4ドアセミクロスシートという絶妙な選択肢 | 鉄道きさらんど

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JR東日本が千葉支社のローカル電車として新形式E131系を投入するとのこと。(https://www.jreast.co.jp/press/2020/20200512_ho01.pdf)

千葉支社のローカル電車として209系があり、近郊型タイプへと改造したとはいえ京浜東北線の通勤電車時代のままに4ドア。ローカル線区用新形式のE131系が片側4ドアというのは意外かもしれない。4ドアセミクロスはありそうであまりないので珍しいなという印象ですが個人的には丁度よさそうに見える。

 

現在JR北海道会長の白川保友氏はJR東日本OBだが、その時の経験談として言っていたことがある。交通新聞社新書『JR東日本はこうして車両をつくってきた』でも語られていたことだが…。民営化初期は旧世代の電車の置き換えとして211系のオールロング車を中電に投入していた。しかしのちに沿線住民や駅長などの要望もあって、北関東と都内を移動するような足の長い利用客への配慮として片側4ドアなど通勤型の仕様へと寄せた新系列電車の近郊タイプ車両にあえてセミクロス車をつけたとのこと。その理由としては3ドア車はクロスシート付きとオールロングシートではラッシュ時の乗降時間に差が出るが、4ドアとなるとセミクロスかオールロングかでの差がほとんどないからだそうで。
東北や甲信越では3ドアセミクロスのE129系などがすでにある。温暖な千葉だから4ドアにしたという理由もあろう。しかし今でもJR東社内に白河氏のようにこういう経験則を知っている人がいるから4ドアセミクロスとなったんだろうか?

 

JRの地方線区はクロスシートの旧型置き換えの時に短編成化・減車とラッシュ対策を同時にすべく2ドア・3ドアセミクロス車を3ドアオールロング車の新車に換えるパターンが多い。JR東海の非電化区間は近年の新製車両はほとんどそうだし、JR九州のローカル車両もそう。民鉄だと東武日光線は新車ではないが2ドアクロスシートを3ドアオールロングで置き換えている。しかし、北海道や東北といった寒冷地はともかく、それ以外の地域では4ドアセミクロス車の投入は日常輸送と行楽輸送の両方のニーズに対応できる選択肢として注目されるといいのではないかとE131系投入で思った。

 

また4ドアというのは千葉支社管内でも東北線新白河・黒磯間のような都市型ワンマン移行を睨んでいるのだろう。4両以上で走らせるときも先頭車だけ後乗り前降りにするのではなく、東北線黒磯以北のように運転士が全車両の扉を開くのではないかと。2両の時でも都市型ワンマンなら運賃収受しない分停車時間が伸びないから遅延しにくいし、ラッシュ時に増結する時は車掌を乗せるかもしれないし。

 

地方私鉄でも4ドア通勤電車で全車両で乗り降りできる「都市型」ワンマンをやっている会社はあるが、実際は駅での改札が自動化していないなどで運賃の取りこぼしが出かねない。中小事業者は人件費削減が急務だから運賃の取りこぼしがあってもいいと開き直っているかもしれないが、しかしJR東ほどの大手では一歩間違えば不正の温床になるある意味信用乗車のような客の良識にたよるやり方はやりづらいだろう。しかしJR東ほどの大手なら企業体力があるから不正対策のために投資ができ駅ホームの改札やカードリーダーで運賃収受をできるようにしたり防犯カメラを設置したりという駅の改良もしやすいだろう。

またJRは私鉄と違い国鉄時代からホームがまっすぐの駅が多いので客の転落のリスクも比較的低くカメラでの運転士の後方監視もやりやすいし、地方線区でも都市型ワンマンを拡大しやすいのではないだろうか?従来のワンマン運転は2両まで、3両以上の運行はできないので地方路線では日中は2両までの列車ばかり。しかしちょっと客が増えると座れないし祭りなどのイベント時は積み残しまで出るとなると利用者にはいいことではない。人件費を削減しながら3両以上で運行できることは地方路線で利用者を逃がさないのに必要だと思うので、乗降性と眺望を両立した4ドアセミクロスという選択肢は妙手だと思うし、都市型ワンマン導入に期待したい。