私にとって、特急 「みどり」 といえば、佐世保へ行く4両編成のミニ特急をついつい連想します。今でも 「みどり」 は残存しており、 「ハイパーサルーン」 こと、783系が相変わらずの4両編成で福岡と西九州とを結んでいます。もう一つ、 「みどり」 といえば長年、肥前山口まで 「かもめ」 とくっついて走っていましたのをイメージしていますが、今は 「かもめ」 との併結運転は行っておらず、 「ハウステンボス」 が併結相手になっているようで、列車によっては単独で運転しているのもあったり、黎明期のJR九州のフラッグシップである787系を充当したり、また、4両以上の長編成もあるようです。私の知っている 「みどり」 を考えたら、随分と出世しましたよね。

 

さて、国鉄時代の 「みどり」 ですが、前述のように50.3 (実際の運転開始は昭和51年7月)以降の 「みどり」 しか知りません。しかし、オールドファンからすれば、 「みどり」 は関西と九州とを結ぶ山陽本線の特急を連想するのではないでしょうか。

列車名としての 「みどり」 は昭和36年まで遡ることが出来ます。いわゆる 「さん・ろく・とお」 と呼ばれた昭和36年10月のダイヤ改正で、大阪と博多間を結ぶディーゼル特急に 「みどり」 の名が与えられました。 「白鳥」 や 「おおぞら」 、 「まつかぜ」 「かもめ」 などとともに、キハ82系使用列車の第一期生になります。

第一期生といえば、もう一つ忘れられないのが583系。その前身である581系を最初に使用したのが 「月光」 と 「みどり」 でしたね。581系使用はわずか1年でしたが、インパクトは大でした。でも、 “青い” 列車に 「みどり」 はちょっと違和感があったりして。

 

「よん・さん・とお」 と言われた伝説の昭和43年10月のダイヤ改正から485系が使用されるようになり、昭和50年3月の廃止まで継続されます。今でこそ、 「みどり」 は佐世保へ行く列車のイメージが確立されていますが、それこそオールドファンからすれば、 「みどり」 は大分特急のイメージではないかと思います。気動車時代に一時期だけ熊本や佐世保へ行く列車もありましたが、これが 「佐世保みどり」 の足がかりとなります。

ずっと1往復のままでしたが、昭和48年3月にやっと1往復増発されて2往復になりました。ちょうどその頃、山陽新幹線が開業して、在来線の特急は岡山で新幹線に接続する運転方法が採られましたけど、 「みどり」 は大阪や新大阪発着を崩しませんでした (厳密に言えば、下りが大阪発で上りは新大阪着) 。 「しおじ」 にも同じことが言えますが、乗り換えを嫌う乗客への措置と思われます。1往復増発の際に岡山発着が設定されて50.3まで頑張ることになります。

 

画像ですが、赤スカート+ロールマーク付きのクハ481が先頭という、典型的な 「向日町仕様」 。

向日町運転所 (大ムコ~現在のJR西日本吹田総合車両所京都支所) に配置されていた485系は、山陽方面の特急の他に 「雷鳥」 や 「北越」 といった北陸方面の特急にも使用されていました。故に、充当列車の数もハンパなく、その度にマークを取り替えるのは面倒臭いという理由から、一部の車両で試験的にヘッドマークを巻き取り式に改造しました。

改造は昭和44年から翌年にかけて行われ、対象車両はクハ481-2~7、9~18、37、38の18両です (※1) 。従って、画像のクハ481もこの18両の中の1両と思われます。

しかし、側面の方向幕を見た方なら判ると思いますが、長年使っているとマークが使用頻度によって汚れが目立ったりして視認性が悪くなりますし、時には破れることもあり、思ったほど効果が得られなかったことから、全車に波及するまでには至りませんでした。晩年は使用されず、そのまま通常の取り替え式マークを付けるようになりました。巻き取り式はクハ481の他にクハ181にも波及しました (あと、小松に保存されているクハ481-501もそれ仕様になっているみたいなので、489系も対象になったと考えられる) 。クハ481は乗務員室からの指令で作動する電動式 (※2) でしたが、クハ181は手動で、マークの横に穴が開けられていてそこに巻き取り用のハンドルを差し込んでグルグル回す手法でした。

 

昭和50年3月の山陽新幹線全通で山陽本線の特急は全廃されてしまい、向日町の485系も北陸用を除いて他区所に転出していきました。その際にクハ481の赤スカートは順次、クリーム色に塗り替えられたりしましたが、九州の南福岡や鹿児島へ転配された車は赤スカートを存置したのもありました。

 

50.3改正で一旦は廃止された 「みどり」 ですが、長崎本線と佐世保線の電化が完成した昭和51年7月に小倉・博多と佐世保を結ぶ電車特急として復活します。この時、肥前山口まで 「かもめ」 と併結する、今までの国鉄特急には無かった運転手方が採られ、また、佐世保線のホームの関係からなんでしょう、編成両数が制限され、それで 「みどり」 は4両編成となったんですね。それでもグリーン車は連結されたので、クロ481に白羽の矢が立ち、それまで東北方面で活躍した一部のクロ481が九州へ異動しました。

 

「しおじ」 や 「つばめ」 、そして 「有明」 などに隠れがちながら、妙な存在感がいつも 「みどり」 にはある。何だか不思議な特急列車です。

 

※1・・ロール式ヘッドマークに改造されたクハ481は、1、3、5、6、9~18、38の15両

         とする記述もあり、どっちが本当なのかは不明。

※2・・クハ481にもハンドル操作用の穴が開けられているので、こちらも電動式なのか

    手動式なのかは不明。

 

【画像提供】

タ様

【参考文献・引用】

鉄道ピクトリアル No.846、897 (いずれも電気車研究会社 刊)

日本鉄道旅行歴史地図帳第9号 「大阪」 (新潮社 刊)

JR時刻表2020年2月号 (交通新聞社 刊)

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