輸送力を増強しつつ経済性を重視した車両として、1964年に運行を開始した小田急2600形。
2400形に続いてMT同数の構成としながら、起動加速度を2.8km/h/sとしました。

しかし、実際には粘着限界に近い設定だったことから、通常時は問題ないものの、悪天候等で粘着条件が悪くなると、空転が多発してしまうこととなりました。
空転はレールや車両に様々な問題を引き起こすため、関係者を悩ませたのです。

そこで、2600形には1970年に再粘着装置が試験的に取り付けられました。
試験が行われたのは2651Fで、空転を検知すると自動的にノッチの進段を停止、同時に空気ブレーキを動作させて再粘着させるものでした。
試験の結果が良好だったため、1972年に2600形の全ての編成に設置が行われました。

再粘着装置が動作すると、空気ブレーキが動作する音が小刻みに響き、2600形特有の走行音となっていました。

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こうして空転への対策が行われた2600形でしたが、あくまでも空転が発生した際の対策であったため、後年も空転の頻度が高い車両であることに変わりはありませんでした。
雨や雪の日には頻繁に空転を起こし、加速に苦労していたのです。
代々木八幡から代々木上原に向かう際の上り勾配は難所で、急曲線を通過する際に塗られた油に悪天候が加わると、ずっと空転をし続けながら加速していくような有様でした。

空転に悩まされながら、大量輸送を支えた2600形。
雨の日に頑張って加速していく姿が今も脳裏に焼き付いています。