targets of opportunity 8/2の八王子大空襲と高尾駅の機銃掃射痕。 | 湘南陽光電しゃ館 鉄道館

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8月に入りましたので戦争と終戦をテーマにして毎年取材しています「targets of opportunity 鉄道戦争残滓」特集を掲載いたします。

バックナンバーでは現在も残っている※意図して残されている?、鉄道での戦争の痕跡として「機銃掃射痕」を主に取り上げてきました。

特に有名なものでは「鶴見線国道駅の機銃掃射痕」があります。

戦争末期、京浜地区は幾度も単発機による機銃掃射攻撃を受けていますから、いつのものかははっきりとしません。

けれど同じ鶴見線の大川支線には8/1の空襲で穿たれたと思われる「大川支線第五橋梁の機銃掃射痕」がはっきりと残っています。

他にも小説「ガラスのウサギ」で知られるな東海道線の「二宮駅の機銃掃射痕」や多分同日に行われた中央線高尾の「湯ノ花トンネル列車襲撃事件」当事列車を牽引していたED167も取り上げました。

さらに直接的な攻撃痕ではないですが空襲被害痕の「横浜市電博物館の焼夷弾直撃ポール」、「横浜駅の歪んだままのホーム梁※推測です」を収録しています。

毎年少しずつ取材して、判明している首都圏に残る鉄道戦争痕をこの時期に記事にしているのですが、昨年取材済みで時期を逸してしまったためオクラにしてあった記事2点を掲載してしまおうと思います。

本日はこちらも国道駅と同じくらい有名な「中央線高尾駅の機銃掃射痕」です。そうです、75年前の7/8、おそらく穿たれた「痕」です。

これです↓。

 

2019/08/10撮影 

 中央線高尾駅 1番線31/33番ホーム支柱弾痕

高尾駅は戦時中とはいえ昭和18年建築の神社様式の和風駅舎でシンプルながら意匠の豪華な駅舎で有名です。

それと下りホームに鎮座ましますこちら↓でも有名ですね!。

でこの弾痕ですが、上り1番ホームの上屋支柱に3カ所穿たれています。

一番有名なものは2連の弾痕で試しに指を入れてみますとちょうど人差し指がスッポリとはまります。ですからこれは0.5インチ、12.7mmの米軍の当時の正式航空機銃M2の機銃弾痕でしょうね。

もう一カ所は梁にありますが小さいので気づきやすいように塗装を剥いであります。

レールを易々と貫通する威力!、複数、人体に命中すれば人体損壊/落命は間違いないでしょうね。

正式にはこの3カ所が公式に認識されているまさしく「機銃掃射の弾痕」です。説明板もあります。

ですが、素人目に怪しい「穴」がもう少しあります。

一つは木製のホーム屋根の梁に残った傷↓です。

屋根は当時は木製板だったでしょうが現在はスレート波板に葺き替えられています。なんとなく、屋根板を突き破って命中/貫通したように見えませんか。

もう一つは幕板にあいた「穴」2つ↓。

拡大すると・・・。

サンダー等でバリを削った痕がありますからちょっと??ですが。

ここに穴を開ける必要性を感じられません。

このホーム上屋の様式ですが、駅舎よりも古いものと思われます。多分、跨線橋と駅舎間だけにかけられたホーム上屋で以前からあったものでしょうね。

古レール製の支柱/梁間に強度補強の張り棒が渡されているのが特徴です。

現在はこのくらいが残っている弾痕ですが、ちょっと不思議なことがあります。

機銃掃射を受けたのであれば1連射※パイロットが機銃の発射ボタンを軽く一回押して発射される弾数、どころか数連射されているはずですが、被弾痕が少なすぎます。

さらに、上の木製梁の弾痕?も他の残っている木製梁には見当たりません。

二宮駅の現存例を見る限り、相当広範囲にわたって複数個残るのが常だと思われます。

あるサイトに、機銃痕のできた線路敷の状態の良いレールを支柱/梁に転用した、という記述がありますが確かにそれなら弾痕が極めて少ない理由になりますが、多分そうではなく、すでに健柱されていて被弾したのが正解と思われます。

他の柱は被弾数が多くて継続使用に耐えられないため交換したという可能性もなくはないですが、他の柱も同じ時期の古レール※高尾駅のホーム支柱/梁レールは大体同時期のものが使用されていて、日本最古の建柱現役柱レールもあります、で統一されていますから、他の柱は運良く被弾を免れたのでしょうかね。

いずれにしても、機銃掃射が1回で済んだわけではなく、複数回攻撃されていたでしょうから、ホームの屋根板は穴だらけにされ、建ったばかりの現駅舎も建物として狙われているでしょうから、補修痕も探せばきっとあるはずですが、大抵は見えなくなっているか交換されているのが常です※御殿場線上大井駅舎がその例です。

この空襲で鉄道関係者や居合わせた旅客に犠牲者が出た、という情報までは案内板に記されておりません。

今思えば物的被害だけで済んだことを祈ってやみません。

八王子/高尾地域は関東内陸部に展開した帝国陸軍飛行場や軍需工場を攻撃するため、硫黄島もしくは伊豆七島沖を発進した連合軍機が、最短で神奈川県西部沿岸から侵入する空路直下にありますから、攻撃目標への「行きがけの駄賃」「帰投時の爆発物投棄」「燃費節約のための重量物廃棄」「パイロットの得点稼ぎ」で、単発機によりかなりの中小空襲を受けています。

75年前の今日は八王子そのものが空襲目標になり、本命のB29による大空襲で市街地に加え周辺都市部の大半が焼失してしまいました。

このとき、八王子駅も被災、焼失して中央線も不通になります。

そして8/5のあの「湯ノ花トンネル列車襲撃事件」と「二宮駅駅攻撃」が発生しますが、この八王子大空襲が事件の遠因とされています。

本土空襲が始まった時点では軍と軍関連施設を主目標としていましたが、硫黄島が連合軍に占領され、本土沿海域の事実上の制海権を握った後はこれに艦載機が加わり、さらに戦略航空群の司令官がルメイに変わると無差別攻撃に方針変換、都市や港湾/操車場はB29、鉄道はもとより一般市民や動くものすべてが単発機の攻撃目標となっていきます。

人種差別と偏見による日本人の殲滅に舵がきられたのです・

「合法的な国家間の戦争」は「無差別で合理的な殺人/殺戮」へと変化していきました。

敵も味方も理性が完全に吹き飛んで、歯止めのきかない闘争本能がむき出しになった「人間が動物に変節した」瞬間だったのかもしれません。

人間が動物である以上、「戦争」という「合法的な殺人」は永遠なくならないのでしょうかね。「国家間/民族間の殺し合い」は人間の性なのか・・。

次回は「東海道線根府川駅の機銃掃射痕」です。