須田寛さんにツッコミ | 鉄道きさらんど

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いつも列車・バスなど公共交通の事ばっか考えてます。

もう先月の話だが、朝日新聞に須田寛さんのインタビューが載った。コロナ後の観光の在り方がテーマで、後半は会員限定記事なので詳しく引用するわけにはいかないが良くも悪くも今まで講演や著作で主張してきた観光論がぶれていない感じだった。

 

一つだけツッコミどころがある。アフターコロナの観光政策の在り方では須田さんは「発地の多様化」が重要だと説いている。今までもこれまた著作や講演でいっていたことだが、日本のインバウンドは中韓などアジア諸国発の観光客に偏っていたがカントリーリスクをさけるためにも欧米などを発地とする観光客の比率を増やすべきだと。しかし、これがアフターコロナ後の観光政策への提言としてはどうかと思う。2月までのようにコロナウイルス流行は武漢の奇病のように思われていたころはコロナ対策=チャイナリスク対策でよかったんだろうが、その後の研究で欧米のほうがコロナウイルスが強毒化しているとわかった。日本でも春節のころからコロナウイルスが中国人観光客に持ち込まれていたが、のちには欧州株のウイルスのほうが中国株より国内でのウイルスの被害の広がりが大きく3月以降に猛威を振るい緊急事態宣言発出をするほどの国難を招いたのは欧州株とのこと。

 

最近の報道によれば五輪の聖火リレー実施のためIOCと欧州諸国を刺激しないために欧州からの入国者(邦人帰国者を含む)の防疫が甘かったことも欧州株蔓延の原因だとのことで…。(参考 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/620045/

 

そうなるとコロナ後の観光政策としてはインバウンド客受け入れは感染リスクを軽くするためにこそアジア中心になるのではないだろうか。ビジネスでの渡航解禁もまずはベトナムなどアジア圏からで、観光の受け入れもまず東アジアや東南アジアといったアジア諸国からだろう。これらの国はコロナ流行も欧米より早かったが感染対策も早く抑え込めている。手洗いうがいやマスク使用という防疫のための生活習慣も日本人と似た様な傾向なので比較的安心して受け入れられるのではないだろうか。それに比べると欧米は人口当たりの死者や被害者の比率が大きく、アメリカなどは防疫対策が野放図に近くマスクも普及していないので欧米からの観光客受け入れのほうがリスキーではある。

 

須田さんをご尊敬申し上げている私がこういう野暮なツッコミをするのも心苦しいが…。しかし須田さんほどの斯界の大物としては現状認識がずれていると思わざるを得ない。邪推すると、やはり古い世代の人は欧米人といった「ガイジンさん」への憧憬やコンプレックスが強くてこういう提言をしてしまうのか。それともJR東海関連の人は葛西名誉会長みたいな親米的思想に染まっているからとかいうのが理由なんだろうか。(新幹線やリニアでの輸出構想も米国がお得意様なんだし…。)