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エトセトラ

2020.02.19

京急線の座席指定サービス「ウィング・シート」に乗ってみた。

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京急2100形 2125編成
2020.2.2/金沢八景

▲2100形の快特三崎口行。2019年10月ダイヤ改正より土休日の一部列車で座席指定サービス「ウィング・シート」が設定されているが、利用状況は芳しくない

京急線にて2019年10月ダイヤ改正で新設された、座席指定サービス「ウィング・シート」。サービス開始からもうすぐ3ヶ月が経とうとしているが、利用者はあまりいるように見えない。SNSなどをのぞいてみてもその評判はすこぶる悪く、グーグル検索に至っては「ウィング・シート」と入力すると続けて「ガラガラ」というサジェストキーワードが出てきてしまう始末だ。

とは言え評判ばかり見てもしょうがないと思って乗車してみたものの、私がたまたま乗車した「ウィング・シート」は評判に違わぬ空気輸送状態であった。はたして何がそうさせてしまっているのか、乗車しながらあれこれ思いついたことを記してみる。乗車編はこちら

土休日の日中時間帯のみという設定

乗車編の記事で書いたとおり、「ウィング・シート」はいまのところ土休日の日中時間帯のみの設定になっている。下りは泉岳寺9時55分発から15時15分発まで、上りは三崎口11時16分発から15時56分発となっているが、設定時間が短いように思う。沿線の人が横浜や東京に出かけるには三崎口11時16分発が1本目というのはやや遅い気がするし、終了時間も早い。18〜20時台くらいまで設定があれば各所で目いっぱい遊んだ人も利用できるだろうし、通勤で土休日に設定のない「イブニング・ウィング号」の代わりに利用されることも考えられる。土休日ダイヤの2100形は20〜22時台まで快特として走っているので、やろうと思えばできるはず。

また、40分に1本の運行だと、気軽に乗るというより狙って乗るということになろう。やるのであればやはり20分に1本くらいあってほしいと思うが、車両運用の都合上、京急久里浜での車両交換や3ドア車で代走する余地を作っておかなきゃいけないことを考えると、難しいところだろうか。

もとより「ウィング・シート」は閑散時間帯の余力を活用しているだけということなのか、年末年始をはじめとして混雑が予想される日については「ウィング・シート」の取扱いを休止している1)。一般的に、こういった座席指定制の車両は混雑時ほど威力を発揮するものだと思うが、京急では逆に混雑しすぎると「ウィング・シート」が消えてしまうという奇妙な現象が起きている。

座席はふつうの2100形

「ウィング・シート」は2100形の2号車がその対象となっているが、当の2100形は「ウィング・シート」のための改造をほとんどしておらず、ヘッドカバーを緑色のものに交換した程度である。すなわち、JRのグリーン車や京阪のプレミアムカーなどとは異なり、座席は「ウィング・シート」でない他の一般車と同じものとなり、その座席指定券は単純に座る権利を得るためだけのものになっている。

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京急2100形 「ウィング・シート」車内
2020.2.2/**

▲「ウィング・シート」は従来の2100形の2号車を対象にしているだけなので、座席は「ウィング・シート」でない他の車両と同じである

その分、座席指定券の価格は低廉に抑えられているものの、座ってしまえば「ウィング・シート」も一般車も同じである。始発駅から乗るなどして確実に空席が狙える人にとって、「ウィング・シート」の必要性は薄れてしまう。今回、私は品川から乗車したわけだが、一般車の乗車列に並んで座ることができるなら、わざわざ「ウィング・シート」でなくてもいいかなと感じた次第。+200円くらいしていいから座席を多少ゴージャスにしてくれれば、始発駅から利用する意義も増すだろうか。

とは言え、車内の落ち着き具合なら「ウィング・シート」に圧倒的な分があり、これにお金を支払ってでも乗りたいという人もいることだろう。ここらへんは各々の価値観の違いである。また、途中駅からの利用こそ座席指定制という恩恵があるはずだが、私が今回乗車した列車では途中駅からの利用が一切なく、まだ認知度が低いとは言え少々残念であった。

専用Webサイトでしか購入できない座席指定券

「ウィング・シート」に乗車するための座席指定券は、京急電鉄の専用Webサイト「KQuick」のみで購入可能。他の事業者の座席指定サービスで見られるようなホーム上に設置された券売機はなく、いまのところ「KQuick」が座席指定券を購入するための唯一の手段になっている。SNS等でも多くの人が指摘しているとおり、このことが「ウィング・シート」を利用する際の高いハードルになっているように思われる。

「KQuick」を利用するためには、会員登録とクレジットカードの登録が必要となる。会員登録では、氏名や住所、電話番号の入力を要するが、その作業は煩わしいものだ。仮に会員でない人が駅のホームでたまたま案内を見つけてすぐさま「ウィング・シート」に乗ろうとしたときに、その場で「KQuick」の会員登録から始めて座席指定券の購入までに至るだろうか。多くの人が、それならいいやとなってしまう気がしてならない。

京急が発売している企画乗車券「みさきまぐろきっぷ」や「よこすか満喫きっぷ」などの利用者は沿線外の人も多いものと思われる。普段から京急に乗っている沿線の利用者ならまだしも、沿線外の人がわざわざ「KQuick」に登録するかというと・・・? 京急が「ウィング・シート」を利用してほしい層と座席指定券の購入方法がいまいち噛みあっておらず、これこそまさにミスマッチ。やはり座席指定券が購入できる券売機がほしいところだ。なんなら、「みさきまぐろきっぷ」や「よこすか満喫きっぷ」に+500円くらいで「ウィング・シート」往復利用券付バージョンなんてのがあっても面白いかもしれない。

◆ ◆ ◆

いろいろと書いてみたものの、私が観察する限りでは「ウィング・シート」の利用者はじわじわと増えている印象である。「KQuick」にしたって、いったん登録してしまえばそれこそ座席指定券をいつでもどこでも気軽にポチっとできる手段になるわけで、ハードルを越えてもらえさえすれば逆に強みになるはずである。そう考えると、「ウィング・シート」のガラガラ状態は時間が解決してくれるかもしれない??

なにはともあれ「ウィング・シート」を始めてしまった以上、対象の快特が事実上の7両編成で運転されるのは、誰にとっても不幸なこと。利用者が増えることを祈る!

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