「東海道本線には、定期的な運用があるにも関わらず、未だにタブレット閉塞を用いている区間がある。」と言うと信じるだろうか。ウィキペディア先生の東海道本線路線データ、閉塞方式の欄を参照すると、確かにそこにはタブレット閉塞の文字が!とはいえ、このタブレット閉塞が使用されている区間は旅客営業のない区間だ。

 

名古屋駅に程近い、中央本線上にある山王信号場から名古屋港駅まで伸びる全長6.2kmの路線がその該当区間である。その名も名古屋港線。早朝の名古屋駅を頻繁に利用しておられる方なら、ホームにDE10+キヤ97のコンビが停車している姿を見たことがあるかもしれない。この貨物線はキヤ97というレール輸送専用車両を使用して、レールを運んでいる。かつては様々な路線が枝分かれして、賑わっていた時期もあったが、今では見る影もなく細々と週3日の運用を淡々とこなしているのみだ。

 

名古屋港線、八幡信号所への最寄り駅である尾頭橋駅で下車する。この駅はナゴヤ球場の最寄り駅として94年に開業した比較的新しい駅だが、それ以前は名古屋港線上にナゴヤ球場正門前という駅が設置され、試合がある度に当駅まで臨時列車が運行されていた。

 

 

 

 9時ごろだろうか、中央本線を経由してトコトコやってきたDE10+キヤ97が、タブレットを受け取るために信号場に停車した。ここより、名古屋港線はタブレット閉塞となる。あの物流の大動脈、天下の東海道本線に旧態依然としたタブレットの輪っかが躍り出る。その様を刮目せよ!

 

 

 

しばらく停車したのち、列車はあくびの出るようなスピードでのっそりと信号場を出て行った。


 

彼らの跡を追うべく、貨物線の終点、名古屋港駅に向かった。最寄り駅である、地下鉄築地口駅の駅前看板にて。いやこれいつのだよ。


 

名古屋港駅の全景。遠くにキヤや、かわいそうな程に色褪せたスイッチャーが停車しているのがわかった。


 

先程の列車はレールを積載したまま停車していた。これからスイッチャーが迎えに来るのだろう。他に見るべきものは無さそうなので、ここは早々に立ち去る。

 

 

冒頭で、いくつかの貨物線が枝分かれしていたと書いたが、その痕跡が現在でも残っている。名古屋港蹴上橋は土木遺産にも登録される程の文化遺産である。

 

 

天国へ伸びる線路。

 

 

 

 

 

 

 

 地下鉄名古屋港駅前の通りは桜で満開であった。