新型コロナウィルス対策には、県境の状況に応じたきめ細やかさが求められる | 模工少年の心

  旅行やイベント活動の自粛の長いトンネルの出口がようやく見えてきたようです。

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の終了に伴い、政府は、525日に4段階のステップを提示しながら、外出自粛の段階的緩和の目安を発表しました。619日以降は、全国を対象に県をまたぐ移動の自粛が解除されることになります。

政府(第36回新型コロナウイルス感染症対策本部)の発表を受けて、各自治体もHP等を通じて「外出緩和の目安」を示していますので、しっかりと頭に入れ、ステップを踏むごとに、少しずつ行動範囲が広げていければと思っています。

各ステップの区切りは、つぎのとおりです。(中身は、各自でご確認ください。)

525日から731日までの約2カ月間は、感染の状況を見つつ、延長することがあり得るため移行期間と定められていて、国内の旅行やイベントが通常に近い形で実施することができるのは、8月1日からということになります。

ステップ0 2020年5月25日(月)~

ステップ1 2020年5月1日(月)~

ステップ2 2020年6月19日(金)~

ステップ3 …2020年7月10日(金)~

以降期間後…2020年8月1日(金)~

 

   各ステップにおける移動制限でキーワードになっているのが、「県境」です。自然地形で隔てられている県境でなければ、県が違っても、もともと交易は容易であっただろうし、時代が進むにつれて、幕藩体制の頃とは全く異なる県境を超える人の往来の状況が生まれてきています。

 

 千葉県成田市に住んでいらっしゃる知人から、「茨城県に出かけることはまずない。」という話を聞いたことがあります。JR成田駅からは、成田線、鹿島線、鹿島臨海鉄道を使えば、水戸にでることはできますが、運行されている列車は直通客を想定したものではありません。

  そもそも知人の言われる茨城県の町というのは、水戸ではなく、より距離的に近い土浦市やつくば市を想定していたのですが、県境をまたいだ公共交通機関での移動はまず、「しない」ということです。このような県境の状況は、県境で人の往来をシャットアウトしてもあまり問題はないと思います。

 

   もう一例、3年前に足利学校で名高い栃木県足利市を観光したときに、群馬県太田市との間で、人・ものの往来は盛んで、両市は太く結ばれていることに気付きました。足利氏と新田氏の争いで、なんとなく今でも仲が悪いのではないかと想像していましたが、実際は全く違っていました。そのときは、車で回って観光しましたが、電車でも東武伊勢崎線が頻繁に両市を結んでいます。県を跨いでの確固たる経済圏ができているようです。

 

  また、東京や大阪のような四方八方に鉄道が伸びている都市では、同心円のような人の動きでなく、鉄道沿線ごとの文化があり、生活者としては、買い物も、通院も、通学も、おおむね沿線で完結するというのが実態だと思います。

  東急沿線に住んでいたら、まず余程のことがなければ、電車の相互乗り入れが伸展しても西武線、東武線、京成線に乗って、その沿線に降り立つなどということはまずありません

  それゆえ、小さなクラスターつぶしであれば、発生した沿線の町に的を絞った対策をとることが考えられるし、緊急事態宣言解除前のような大規模な感染防止を実施するときには、都県を超えて首都圏という大きなくくりで、首長同士が連携し、一つの方針にまとめて対応することがよいのではないかと思います。

 

門司港駅

 

 そのようなことを考えていたところ、クラスターが数か所で発生し、6月1日にも、新たに16人の新型コロナウィルス感染者が確認された北九州市の状況がニュースで伝えられました。小学校もクラスターが発生したということですから、大変心配です。

  山口県側では、5月29日の知事の会見にもあるように、「関門海峡を越えての移動の自粛を続ける」こととなりました。関門海峡は昔のように海で隔てられている地ではなく、今や離れがたい一体の経済圏になっているので、海峡を超えて移動ができないことで困る方も大勢いらっしゃることでしょう。

 

門司港レトロ

  

  県をまたいでの移動を制限する理由は、いくつもあると思いますが、クラスターが起きたときに、感染者の移動ルートを追うことが容易であるということが一番の理由だそうです。そうであれば、感染症対策でも、人の往来の激しい地域では、県境にかかわらず経済圏や生活圏を踏まえて、対策を講じることが大切だと思います。

  現代は、県内だけで、経済活動、日常の生活が完結しているとみることは難しいと思います。関係自治体間の連携がすぐにできるよう、首長間の対話とともに、自治体職員レベルの連携も重要だと思います。

  そのためには、日頃からの近隣自治体の職員間の交流を深める必要があるのかもしれません。