【電車の本数が減る?】鉄道減便要請を検討?背景・効果・課題を考える

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新型コロナウイルス関連の報道が連日続いていますが、緊急事態宣言発令に向けた準備の一環として、対象区域の鉄道会社に対する減便要請を検討していることが6日(記事公開日)に報じられています。

効果・与える影響・課題・鉄道会社の今後などを考えます。

なお、記事公開時点では“減便要請”を“検討”している状態です。当サイトは鉄道趣味サイトで、あくまで実施される場合の背景や影響の考察です。以前の発表では原則は通常運行とされていたほか、現時点で確定した事象ではありませんので、新型コロナウイルスに関する最新情報は各メディアをご参照ください。また、鉄道会社へのお問い合わせも控え、公式発表待ちをお願いします。

筆者は鉄道業界をかじっていましたが、現在は退職済です。お気づきの点があれば、お気軽にコメント欄からどうぞ(極端に政治的思想に偏ったコメントは掲載を控える場合があります)。

新幹線・特急列車は妥当!

現在報じられている内容としては、緊急事態宣言に向け、該当地域のダイヤを土休日ダイヤとすること・最大で5割程度への削減・新幹線なども対象とした減便の検討となっています。

このうち、まず評価すべきは新幹線や在来線特急といった長距離移動列車の削減でしょうか。

都市間輸送の長距離列車が削減されることで、不要不急な移動を減少させる効果に期待ができます。

鉄道会社側も長距離列車は既に深刻な利用者減少となっていますので、デメリットは少なそうです。

多くの利用者が危惧する本数削減による混雑

今回の報道で大きな注目を集めている点は、やはり都市部の通勤輸送の列車削減でしょう。

国内感染が始まった時点で、テレワーク・リモートワークといった在宅勤務・不要不急の外出自粛を散々要請してきたことはご存知の通りです。

しかしながら、会社が休みにならず、在宅では出来ないという職種の方がほとんどの現状、ラッシュが多少緩和した程度で“密”の状態であることには変わりありません。

この状勢で出社を続けなければならない会社員の方も多いと思いますが、感染・拡大のリスクを感じながら通勤することは相当なストレスでしょう。

大規模災害があっても出社する人で溢れかえる国民性を考えたら、今後電車を減らしただけで会社が休みになるとは考えにくいところです。

大幅減便といえば2011年の計画停電や、最近の台風による計画運休が記憶に新しいところですが、今回とは背景事情が大きく異なります(台風の計画運休については別記事で詳しく紹介しています)。

むしろ、電車の本数が減ることにより、混雑の悪化を危惧する声が利用者からは圧倒的です。

特に今回は企業・従業員ともに経済的な被害も多く出ていますので、倒産を防ぐために動かす会社・生活のために働かざるをえない労働者がほとんどでしょう。

会社・従業員への補償が万全であれば……という声も多いですので、この課題解消が最大の課題でしょうか。

この辺りは鉄道輸送の実態と大きく異なり、順番が違うという批判が噴出しているのも当然でしょう。

少なくとも、この状況だからこそ休めないという業種で働く従業員さんも多いかと思うので、通勤で危険に晒すことだけは避けてほしいところです。

あえてラッシュ時の減便をする理由は?

やはり、列車減便報道で気になる点は、このラッシュ時という元々過密な時間が悪化・感染拡大に悪影響を与える可能性を考慮していないのでは?という点に尽きるでしょう。

これまで鉄道利用について直接的に言及してこなかったのも、経済停滞による被害を考慮し、まずは削減できるところから……という背景であれば納得がいくところです。

政府発表が現時点で出ていないものの、やはり最低限必要な業種の通勤以外の利用を控えてもらうことが狙いでしょう。

不要不急の外出だけでなく、通勤利用を抑制することで、在宅での仕事・営業自粛などの動きを加速化したいのではないでしょうか。

街中から出歩く人が減れば、店舗営業も減少、それに伴って通勤する人が更に減少……といった循環が生まれれば、一定の効果が出てくることが想像できます。

……と擁護する背景を記してみましたが、やはり現実的とは言い難く、机上の空論という批判が多いのも当然でしょう。

全く同じトラブルが海外でも

既に感染者数増加が深刻な海外では、同じように列車の減便が行われました。

ニューヨークやロンドンの地下鉄が混雑悪化となり、社会問題となりました。

同じ轍を踏むことになるのでは?という指摘の声も多いですので、今後の対応が気になるところです。

現実的なダイヤ編成を考える

一般の利用者からすれば、ラッシュの時間帯は“密”にならないようにしつつ、日中や早朝・深夜といった優先順位の低い列車だけ削るダイヤ構成が理想論です。

しかしながら、すぐに綿密なダイヤ構成を期待するのは難しいかと思います。

鉄道のダイヤは通常、1年程度かけて作成するのが一般的です。

これは列車の本数だけでなく、列車同士が交差できるか・通過待ちができるかといった設備上の課題、そして車種が異なる場合は適切な車両運用が構成できるか、乗務員の運用(労働時間を含む)、相互直通運転では乗り入れ先との調整など、内容が多岐に渡るためです。

