N700Sデビューは下り「のぞみ1号・3号」に!設定理由と結果を考える

N700S二番列車となった、のぞみ3号博多行き(2020/7/1)

N700S二番列車となった、のぞみ3号博多行き(2020/7/1)

本日7月1日(水)、東海道新幹線でN700Sの営業運転が開始となった。充当列車は初日に限り非公開であったが、東京駅の始発から2列車である「のぞみ1号(東京14番線6:00発)」「のぞみ3号(東京15番線6:15発)」に充当された。また両列車が既に名古屋を発車した午前8時頃、公式Twitterにより本日は上り「のぞみ26号」「のぞみ46号」にも充当されることが公開された。4本とも、東海道・山陽新幹線の東京-博多全区間を走る列車である。

非公開であったN700Sの一番列車については界隈で様々な予測がなされていたが、結果的に以前から新車両導入に用いられることの多かった「のぞみ1号」、及びその続行列車である「のぞみ3号」に充当された。東京駅14・15番線で2本並んだ上、1号がJ1編成、3号がJ3編成という合わせ方も為され、伝統や報道時等における見映えなどに対しても最大限配慮された形と言えるだろう。

 

ところで、初日一番列車非公開の理由は「密」を避けるためとも報道されていた。非公開であること自体にも「密」避けの意義はあるが、具体的な設定列車についても「密」避けが考慮されている可能性があり、またそれを前提に有志が予測していたように思う。

ここでは、簡単に1・3号がN700S充当列車となった理由、および予約サイトやSNS等を調べて観測できた範囲での実際の乗車率について、あくまで個人的な推測であり拡大解釈も多いが、なるべく論理的に考えてみた結果をいくつか記してみたい。

「のぞみ1号・3号」なのは「東京駅発車時刻が最も早い2本」だから?

N700Sの下り一番列車(・二番列車)がのぞみ1号・3号になった理由について、まずは先述のように「東京駅で2本並ぶ」等が目的だったという面もあるであろう。その上で、のぞみ1号・3号という設定は、乗車及び撮影を狙う客による「密」を最小限に抑える設定にもなっていたのではないか、と考えられる。

ポイントは、2本が都心を出発する時刻である。N700Sの2編成が5時台のうち(JR時刻表通りならのぞみ1号は5:33頃、のぞみ3号は5:55頃)に東京駅に入線し、目撃情報及び該当列車がSNS上に投稿された。そして、のぞみ1号が発車し、15分後にのぞみ3号が出発する。後の列車・のぞみ3号が新横浜駅を発車するのは6:33である。この時刻であれば、「発覚からその時刻までに沿線に到着できる地域が限定される」「朝ラッシュがピークを迎える前にN700Sが都心を離れる」といった2側面をなんとか達成できる程度だと考えられる。(実際に冒頭の写真の撮影地付近では、ラッシュのピークに比べて明らかに人が少なく密を完全に避けられるレベルであった。逆説的に時勢の影響かもしれないが。)

これが例えば、新大阪止まりの一番列車「のぞみ201号」あたりになると東京6:42発、新横浜7:00発であり、のぞみ1号・3号より約30分後ろにズレることになる。その分だけ人を集めやすくなり、またラッシュの混雑も増すことになる。ギリギリ7時前ならそれほど混んでいない可能性もあるが、いずれにせよ早いには越したことがないだろう。

また「2本連続での設定」についても、一番列車への乗車を2列車に分散できる効果があると思われる。(実際にYouTubeに投稿されていた乗車記録として、1号を撮影して3号に乗車した、というような例も見られた。)

のぞみ1号・3号より5号の方が元々混みやすい列車?

