「私たち、しばらくの間、少し距離を置いた方がいいと思う。」
特急列車用のプラットホームで、君はそう言うと、くるりとボクに背を向け、足早に、でもしっかりとした足取りで、ボクのそばから離れて行った。
1度でいい、振り向いてほしい、そう思いながら、ボクは君の後ろ姿を見つめ続けた。
でも、その姿が列車の中に消えるまで、君は決して振り返ることはなかった。
やがて、発車ベルの音。プラットホームに駅員のアナウンスが響いた。
「間もなく3番線から、回送列車が発車いたします。この列車にはどなたもご乗車いただけません。」
君は今、ボクの隣でほほ笑んでいる。