【Twitterトレンド】“配給セット”模型で発売〜JR東の機関車の特殊任務

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2020年4月9日、Twitterのトレンドに突如現れた“配給セット”。

鉄道模型“TOMIX”の新製品発表で明らかになった商品ですが、そのマニアックな選定で大きな注目を集めました。

モデルとなった車両の登場経緯とともに、JR東日本特有の“配給輸送”を振り返ります。

JR東日本の業務用列車“配給輸送”

そもそも鉄道に詳しくない方には、この“配給輸送”という言葉が馴染みにくいものでしょうか。

一般の旅客が乗車する普通列車・快速列車・特急列車や、JR貨物が運行する貨物列車とも異なり、旅客会社が運行する事業用の列車の1つです。

配給輸送のそもそもの用途としては、部品などの社用品を輸送するためのものですが、この社用品の解釈は鉄道会社によりまちまちです。

国鉄時代には車両記号“ル”を付与した車両が配給者として制定されており、最近京都鉄道博物館で展示されたクモル145形などが辛うじて残存しています。

JR東日本の場合は、機関車が電車編成を牽引する輸送が主となります。

自社所有の電気機関車の連結器を改装し、客車・貨車用の“自動連結器”と電車用の“密着連結器”双方に対応した“双頭連結器”を搭載した車両が先頭に立っています。

列車の設定経緯もまちまちで、自社新造をした新型車両を所属基地まで輸送、管内各地に点在する遠方の工場での改造のための輸送、使命を終えた車両を解体作業が出来る場所まで移動するための輸送などが挙げられます。

2種類の連結器に加え、様々な車種のブレーキなどのケーブルが武骨なのが特徴
寝台特急との兼用で登場したものの、現在は配給輸送での活躍がほとんどに

直流・山岳線区用のEF64形3機と、交流・直流双方に対応したEF81形4機(全盛期は5機)がこの任務を中心に活躍しており、特に登場初期に廃車配給が多かったことから、この機関車たちは“死神”といった愛称で呼ばれることもあります。

新造・改造・廃車についても、自力走行出来る場合は自力で回送列車として移動するのが基本です。

しかしながら、JR東日本管内には東北地区の交流電化区間と首都圏などの直流電化区間の違い、中央本線の小さなトンネル・山岳路線への対応、保安装置が異なるなど、様々な障壁があります。

これらの条件のどれかが満たせない場合は機関車牽引で配給輸送として設定されるため、管内各地の路線・様々な編成構成で配給輸送が行われています。

E231系は武蔵野線・八高線の世代交代を進めました。
これらの旧来車両も廃車・海外譲渡のため、同様に配給輸送されています。

モデルとなったB31編成は“伴走車?”

今回の配給セットのモデルとなった総武線E231系ですが、山手線に最新型車両E235系を導入したことによる玉突き転用劇の一環です。

この転用は少しややこしいですが、山手線で活躍していたE231系500番台は中央・総武線各駅停車に転用、この路線で活躍していたほとんどのE231系0番台を武蔵野線・八高線などに玉突き転用して、老朽化した車両を廃車・海外譲渡を行っています。

このE231系0番台の転用については、4両編成の八高線・8両編成の武蔵野線に転用するため、6扉車を含めた中間車が余剰となります。

転用改造は青森・秋田・長野・大宮などJR東日本管内の各地で実施されましたが、このうち大宮総合車両センターでは現在、車両解体を行っていません。

余剰となる中間車を車両解体が出来る基地まで輸送するため、大宮から長野まで廃車配給輸送が実施されました。

この輸送では、2編成分の余剰中間車をまとめて輸送するため、通常はありえない6扉車2両組み込みの8両編成・動力車は2両のみという特異な編成が組まれました。

中間車だけではブレーキが効かせられない一方で、動力車が足りないために自力では走行できません。

このため、JR東日本お得意の配給輸送としての運行となりました。

この任務には、転用改造のうち時間がかかる工事(機器更新)を先に施工してあったB31編成のうち、先頭車と動力車1ペアを合わせた4両が選定されており、ファンからは“伴走車”と通称されていました。

総武線カラーのまま4両で出入りしており、一連の転用劇の象徴的な編成でした。

伴走車は過去にも

これらの一般に“伴走車”と呼ばれる活躍をした編成は他にもあり、同じ中央・総武線各駅停車で活躍していたB27編成が、山手線6扉車両の置き換えのために活躍しました。

山手線11両編成のうち6扉2両を新造車に入れ替える置き換えが行われましたが、中間車単独では製造後の試運転が行えないこと、編成ごと長期離脱をすると長期間使用不能となることから、編成数に余裕があった中央・総武線各駅停車用のE231系がこの使命を担うこととなりました。

この際は所属基地のある東京から、中央線周りで解体場がある長野へ廃車配給・長野から信越本線(当時)経由で車両製造をしている新潟へ配給輸送。

新潟では新製車両の自走試運転を行ってからまた配給輸送で東京に戻る……という、JR東日本のネットワークと配給輸送の強みを最大限に生かした置き換え劇となりました。

また、経緯が大きく異なるものの、先述の連結器改造を施した機関車が登場する前や、ブレーキ方式などの都合で活躍した伴走車として、“ゆうマニ”と呼ばれる事業用車が存在しました。

ジョイフルトレイン“リゾートエクスプレスゆう”が非電化区間を走行するために改造してあった電源車でしたが、ほとんどの任務は配給輸送でした。

現在はJR東日本での活躍を終えたものの、電源供給・連結器変換という性能を買われて東急電鉄に譲渡、“THE ROYAL EXPRESS”の電源車としての活躍が約束されています(関連記事)。

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