また、のぞみ1号が名古屋発車直前(7時過ぎ)、新大阪発車直前(8時過ぎ)あたりのタイミングでN700S充当列車やその周辺の列車の新大阪や博多までの空席状況を簡単に予約サイトで調べてみたところ、指定席に関しては1号、3号よりも5号の方が、若干座席が埋まっている率が高いことがわかった。しかも、5号の方が発車時刻まで余裕がある段階での比較である。なお具体的には、5号が名古屋→新大阪では特定の号車(一番空いている車両として表示された12号車)で窓側が9割以上埋まった状態、新大阪→博多では5〜7割程度、1号や3号ではそれらから1割程度少ない程度の予約状況であった。なお1号の前を走る品川始発の「のぞみ79号」(ダイヤ改正前で言うところの旧「のぞみ99号」)はそれよりも空いていた。

新横浜発車時点(名古屋までの混雑率)は調べていないことや、早朝にあまり乗車したことがないので実体験等の根拠に乏しい推測にはなるが、おそらく単純に普段から、東京発時刻が少し遅くて使いやすい5号の方が利用率が高いのではないかと思われる。

なお、グリーン車についてはのぞみ1号の方が予約率が高く(窓側半分以上程度)、3号と5号(あるいは前を走る79号)が同程度(窓側半分未満程度)であった。N700Sの魅力はグリーン車にもあるためか、あるいは単純に始発列車だからそういう傾向にあるのかはこのデータだけだと何とも言えない。

参考までに、新大阪→博多において3号と5号の間に走る「みずほ605号」は指定席・グリーン車ともに窓側がほぼ埋まっており、「混雑率」的には周辺の東京始発ののぞみ号よりも高いようだ。短い8両編成、新大阪始発、九州直通で需要が高い、など要因は複数考えられる。

 

以上が、のぞみ1号・3号にN700Sが充当された理由として考えられるものである。実際にそのような理由で設定されたわけではないかもしれないが、少なくとも後付け的には理解できる要素がいくつかあった、というところである。

N700S初日の混雑は

では、実際の乗車率・混雑に対してどう考えれば良いだろうか。

調査した範囲や過去の乗車経験(ただし早朝ではない)等から推測する限りでは、N700Sの一番列車であるのぞみ1号・3号の混雑度合いとしては、(直接見ていない新横浜発車時点での乗車率を推測する限り)最大でも「概ね窓側は全席埋まる程度」だったのではないかと考えられる。そしてその混雑度は、今回調査した限りだとN700S充当列車か否かでさほど差が内容に見える。また予約サイトから自由席の混雑度は判断がつかないが、SNS等で流れた乗車報告をいくつかみる限りは、N700Sでも少なくとも空席は十分存在していた模様である。

この「窓側は全席埋まる程度」というのを時世に合わせて考えれば、横方向のソーシャルディスタンスは(ABC席、DE席の単位に1人しか着席していない場合であれば)概ね確保できていると言える一方、前後方向のソーシャルディスタンスは、シートピッチが1m程度であることを考えると必ずしも十分とは言えず、あるいは背もたれで仕切られていることも加味して「最低限」といったところだろうか。

平日であることに加え、本来に比べても移動需要自体が減っており、またN700Sに興味があるファンだったとしても現時点で長時間の密を避けたい人は多いであろう。その上で、仮に乗車を狙うとしても初日は便が確定していない状態で長距離の移動は計画しにくかったこともあり、下り一番列車・二番列車が満員になるようなほどではなかった今回の状況は上手く解釈できる。

今後のN700Sへの注目

N700Sの上り設定列車「のぞみ26号」「のぞみ46号」についても、簡単に予約サイトを確認した限りでは窓側が埋まらない程度、あるいは前後の列車と同程度の混雑率のようであった。

一方、のぞみ46号にもなると関西・名古屋・東京には夕方〜夜頃に到着することになり、短距離乗車やホームからの撮影を狙う乗客はいよいよ多くなってくる可能性がある。

そして14時過ぎには既に先述の公式Twitterで翌日の運用が公開されており、N700Sへの計画乗車や撮影がより可能になっていく。初日を狙いにくかった分、翌日以降、特に土休日等は乗車・撮影需要が高くなるものと思われる。

一番列車こそ比較的平和なデビューであったと考えられるが、旅行需要の再拡大とともに週末を中心にN700Sへの注目度は徐々に高まっていくだろう。首都圏からの移動は解禁されている一方でまだ慎重さが必要な段階とも言えるが、自分も次に西に行ける機会には是非N700Sの利用を狙ってみたいとは考えている。