「豊後の小京都」と呼ばれる古い街並みが残っている大分県日田市。
そんな日田市に向かうバスとしておなじみなのが西鉄グループの高速バス「ひた号」。
福岡(天神・博多駅・福岡空港)と日田バスターミナルの間を1日合計46往復(2020年4月1日現在)運行しています。
以前はこれに加えて、朝倉街道~杷木~日田~高塚及びJR久留米~西鉄久留米~浮羽発着所~日田~高塚の急行(高塚急行)が同じ西鉄グループの日田バスにより運行されていましたが、2012年9月30日を最後に朝倉街道~杷木及びJR久留米~浮羽発着所を部分廃止。残った杷木・浮羽発着所~日田~高塚の路線も2014年5月21日に廃止となりました。
浮羽から日田へ向かう路線はこれにより完全廃止となりましたが、杷木から日田を結ぶ路線は杷木循環線に引き継がれて残りました。
福岡県から日田市中心部へ一般道経由で向かう唯一の路線、杷木循環線。
しかしながら最後に残ったこの路線もついにその姿を消すこととなってしまいました…
2020年4月30日。この日の運行をもって杷木循環線は日田バスの他6路線とともに廃止されることとなり、一般路線バスで日田に行くことができなくなってしまうことに。
高塚急行、杷木・浮羽~高塚の急行どちらも乗ることができなかった私は一般路線バスで日田に行ける最後の機会を逃すまいと、この杷木循環線に乗ってきました。
日田バス杷木循環線のルートは以下のとおりです。
日田バスターミナル~竹田新町~鏡坂~長渓~杷木山~杷木~杷木山~夜明駅前~玉川町~日田バスターミナル
(杷木山~杷木~杷木山は複乗)
(※日田→長渓→杷木→夜明駅前→日田が右回り、その逆が左回りと呼称)
日田バスターミナルを起点に杷木方面へ循環して戻ってくる系統となっています。
このうち旧来の杷木-日田間のルートと重複するのは杷木~夜明駅前~日田バスターミナルの区間。
日田バスターミナル~竹田新町~長渓の区間は浮羽-日田間の一部を引き継いだ形。
右回りを朝、左回りを昼にそれぞれ月曜~土曜に1本ずつ運行し、日祝日は運休となっています。
私が乗ったのはこのうち杷木→夜明駅前→日田バスターミナルの区間。
伝統の朝倉街道直通急行の最後の残存区間です。
とある日の朝10時。杷木バス停(杷木発着所)にやってきました。
ここは日田バス杷木営業区を併設する運行の拠点で、待合室も整備されています。
西鉄バス甘木幹線の40・41番(JR二日市~朝倉街道~杷木)、小石原・宝珠山方面及び浮羽・神杉野方面の一般路線バス、高速バスひた号、高速バスサンライト号(長崎~大分)、そして今回乗る杷木循環線が発着する交通の要衝です。
ちょうど復刻塗装のひた号がやってきました。
ちなみに発着所内及び杷木営業区では乗車券の発券は行っておらず、道路を挟んだ反対側の吉田時計店で購入するようになっています。
待合室の後ろには日田バスの路線車・貸切車と西鉄バス二日市甘木支社の路線車が停車しています。
こちらは西鉄では珍しい西武から移籍の中古車、杷木2010。
続いて待合室の中を見てみます。
待合室にはベンチ、そして自動販売機が2台設置されています。
杷木循環線の時刻表。
一般道経由のものが杷木循環線、高速 日田と書かれているのが「ひた号」です。
ひた号は全便が杷木に停車するため、杷木循環線が廃止されても高速道路経由で日田に行くことはできます。
一般道経由はたったの1日2便…
(※高速バスに運休が出ているのはこのとき新型コロナウイルスによる利用者減に対応して減便されたため)
こちらは路線図。オレンジ色のラインが杷木循環線で直線のラインが鏡坂・竹田新町経由、下に分岐しているラインがこれから乗る夜明駅前経由です。
運賃は日田バスターミナルまで620円となっていますが実は誤りで本当は630円。
これは高速道路経由と同じ値段です。
近くにあった廃止のお知らせ。
日田市との協議の結果廃止が決まったそうで、5月1日からはデマンドタクシーによる運行となるようです。
そうこうするうちに10時15分となり、日田からのバスがやってきました。
杷木循環線に使用されているのはトヨタのハイエース(日田 001)。
もとは橋本駅循環ミニバスに使われていた車両です(壱岐→鳥栖0503)。
2017年までは通常の路線バス車両でしたが、利用客が少ないことからこの車両となったようです。
さっそく乗り込みます。