そのため、基本的には既存ダイヤから間引くような対応が現実的なものです。

2011年の計画停電時の暫定ダイヤについても、いったん土休日ダイヤとし、その後各社で可能な範囲の修正をかける……といった対応がされました。

ただし、今回の場合は、ある程度こうなることが予想出来た内容です。

鉄道会社職員から感染者が発生した際、職員が感染して列車運行維持が困難になった場合に備えた検討を始めた会社も……といった報道があリました。

要請が正式に出た段階で、“密”と“不要不急列車削減”を両立した、納得のダイヤを運用する準備が既に出来ているという鉄道会社もありそうです。

報道通りの土休日ダイヤスタートとなった場合でも、改善されていく可能性もあります。

写真:2011年の計画停電時には、土休日ダイヤをベースに最低限の修正でスタート。
その後、専用ダイヤが作成されました。
写真は最低限の修正で登場した京成電鉄の臨時通勤特急

鉄道会社の胸の内は?

鉄道会社にとっても未曾有の事態となり、既に様々な検討がされていることかと思います。

今回要請が出た場合、臨時列車の発売保留に留まっていたほとんどの鉄道会社も、ばっさりと減便を行うことが予想されます。

特に新幹線・在来線特急などの長距離列車については既に利用者減少どころか、壊滅的な状態となっています。

これらの列車については、今回の要請でやっと利用者からの批判を恐れずにばっさりと削る口実が出来た……という見方もありそうです。

一方で、更なる運賃収入減少も確実となりましたので、日本の鉄道会社が経験したことがない、最低でも数ヶ月に及ぶ大幅な運賃収入減少となります。

大規模な災害などで長期運休になることはありましたが、東日本大震災の計画停電でさえ需要がここまで落ち込むことはなかったことでしょう。

懐事情が芳しくない地方私鉄はもちろん、鉄道部門は元々赤字で他部門の利益で回っている鉄道会社も少なくありません。

内部留保をしっかり持っているであろう大手鉄道会社についても、列車本数を減らしても掛かる社員の人件費・保線費用などを考えると、長期化が見込まれる以上かなりの痛手となりそうです。

鉄道輸送は大量の人員を輸送することで収益を上げる、いわば“薄利多売”のビジネスです。

前年比で利用者数が半数未満となっている現状、この動きが加速化・長期化すると、他業種同様にバタバタと倒れていく事業者が出てきても不思議ではありません。

このほか、通常運行・利用者確保を続けた場合、現業職員(運転士・車掌・駅員のほか、車両や電気通信、土木などの保守部門)への感染が広がれば、完全に運行出来ない状態となることも想定されます。

社員を守る……という点では、本数抑制自体にも一定の効果がありそうです。

もちろん鉄道事業に限った話ではありませんが、ウイルス拡散での被害と、経済停滞の被害。

今後も厳しい状勢が続きそうです。

鉄道会社ごとの対応に注目

今回の一連の動きで、列車の換気についても注目されています。

鉄道会社・車両・路線ごとに判断や対応が異なり、窓を開けるべき!という利用者の声も多くなってきました。

鉄道事業者によっては出庫時点で窓を開けておく・放送で窓開けを呼びかける……といった対応も見られます。

一方で、最近の電車では空調が完備されており、窓を開けない前提で設計されている車両も多く存在します。

これらの電車では換気性能が高められており、これらの路線・車両では通常の空調に加えて換気モードを使用している旨の放送などがされているほか、近年の鉄道車両のトレンドとして、空気清浄機を搭載した通勤電車・特急電車も多く運行されています。

車内保温のために実施されている半自動ドアの運用を取りやめ、全てのドアを開けることで換気の機会を設けている路線も存在します(半自動ドア=停車駅で各ドアの押しボタンで旅客が開閉する方式)。

窓を開けるのが絶対に正しい・開けていない会社が悪いというわけでもないので、この辺りの判断は難しいところですね。

こんなご時世ですが……

末筆ながら、この状勢下で必要とされている業種でお仕事をされている皆様に御礼申し上げます。

また、経済的な打撃を受けている方も多いと思います。

このサイトについてもアクセスが普段より増えているものの、広告収益は半分未満のかなり厳しい状態となっていますが、当面は更新を継続する予定です。

一刻も早い事態の収束を願って止みません。

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