マサテツ〜食べ鉄旅日記〜

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名松線と伊勢奥津からバスを乗り継ぎ名張へ|道半ばで途切れた線路[旅行記]

鉄道コム

名張と松阪を結ぶ路線として計画された「名松線」。残念ながら松阪〜伊勢奥津間以外は開通する事なく今に至ります。今回は名松線とバスを乗り継ぎ、道半ばで途切れた線路を思いながら旅してきました!

名張の"名"と松阪の"松"で名松線

旅のスタートは三重県松阪市の「松阪駅」から。紀勢本線と今回乗車する名松線、そして近鉄山田線が乗り入れます。 

まずは「名松線」の歴史から。工事が凍結された理由を辿ると、近鉄の存在が大きく関係していました。

名張と松阪を結ぶ鉄道路線として計画され、それぞれの頭文字を取った「名松線」として工事が進められていました。しかし途中で、参宮急行電鉄(後の近畿日本鉄道)が桜井~名張~伊賀中川間を結ぶ路線を開業し、松阪から建設した路線と接続してしまったのです。

名松線とは異なるルートだけど、桜井~名張~松阪間を結ぶルートが完成してしまった。つまり、名松線の目的が他社によって達成されてしまいました。

伊勢若松駅まで開業後は工事は停滞。貨物輸送は自動車が主役となった今、名張へ結ぶ意義も失せてしまい現在に至ります。

名松線の詳しい歴史はWikipediaをご参照下さい

日中に乗り継げるのは平日の1本のみ

※実際のバスのルートとは異なります

 

今回の旅は、末成線となってしまった「名松線」のルートを巡る旅。

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名張と伊勢奥津を結ぶバスは現在も「三重交通」によって運行されています。しかし本数はわずか1往復のみ。さらに、早朝に伊勢奥津発のバスは名松線との接続が無く乗り継ぎは不可能。名張発のバスなら乗り継ぐ事は可能ですが、時間帯が夜なので乗る意味があるのか…

インターネットで色々調べるうちに見つけたのが「津市コミュニティバス」。伊勢奥津11:31発のバスに乗れば、終点の飯垣内(はがいと)で名張行きの三重交通バスに乗り継ぐ事ができるのです。ただし、津市コミュニティバスの運行は月〜金のみ。つまり土日祝日は乗り継ぐ事が不可能なので注意が必要です。

スタフの交換は希少な鉄道風景

名張を目指して「名松線」に乗車します。

松阪駅9:38発の伊勢奥津行き。

駅長の出発合図を確認し松阪駅を発車。

紀勢本線と並走した後、紀勢本線は右へ分かれていよいよ単線になった名松線。

しばらくはのどかな田園風景が続きます。

途中の「一志駅」は、近鉄大阪線の「川合高岡駅」から近く徒歩3分ほどの距離。名松線のような盲腸線は、乗りつぶしを目指す人にとってはネックな路線ですが、このように「隠れた接続駅」をうまく使うのもコツだそう。

名松線は終点の伊勢奥津まで、雲出川に沿って走ります。今はまだ穏やかな川の流れ。

列車は「家城駅」に到着。ここでしばらく停車します。

家城は名松線で唯一行き違いができる駅。反対列車の松阪行きはすでに到着しています。

名松線の魅力。それは、現在でもタブレットによる「スタフ閉塞式」が行われている事。

 写真の右側、赤と白の縞模様の輪っかが、スタフ閉塞式に使われる「キャリア」です。
※家城〜伊勢奥津間はスタフ閉塞式。松阪〜家城間は票券閉塞式。詳しくはWikipediaをご参照下さい

家城〜松阪間のスタフを持った松阪行きが先に発車して行きました。

私が乗る伊勢奥津行きは、家城〜伊勢奥津間のスタフを駅係員から受け取り、出発信号を確認して発車。

他のお客さんはすべて家城で下車し、乗客は私1人のみ。

先ほどの穏やかな流れから一変した雲出川。

山々が迫る車窓。

列車は速度をぐっと落とし、カーブが続く線路をゆっくり走ります。さらに連続する上り勾配で、エンジン音も高まってきました。

伊勢奥津駅に残された給水塔

松阪駅から約1時間半、列車は終点の「伊勢奥津駅」に到着。

計画なら、車止めを超えて名張まで伸びる予定でした。

駅舎には「みんなで守ろう名松線」

かつてはもっと広い駅構内だったそうですが、右側に見える駅舎と観光案内施設を建設する際に撤去され、シンプルな1線のみとなりました。
そんな中、なぜか蒸気機関車時代の給水塔だけがそのまま残されています。

伊勢奥津付近は最急勾配が20‰もあり、この先名張までもさらに急な峠が控えているため、蒸気機関車に水を補給する給水塔がここ伊勢奥津駅に建設されたのだそう。

SLと給水塔が現役だった頃の写真があります

meishousen.org

 

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蔦が絡まった給水塔は哀愁感たっぷり。まるで、名張まで繋がらなかった鉄路の無念さを表すよう。

小さなバスで山奥へ進む

伊勢奥津駅から先は、未完の線路を思いながらバスで名張を目指します。

津市コミュニティバスのバス停は駅の目の前。

伊勢奥津から飯垣内行きのコミュニティバスは、平日にわずか1本のみ。

急な上り坂が続きます。一部は新しい道ができていましたが、ほぼ狭い道路ばかりですれ違いも困難なほど。

深まる山々の合間には、日本の原風景のような景色も。

いくつかの集落を通り、バスは終点の飯垣内に到着。ここまで乗客は私1人だけでした。

バス、というよりはワゴン車のバス。そのまま回送で元来た道を折返して行きました。

いやー。のどかだわ。

バスで進んできた方角を望む

深い山々を見ると、もし仮に名松線の建設が進んだとしてもかなりの難工事になった事だろうと想像ができます。

いつの間にか、伊勢湾に注ぐ雲出川を離れて、淀川水系の名張川に変わっていました。

ダム湖を眺めながら名張へ

飯垣内から先は三重交通バスに乗車します。伊勢奥津(奥津駅前)までのバスは1日わずか2本のみ。

やってきました!

乗客は私1人のみ。飯垣内までのバスと変わらず、しばらくは山の中を走ります。

大きな湖と橋が見えてきました。

ここは名張市にある「比奈知ダム」。1998年に完成した、比較的新しいダムです。

調べてみると、ダム地点の比奈知地区のうち20戸が水没したのだそう。もし名松線が開通していたら、線路の切り替えが行われていたのかもしれません。

名張市内に入り、周りには住宅も増えてきました。名張駅周辺は大阪のベットタウンとして発展しているのだそう。

バスは終点の「名張駅前」に到着。時刻は12時55分、松阪駅から約3時間20分の旅でした。

 

改めて近鉄大阪線と今回のルートを振り返ると、近鉄大阪線・山田線は、複線電化と長大トンネルによる高速運転。対する名松線は、遠回りなうえ山間部を通るので沿線人口が少ない。たとえ名松線が全線開通していたとしても、厳しい運営になっていた事でしょう。

今回の旅では、大阪・名古屋から比較的近い場所で自然の風景を楽しむことができました。また、盲腸線である名松線を効率よく乗りつぶす事ができる希少なルート。皆さんもぜひご参考にして頂けると嬉しいです。

旅の行程

名古屋8:50(特急南紀1号)松阪9:15 9:38(名松線・伊勢奥津行)伊勢奥津11:02 11:31(津市コミュニティバス・逢坂飼坂ルート※土日祝と年末年始(12/29~1/3)は運休)飯垣内12:00 12:17(三重交通・名張駅前行)名張12:54 ※2020年5月現在

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