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E217も205の後を追うことになるのか?
撮影:Pierre2427様

Jトレ新津より総武快速・横須賀線向けE235系1000番台がいよいよ姿を現し、その車両詳細と共に、置き換え対象のE217系の去就に益々注目が集まっているようです。数年前までなら、国内転用案件を除いて解体されようが海外に渡ろうが正直どうでも良いというのが国内鉄ヲタ世論でしたが、武蔵野線205系配給時の「ジャカルタ幕」による宣伝効果は絶大であり、それまで見向きもしていなかった人々が、にわかに東南アジア、インドネシア、ジャカルタ、はたまた別のどこかに目を向けるようになっているように感じます。

もっとも裏を返せば、それだけ国内ネタが枯渇していることを意味しているわけで、そんな中で「ジャカルタ幕」を営業線で掲出するとうのは、全くリスクを考慮していない現場の単なる思い付きであるとしか言わざるを得ません。また、これを許してしまうJREの甘い管理体制こそが、現業社員からのスジ流出、そして蘇我駅混乱という悪循環を生み出しているわけです。今回のE217系の件にしても、置き換え開始前からここまで騒がれるのは従来なかったことであり、ちょっと異常だなと感じています。史上最悪のサヨナラ運転の伝説を残したメトロ6000系の引退時ですら、ジャカルタ、インドネシアというのはほとんどキーワードとして上がりませんでした。



さて、当ブログの管理人も不定期で記事を入れております東洋経済オンライン鉄道最前線に『鉄おも!』編集長の松沼 猛氏がE235系の出場に合わせてか、このような記事を執筆されています。最後の方に「噂レベル」という括弧つきでジャカルタ譲渡の可能性を指摘しています。当然、公式リリースが出ていないわけですから噂に過ぎないのですが、記事に仕立てているということは、日本側でもそれなりに裏付けとなるものが出回っているということなのでしょう。

目下ジャカルタ~バンドン中国高速鉄道の再駆け引きが始まりそうな雰囲気でもあり、こうなってくると日イ関係により一層の(悪い方向での)憶測・妄想を生み出すことにもなりかねませんので、急転直下の動きを見せているインドネシア側の最新事情をお伝えします。

なお、中古車輸入禁止なのに、何故そもそも譲渡対象車の噂が上がるのかという疑問がある方は、以下の記事からお読みください。







・いわく付きの国営企業相の交代、新大臣によるKAI社長の更迭

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新国営企業相エリックトヒル、5月30日で満50歳の華人ビジネスマン
リニ時代に多用されていたhadir untuk negriのBUMNロゴが使われなくなった

昨年の大統領選を経て、2019年10月に第二次ジョコウィ政権が発足しました。既にお知らせしているところではありますが、親中勢力の急先鋒であったリニスマルヨノが国営企業省を去り、新たにエリックトヒルが国営企業大臣に就任しました。鉄道関連で言えば、リニスマルノヨはジャカルタ~バンドン高速鉄道で中国案の推進に動いた中心人物です。さらに国営企業たるもの自国製品を採用すべきと国産化比率向上を掲げ、2020年の中古車両輸入停止を決定的なものにしていました。もっともリニの掲げる国産品の実態は、あくまでも中国製部品の国内で組み立てに過ぎず、一定階級以上の知識人には売国奴であることはとうに見抜かれていました。結局、悪事はいずれ暴かれると言うことなのか、大量汚職疑惑でクビを切られたわけです。で、新たに就任したエリックトヒルですが、先日お知らせした通り、KAIエディスクロモ社長の更迭を突如実施し、鉄ヲタ界にも名を知られることになりました。



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リニ時代にINKAが発表したジャカルタ~スラバヤ間の高速特急気動車(側も中身は中国製?)
KAIからは気動車の形をした機関車だと酷評され、結果的にリニと共に消えた

さて、その後の動きを見ていると、エリックトヒルは必ずしも日本の敵ではないということが明らかになってきました。特にエディスクロモ社長以下幹部更迭の件を、あのジョーナン前KAI社長が高く評価(リニと密通していたのはエディ本人ではなく、同時に更迭された別の人物か?)すると声明を発表しているのです。さらに、就任したディディック新社長は中古車両の引き続きの導入計画があると発言しています。経営幹部から中古車両という単語すら発することの出来なかったリニ時代と比べると隔世の感です。エディ時代に水面下で進められていた中古車両導入へのプロセスは、新社長にも引き継がれることになったわけで、この部分については、まずは一安心といったところです。

