今回の展示車両は、、KATO 品番4102-4 モハ114 1000 湘南色 (M) です。



前回の記事 では、115系電車の抑速ブレーキに関する機能を記事にしました。山岳線を走る電車としての115系電車もう一つの特徴は、「ノッチ戻し」が可能なことです。

今回の記事は、多少複雑かもしれませんので、写真だけ見ていただいても大歓迎です。

「ノッチ戻し」は、電車の抵抗(※)制御器の構造原理と関連してきます。
※ここでの「抵抗」とは、理科で習う「オームの法則」に出てくる「抵抗:R」のことです。

抵抗制御時代の電車の制御器は、大宮の鉄道博物館(101系電車のすぐ近く)で見ることができます。

多くの家族連れは、パンタグラフを上げ下げしたり、ハンドルを動かして楽しんでいますが、ここで肝心なことは、制御器の動きです。その内部にはオルゴールの筒のような大きなドラムがあります(正確には円盤を多数重ねて並んだ状態)。ただしオルゴールとは違い、突起の代わりに各円盤に切り欠きが設けられており、ドラムが回転することによって、カチカチと音を立てながら周囲にある電気回路の接触スイッチをめまぐるしいスピードで切り替えて行きます。

これによって、モーターへの電流、回路の直列・並列(中学理科参照)、モーターに固定された側の電磁石(模型などの小型モーターでは永久磁石が使用されている部分)の電流制御(界磁制御)の切り替えを自動的に行なってくれます。



この方式の欠点は、列車の運転を「発車」→「加速」→「惰行(空走)」→「停車」の流れを前提としていて、力走中の減速が考慮されていないことです。惰行に入るときは、マスコン(アクセルに相当)をOFF位置にしますが、これにより、制御器のドラムが完全に一回転しきって元の位置に戻ります。この状態になってはじめて再加速が可能になります。

車でも高速モードになると逆にパワーが落ちてきます。山道では、このようなときは、シフトモードを落としてアクセルをさらにふかせば良いのですが、抵抗制御の電車では簡単にはいきません。なぜなら、マスコンを一旦OFF位置にしなければ、再加速ができないからです。そして、再加速には、制御器のドラムが1回転しきるのを待たねばなりません。

山岳地域の上り坂では、マスコンを一旦OFF位置にしている間に、スピードがどんどん落ちていきます。



これでは使い物になりませんので、115系電車では(本来の電車の運転では御法度の)「ノッチ戻し」の機能が付加されています。マスコンを一旦OFF位置にしなくても、マスコンを戻す(例「5」→「3」)ことで、制御器のドラムが逆回転し、よりパワーの出る電気回路が構成され、速度の低下を最小限に抑える仕組みになっています。

さて、いかがでしたでしょうか。
今後も順次、撮影が終わった車両からご紹介の予定です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。