緊急連載 パンデミックで変わる交通の常識⑥おわりに | 鉄道きさらんど

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いつも列車・バスなど公共交通の事ばっか考えてます。

①公共交通とマイカー https://ameblo.jp/kisarablog/entry-12590134121.html

②電鉄経営 https://ameblo.jp/kisarablog/entry-12590142407.html

③新幹線の未来は? https://ameblo.jp/kisarablog/entry-12590159285.html

④リニア危うし https://ameblo.jp/kisarablog/entry-12590173465.html

⑤ リニアで都市間は一体化されるのか、その必要はあるのか? https://ameblo.jp/kisarablog/entry-12590392819.html

 

これまでのまとめを。

・高度成長期以来のモータリゼーション以来の「国民皆免許」状態やマイカー社会は、若者のクルマ離れや高齢化で変わるという常識があった。高齢者はまだ元気でも免許をどんどん返納する風潮になり、現役世代は免許を持っていてもカーシェアやサブスクなどで本当にいるときだけ借りて乗ればいいという傾向があったが大災害やパンデミック時といった「非常時」の移動や買い物にはマイカーの便利さが見直されるだろう。まぁ消費者はコロナショックで経済的に喘ぎ、自動車会社も受注減でラインを休めているときにはクルマが特需で売れることもないだろうが、今免許や車を持っている人はそれを活用するのがいいだろう。

 

・日本は人口減少社会で狭い国土でも、町の家屋やが店などの建物密集し、効率的に人を公共交通、就中電車で詰め込んで運ぶことで鉄道会社が成長し、関連事業で潤い地域の観光開発や街づくりを担うことで都市が発展した。また電鉄会社型の鉄道経営は世界に類例のない模範となり、公共交通を民間に任せることで交通や都市が栄えるというのが今までの交通の常識だった。しかし今回のパンデミックで人が密集する場所へ通勤通学や買い物のリスクが叫ばれるようになり、テレワークやEコマースが今以上に発展すれば人と人が会うビジネスやショッピングの習慣自体は残っても民鉄がはじめてJRもそれに倣った日本の「電鉄経営」のビジネスモデルがはやくも危うくなる可能性がある。駅にたくさんのライブハウスや飲み屋などが建ち並んだり、鉄道会社が沿線にテーマパークを立てることが沿線活性化のセオリーだった。今のエンタメや行楽自粛は一時的なものだろうが、それでも一度大きな打撃を受けるとそういう大都市鉄道沿線の繁栄は曲がり角だし、地方と都市の格差が広がり過疎化が進む中でも過密して膨張する都市の繁栄や都市の大手鉄道会社の経営の安定が信じられてきたが大都市も大不況に陥るとともに今までの街づくりや地域経済、自治体経営の在り方が見直しを余儀なくさせられるだろう。

 

・これまではIT化や人口減少(生産年齢人口減少)の中で人が移動する需要が減り、新幹線などをこれから整備したりする必要はないという意見に対し実際はIT化以降もネット社会だからこそビジネスチャンスやイベント開催機会が増え、実際に足を運んで生で商談などをしたりイベントを楽しむニーズは増え高速交通、中でも新幹線の利用が増えた。整備新幹線も歓迎されインバウンドや五輪景気もあって利用は好調、今後の延伸する整備5線未開業区間やリニアも開通が待たれている。また基本計画線も整備が熱望されるようになった。昔は「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」的な揶揄をする人がいたが、今はさっぱりいなくなった。むしろ地方の過疎化やIT化だからこそ都市へのアクセス時間の短縮をして交流人口を増やす新幹線やリニアが地域活性化の切り札として期待する人が増えた。

 

しかし、今はパンデミックの影響で欧米のような都市封鎖まではしていないが人々はお上から自粛要請という名の要求を受けていること、会議やイベントがあらかた中止や延期されていることもあり、新幹線でないと行けないような広域移動自体を控えている。その代わりになるのがテレビ会議やネットでの無観客公演・試合の配信。もちろん今のような県をまたいだ移動自体が御法度の状態はいつまでも続けられるはずがないせよ、直接会ったり体験することをネットで完全代替できなくてもだいたいでもカバーできると知ってしまった人たちが増えれば、今後は出張イベント遠征などを何としてでもしたいという欲求が萎えて「時間を金で買う」人は減る可能性がある。そうなると新幹線は利用が減るので既存路線の採算も悪化するし今後の延伸開業にも影響が出るだろう。未着工区間は整備する必要性自体が疑われるだろう。また東海道新幹線、中でも東海道新幹線は景勝地に行くとか乗ることを目的とする移動でなくビジネス利用や展示会やシンポジウム出席やイベント参加の目的を果たすための手段として利用する割合が特に多い。そういう目的は大なり小なり「クラスター形成」「3密」「濃厚接触」を伴うので、今回の自粛ムードがおさまってもワクチンや特効薬がみんなにいきわたらない限りはそういう目的の集まりに参加するためにお金を払って新幹線移動を忌避する人も出てきそうとなると、どんな時も東名阪の莫大な新幹線移動需要は消えないし減らないしむしろ増える可能性があるという前提が信じられてきたが疑わしくなった。(インバウンドブームや五輪景気も完全に消滅しかねないし)そうなるとJR東海はいつまでも経営基盤が盤石だという常識だったが、今後は経営に黄信号が灯り会社は存続できても巨費を投じてリニアを建設する意義や予定通りのリニア開業の可能性が厳しく疑われるだろう。

 

また日本では鉄道の発達で都道府県の境目にとらわれず生活の移動をするのが当たり前で、県をまたいだ通勤通学も珍しくない。新幹線通勤通学も普及し、新幹線やリニアは遠い都市圏を直結して一体経済圏にすることが期待された。人口減少社会でも交流人口は増えるはずだというのは常識だった。また田舎化から都市への若者の集中は気軽に新幹線で往来できることで気軽に行って、帰省できることが大きい。しかし、今回のパンデミックでは都道府県境をまたいでの自粛の「お願い」という規制をが敷かれ、結局人は都道府県の境界に縛られていることがはっきりした。これまた自粛ムードが終わっても人々は以前よりは県境をまたいで広域都市間を一つの都市圏のように移動する欲求は萎えて、県をまたいで通勤通学するために遠距離に家を買うかのような人生設計もはやらなくなるだろう。江戸時代のように地元で一生を過ごす人ばかりとまではならなくても地元志向は強まり、県と県が一体化し相互補完しあうというよりは都道府県の自己完結性が高まるだろう。そうなると交通、特に鉄道の利用にも影響が出るし、リニアができれば東京や名古屋と山梨や長野が一体化し「リニア通勤」するといったような夢物語は結局夢に終わるのではないか。

 

これで緊急連載は終わります。