・シュタドラーも動き出した

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空港特急の4ドア版見たかったですよ・・・
※これはあくまでもウソ電として製作されています(原設計とは異なる)
製作:Irfan Ghani様

しかし、厳しい外資企業制限を実施していたリニが去ったということは、シュタドラーだって動き出します。当然ながら、日本よりも敏感、シビアです。公には輸出向けとされているINKA/シュタドラーのバニュワンギ工場ですが、目論見通りに受注出来るかもわからない海外案件のために、80ヘクタール超えの巨大工場へ投資するほど、無策ではありません。INKA/シュタドラー設立計画時から、ヨーロッパ勢によるジャカルタ再攻略は検討されていたものです。2000両・3000両という巨大市場をみすみす見逃すわけなく、クレイジージャップな中古車にやられていてたまるかと言ったところでしょう。見切り発車であっても、中国中車が入る前に手を打ちたいという思惑もあったはずです。それでも、輸出向けと公言していたのは、外資規制等、様々な制約、そして愛国世論をクリアするための建前に過ぎません。2018年3月にKCIは国産新型車両導入に関わるコンサル業務入札を公示しましたが、それ以来KCI向けの新型車両の検討はINKA/シュタドラーではなく、INKAマディウンで進められてきました。スカルノハッタ空港特急車両をベースに4ドア通勤車とするものです。しかし、リニが消えたことで国産化比率の制約が緩和(又は撤廃)され、国産電車計画はINKAからINKA/シュタドラーに引き継がれている模様です。その実現性が常に疑問視されていたインドネシアの国産電車ですが、純ヨーロッパ仕様のお洒落な通勤車として、いよいよ現実になる日が近いと言えます。中国中車のインドネシア工場設立を現状阻止したという点では、シュタドラーの残した功績は非常に大きなものです。日本車・シュタドラー車入り乱れのジャカルタの風景を早く見てみたいものです。


・ファディラ前KCI社長の野望!KCIの業務拡大へ!!2020年はまずはジョグジャ~ソロ&ランカス~ムラクから

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こんな区間を電車が走ることになるんですねぇ

KCIが今日1000両規模の電車オペレーションを高い水準で維持出来るようになった功績者、ファディラ前KCI社長。2015年2月から約3年間に渡り、JR東日本との二人三脚のKCI黄金時代を引っ張ってきました。しかし、ジョーナンと同じく、この日本寄り&媚を売らない強気の姿勢が政府に問題視され、非業の最期を迎えています。せっかくの機会ですので、KCIのファディラ計画をここで説明しておきましょう。ファディラ社長は日本との関係性を今後も維持していく秘策として、KCIの権限・業務の拡大を画策していました。現状、運輸省、親会社のKAI、そしてKCIという力関係の差が明らかであり、これが予算確保そして、中古車両導入に至るプロセスの弊害にもなっていました。さらに、長い目で見ればジャカルタ地区には新車を入れざるを得ないのは明らかであり、ジャカルタには新車を入れ、中古車は地方線区に玉突き転配するのが最適解であるとの持論を展開していました。おそらくは、将来的に地方で使うという大義名分のもと、在任中に中古車両を大量導入するつもりだったのでしょう。そして、2017年9月には社名のPT.KAI COMMUTER JABODETABEK(KCJ)からPT.KERETA COMMUTER INDONESIA(KCI)に変更が承認され、将来的な業務範囲拡大が示唆されました。






しかしその代償は大きく、社名変更後わずか数か月でファディラ社長はリニ国営企業相の命により更迭。以来、表舞台には全く姿を現さなくなってしまいました。このとき、KAIエディ社長も一時的にその座を下りていましたが、その後再任されています。正反対とも言える2人の性格の差が運命の分かれ道でした。結局、社名こそ変更されたもののファディラ計画は凍結され、その計画の存在自体が長らく隠されてきました。また、東急8500、メトロ7000、都営6300など、東京オリンピック絡みで大量の車両を入手できるタイミングであったにも関わらず、責任者が不在になったことから、廃車手続きのタイムオーバーで、いずれの譲渡の可能性はほぼ消えました。2018年~2019年は失われた2年間と言えるでしょう。

が、国営企業相の交代以来、このファディラ計画が再び始動しているのです。KCIは今年1月、2020年の経営計画を発表しました。その中で、今後ジャワ管内各主要都市でKAIが運行しているEkonomi Lokalの運営権を取得し、KCIが車両保有・メンテナンスなどを含め運行を実施するという大本営発表を行いました。まず、2020年内に南本線ジョグジャ~ソロ間の都市間快速プラメクス及びスルポン・バンテン線の末端部ランカスビトゥン~ムラク間の普通列車運行を開始するとしています。加えて、昨年末にはJREとの相互協力覚書の更新も合わせて実施したと、KCI・KAIの月刊広報誌が伝えています。

