンジンを持っていて、しかも非力である。
 つまり、電車や客車列車の様にガクンと発車することは無い。派手な音を立てる割にはウネウネと発車するとネロネロと加速していく。全体に動作は緩慢だが実にスムーズである。
 これはディーゼル機関車と同様に変速機を使っているからで、その変速機は液体式(トルコン)である。その仕組みはと言うと、簡単に言えばエンジンからの回転軸の先にスクリューが付いていて、そのスクリューが油の溜まった容器の中に入っている。で、その容器内の向かい側にもスクリューがあってそれは車輪につながっている。それでエンジン側のスクリューが廻れば油の流れが起きてその流れによって車輪側のスクリューも廻り車輪が廻る、という事である。
 この油がよけいな力を吸い取ってくれるので実にもどかしいが滑らかな走り出しとなるのである。
 走りだしだけでなく加速が終わる時点も滑らかでスゥーッと加速が終わる。電車の様に加速の終りにカクッと来る事も無い。
 場合が多かった・・・。
 私が鉄路旅に勤しんでいた頃はまだディーゼルカーのエンジン出力が低く、急加速ができない時代であった。それに多くのディーゼル列車が「ウ~~~~~~~~ン、この辺でいいや」という様なそのパワーを十分に発揮する事の無いゆとりある走りをしていたので、すこぶるその乗り心地が良かったのである。
 しかし、全てのディーゼル列車がそんな走りをしていたわけではない。非電化の幹線では当然優等列車にもディーゼルカーが使われていてめりはりのある走りを見せていた。
 優等列車でも加速の時点は同じである。しかし、変速機を使った加速が限界になると直結という次の段に進む。エンジンの回転を変速機を用いずにダイレクトに車輪へと伝えるのである。
 この進段時、直結のクラッチがつながった時にグンという軽い衝撃が来る。その時エンジンの回転数と車輪の回転数が(双方のシャフトの回転数が)同じであればこの衝撃は来ない。運転するほうとすれば、乗客に不快感を与えない為に、その衝撃が起こらないようにする腕の見せ所だ。北海道の特急列車が新型になってその出力が上がった時は力が上がった分衝撃も起き易く苦労したという。
 しかし、私はこの衝撃も好きである。変速段で十分に加速した後に来るこのグンという衝撃は「いよいよこれから高速域に入るぞ」と列車全体に改めてカツが入ったようにも思える、わくわくする瞬間なのであった。
 始にも書いた様に私はこの列車の衝撃が好きである。その中でも特に好んでいるのが、客車列車の発車時の衝撃と電車列車の段階的な衝撃を合わせたような衝撃であり、それは一部始発駅の電車列車で体験できた。 始発駅式発車とも言われているそれは、ガクンと発車してもそのまま加速はせず、少しのろのろと走ってからまたガクンと来てぐいぐいと加速していく、発車のしかたである。おそらく機関車による客車列車の発車のしかたの名残なのであろうが、このごろの新型電車ではこのガクンが無くなってしまい、せっかく同じ様に発車してもヌルーローローローウニョニョニョニョ、とめりはりのない物になってしまったのはとても寂しいところである。
 終りに、辟易してしまう揺れについても書いておこう。
 それは東急田園都市線、桜新町~駒沢大学間である。
 桜新町駅は急行退避駅なので発車するとすぐにポイントがある。東急の電車は「加速命」的な電車なのでガックンギューンと加速していくがそのまま加速を続けるとすぐにポイント制限速度を越えてしまうので間もなくフンッと加速をやめる。そこでオットットとなる。まれに速度が上がりすぎると、自動的にブレーキがかかるようになっているので急加速から急減速へといきなり変わりウワットトトッとなる事もある。
 ポイントを通過するとまたギュイーンと加速する。左右に振られた後すぐにガクンと来るのだがその加速が終わらないうちに今度はその先のカーブ通過の為にキュキュキュキュキユとブレーキがかけられる。カーブをガガガガガと曲がり終えるとまた加速するがまたしても加速途中で駒澤大学駅停車の為に減速。
 つまりこの区間では列車が常に加速か減速の状態にあり一定の速度で走る部分はほとんど無い。しかもポイントとカーブの揺れも合わさってまさにシェイク状態である。
 日本中でこの区間が1番乗り心地の悪い区間だと私は思うのだがいかがな物であろう。

--第22号(平成16年12月5日)--

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 コメント(6)

 

 

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客車が出発する時のガクガクガク~ンは快感ですぅ(笑)
いまでは貨物列車でないと味わえないですね。

桜新町駅通過はそんなに揺れますかね?ポイント通過と言う地下区間唯一の楽しみなので全く気になりません(爆)  
2010/2/14(日) 午前 7:44  LUN
 
アイコン0   LUNさん
目的駅に急行が停まらず目前で追い越されるというイライラもあったのでしょうね―。
ラッシュ時でお腹の具合がちょっと急行、なんて時はなおさら(笑)  
2010/2/14(日) 午前 8:20  NEKOTETU
 
アイコン0 きそばの話、懐かしいですね。青葉台から渋谷方面に行く時には各停でたまプラーザへ先回りし蕎麦を食べ、後続の快速に乗っていました。そんなたまプラの蕎麦屋も無くなって久しいです。個人的には小田急の箱根そばが好きです。駅蕎麦以外だったら都内でよく見かける小諸そばでしょうか。都内勤務の時にはよくお世話になっていました。  
2010/2/14(日) 午後 8:36 [ buritetu ] 
 
アイコン0   そういわれてみると、昔新玉川線8500系で「クォ~ン」と加速したとたんに途切れる音、さらにポイントを渡って左右に振られる車体、加えて夏場など切られた冷房のせいでの暑さなど・・
「急行」がなく、「快速」が唯一の優等列車であったころの思い出です。

・・・秩父にやってきた8500系に会いに行ってみようかなぁ  
2010/2/14(日) 午後 11:44  哲ちゃん+Mc169
 
アイコン0   buritetuさん
快速も懐かしいですね。
たまプラーザはホームにあったので電車が戸を開く頃まで丼を抱えていられ、少しのんびり食べられた様に覚えています。  
2010/2/15(月) 午後 7:33  NEKOTETU
 
アイコン0   哲ちゃん+Mc169さん
急行は通勤時間のみの高根の花という時もありましたね。
8500系は田園都市線ではその数をだいぶ減らしてしまった様ですがその勢力を海外にまで伸ばしてまだまだ活躍しているのには「さすが」といった感じです。  
2010/2/15(月) 午後 7:42  NEKOTETU