ここで日田方面から来た客が1人降り、車内にはお名残り乗車と思われる人が1人。
車内には私を含めて2人です。
ICカードリーダーはありますが、この路線では使用することができません。
現金のみの利用となります。
車内にはLCDの運賃表が設けられており、この車両がバスということを感じさせてくれます。
それでは出発です。
バスは甘木幹線を引き継ぐかのように国道386号線を東に向かいます。
途中のバス停には時間調整のため停車しますが、乗降はなく、ドアが開くこともありません。
やはり利用客は少ないようです。
車内放送はなく、ただ運賃表を進めるピッという音だけが聞こえます。
しばらくいくと筑後川(三隈川)が車窓右側に寄り添うようになってきました。
関を過ぎるとトンネルに入ります。
新櫛崎トンネル。この路線唯一のトンネルです。
トンネルを抜けると右手には夜明ダムが。
満水状態ですね。
次のバス停は杷木山。
杷木と名前は付いていますが実は大分県側にある、というのが紛らわしいところです(笑)
杷木山を出ると三隈川を渡る大きな赤い橋が見えてきました。
これが夜明大橋で、長渓・鏡坂・竹田新町経由はこの橋を渡って対岸の国道210号線へと向かいます。
このバスは橋は渡らずそのまま直進。
左手にはいつの間にか久大本線が並走するようになっていました。
程なく夜明駅前に到着。築堤上が駅ホームです。
JRの久大本線・日田彦山線代行バスはお乗り換えですが、ここでも乗降はなく…
そのまま進みます。
花月川を渡ります。
あの九州北部豪雨で久大本線の橋梁を押し流したのがこの川でした…
橋を渡ると車窓は急速に市街地の様相になってきました。
主要バス停・南友田を通過。
玉川町(岩尾整形外科前)を通過するといよいよ日田市中心部です。
まもなく終点・日田バスターミナル。
運賃表の表示はなぜか日田バスセンターのままになっています。
その1番は440円。
実はこのバス、杷木から日田バスターミナル(630円)より日田バスターミナルから一周して日田バスターミナルまでの全区間(440円)乗ったほうが安いのです。
全部乗車する人はなかなかいないのでしょうが…
10時45分、1分ほどの遅れでバスは終点・日田バスターミナルに到着しました。
運賃を現金で払って下車します。
日田バスターミナルは高速バスや日田バスの一般路線バスが乗り入れる拠点で大きく、お土産物屋さんもあります。
杷木循環線の路線図もありました。
だいぶバス停は省略されていますが…
最後にバスターミナルを出て、近くの日田駅を訪れました。
進撃の巨人の作者が日田市出身ということもあり、「進撃の日田」なるのぼりが建てられていました(笑)
というわけで今回最初で最後の一般道経由での日田入りを行いました。
Twitterなどの情報によるとかつては前述の高塚急行のほか、西鉄運行の甘木~日田急行とか甘木幹線が日田まで来ていた時代もあるらしく、一般道経由の杷木~日田間は幹線とも言ってよかったようです。
また国道210号線経由のバスも久留米~日田間20番や「日田快速」などが存在し、こちらもまた幹線でした。
しかしながらそれらは全て廃止。
辛うじてその伝統を引き継ぐ存在である杷木循環線もまもなくその姿を消し、一般道経由のバスで日田市中心部へ向かう道は完全に絶たれようとしています。
久留米・朝倉街道直通時代は乗ることのなかった私ですが、日田へ一般道経由で行ける最後の路線に乗ることができたことはいい経験となりました。
今後は日田へ向かう手段は高速バスとなりますが、一般道経由があったことも記憶していきたいと思います。
それでは最後に今回廃止となる杷木循環線の全バス停を記載して終わります。
[杷木循環線]
日田バスターミナル-元町-一ノ宮病院前-竹田新町-銭渕-銭渕橋-鏡坂-泉-寺内-石井-下石井-津辻-白手橋-川下-加々鶴-長渓-杷木山-関-発電所前-穂坂-東林田-杷木小学校前-杷木-杷木小学校前-東林田-穂坂-発電所前-関-杷木山-夜明駅前-西乃山入口-入江-小谷口-北友田二丁目-南友田-新治-十二町-玉川町(岩尾整形外科前)-商工会議所前-三本松-中央通り-日田バスターミナル
※赤文字は今改正で完全にバスが走らなくなる区間
(泉~石井間はひたはしり号【Cコース】が走るが石井町一丁目経由であり、寺内経由の当路線とは異なる)
※下線部は複乗区間
※斜字は福岡県内の区間
※マーカーは今回乗車区間