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コロナ運休の追い風で、急ピッチで電化工事が進むジョグジャ~ソロ間
当初のヨーロッパ案から日本式直流1500Vなったのも、
ファディラ社長か?それともPT.DENSHAの圧力か?
撮影:Oktavino様

特にジョグジャ~ソロ間は年末までには電化工事が完了する見込みです。同区間にはKFWの機器更新車の導入が予定されていましたが、オペレーターがKCIになったことで、日本車が導入される可能性が急浮上しています。もちろん、ジャカルタ圏で車両数がいっぱいいっぱいですので、初期にはKFWとの併用になることも考えられますが、現状のトイレ付クロスシートというスペックを維持するために、E217系の導入も候補に挙がっていると複数の証言を得ています。さらに今後も地方都市線区へのKCIへの業務移管及び電化が進めば、ジャカルタに新車を投入し、中古車は地方線区へというファディラ計画が実現することとなります。一見あり得ないように思えたE217系のジャカルタ譲渡という話も、売国奴リニの下野が大きく関わっているのです。

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E217系に待つ未来は如何に??
撮影:Pierre2427様

このように当面日本とKCIの関係性は続くことにはなりますが、E217系はダブルデッカーという特例中の特例で輸入許可を取得するものと思われ、よほどの政策転換が無い限り、当面の間は最後の中古車導入事例となるでしょう。INKA/シュタドラーの新型電車が導入されるのであれば、わざわざ中古車を入れる必要もありませんし、曲がりなりにもINKA車両ですから、新車購入に補助金も適用されるでしょうから、KCIにとっても美味しい話です。注目すべきは今後地方線区がどうなるかで、拡大次第では、そちら向けに全くの別形式が渡ることもあるかもしれない、ということは書き加えておきましょう。では今日は長くなってしまいましたので、この辺で。

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インドネシア=チナと勘違いしている輩があまりに多いですが、世の中そう簡単じゃありません。世の中には良い金持ち華人と、チナの金に目のくらんだ悪い乞食華人(風情)がいるわけで、その辺はタイもマレーシアも変わらないでしょう。

コメント

コメント一覧

    • いずみ中央
    • 2020年06月07日 10:21
    • こんにちは、何時も拝見しております。

      遂にPT.INKA製4扉通勤電車が走るのですか。
      電気機器は輸入品でも、車体や台車はインドネシアでも作れるのでしょうか。

      登場が楽しみです。
    • パクアン急行
    • 2020年06月07日 11:08
    • >いずみ中央様
      今後、どんでん返しがない限り、数年以内に走り出すことに
      なるでしょう。KCIがコロナ破綻しないことを祈るばかりです。

      INKA製とはいえ、マディウンではなく、バニュワンギになりますので、
      従来のINKAらしさは消え、純欧風スタイルになるでしょう。台車もPT.Barataは
      使わずに、全てヨーロッパからの輸入組み立てになるのではないでしょうか。
      粗悪な中国製でないだけ、マシと言えましょう。
    • 野津田車庫
    • 2020年06月08日 01:31
    • こんばんは。

      エリックトヒル氏、どんな人物かと思っていましたが親中ズブズブではないことに先ずは安堵です。

      シュタドラーと言えば以前に中国中車集団の買収リストに入っていたことがありましたし、新規市場の開拓は同社にとっても喫緊の課題なんでしょうね。今回の件で雪辱を果たしたとも言えそうです。
      それでも東南アジアの巨大市場に日本製新型車が導入出来なかったことは、一鉄ヲタとしてやはり未練が残りますね・・・。
    • パクアン急行
    • 2020年06月09日 12:57
    • >野津田車庫様
      エリックトヒル、華僑というものの、アンチ中共的なジョーナンに近い感じの人物なのかもしれませせん。しかし、金銭勘定にはかなり厳しいらしく、今後コストカッターになって行くと思います。これが、どうKAI、KCIに影響するかが注目です。当然、ジャカルタ~バンドン高速鉄道や、LRT Jabodetabekすらも、見直しの対象になるのではとも思います。

      >シュタドラーと言えば以前に中国中車集団の買収リストに入っていた
      確かにおっしゃる通りですね。ジャカルタで通用する通勤車が生まれれば、どこでも戦えますからね。ここからの反撃を楽しみにするのと同時に、未だに長期戦略のない日本政府、並びに日本の企業には閉口するばかりです。
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