小田急に戻った安藤は急いで幹部を集めた。
それで安藤は、
「実は東急側より相鉄の株を買い集めて欲しいとの打診があった」
箱根の件で相談に行ったと言う事を聞いていた幹部達は一見、関係ない話にどよめき困惑した。
「いや、駿豆・・・
もとい西武と揉めているこの時に相鉄の株を集めている場合では無いと考えますか?」
「何故、我らが相鉄の株何かを集めなければならんのですか?」
「皆の言いたい事は解る。
それでは東急の申し出を断るとしようか?」
「断れるのですか?」
「出来るさ!
但し関係は悪くなるが、その覚悟はおありかな?」
「今、西武と揉めているのに東急まで敵に回す等、以ての外!
そんな企業は日本にはありません。
しかし、何故相鉄の株を?」
「どうも相鉄が横浜駅西口の広大な土地を競り落とす様だよ」
「ははぁ、五島さんはそれが欲しいと・・・
で、自分が独禁法で動けないから我等に買い占めろと」
「簡単に言えばそういう事だ!」
「しかし、それで我々に何ぞのお鉢でもあるんですかね?
只、東急にこき使われるみたいで面白く無いですな」
「今、当社の立場では、この件は断り難い。
第一、相鉄を買い取ったら東急に何を望むのだ?」
ここで、経理の細谷が意見を述べた。
「こういうのばどうでしょうか?
もし、東急が相鉄を買収した暁には当社の開発中のロマンスカーを走らせる。
開発部からの話ではそう遠くない時期に実現しそうとの事。
そうなれば新宿だけで無く、横浜からも観光客を取り込めます」
これには幹部達からの「オオッー」と感嘆の声が漏れた。
しかし、安藤は単純に賛成出来ない懸念があった。
「構想は非常に良いと思う。
只、細谷君。
相鉄の線形を知らないだろう?
曲線も多い上、三ツ境の勾配はキツイぞ!
戦前はガソリンカーで登れなく乗客が降りて押していたと言うぞ
そんな所をどう走らせるのだ?」
「社長は心配性です。
当社はロマンスカーを走らせて頂く。
買収するのは東急でしょう?
ならば整備をするのも東急の資金でやるしかないでしょう」
この意見に幹部達は賛成した。
その為、安藤は五島にこの話を持っていく事にしたのである。
(次回は相鉄再買収計画Ⅱ五島の逆襲です)