今回の今昔対比は大阪駅前です。撮影は昭和44年3月だそうで、つまり半世紀前になります。

説明しなくても大阪の方々は判るかと思いますが、画像奥が国鉄の大阪駅で、ちょうど京阪神緩行線の旧形国電が見えています。そして画像左側は阪急百貨店でしょうか。ここに歩道橋がありますので、 「何処だべ?」 と探す必要はありません。

この画像をいただいたのが昨年で、これを片手に 「Now」 の画像を撮ろうと思ったのですが、出発2~3日前に 「Then」 、つまりいただいた方の画像が行方知れずになり、狭い部屋なのに探しまくりましたが見つからず、やむなく、記憶を頼りに大阪駅前に向かいました。

 

 

多分、ほぼほぼ同じ場所で撮っていると思います。50年後の大阪駅前。当然、画像奥のヨドバシカメラはありませんでしたが、ヨドバシが出来る前は何だったんだろう? また、歩道橋はペディストリアンデッキになっちゃいました。

それにしてもね、lこの半世紀の間に大阪はかなり変わりました。万博も控えていたから、その変わり様はハンパじゃなかったはず。オリンピックの開催が決まってからの東京と同じで、 「古き良きもの」 は次々にぶっ壊し、新しいものに取って代わりました。

 

「Then」 に写っているバスですが、あれはバスでは無くて、バスはバスでもトロリーバスになります。そう、大阪にはトロリーバスも走っていましたよね。目を西川きよし師匠ばりに見開くと 「①」 の数字と 「守口車庫前」 という行く先が読み取れると思います。ですから、画像のトロリーバスは1系統ということが判ります。

後述しますが戦前からトロリーバスは存在しましたけど、トロリーバスが本格的に増えたのは、戦後になってからで、外面こそバスですが、法規上は鉄道扱いになります。 「無軌条電車」 と言われるのもその為です。諸外国では今も都市交通の主力として活躍しているのもありますが、日本ではモータリゼーションの影響をもろに受けて、1970年代までに全て廃止になり、現在は富山県の立山で運行されているに過ぎません。

 

日本におけるトロリーバスの歴史は古く、1912年に東京で実験運転がが行われたのが最初で、営業運転の最初は昭和3年に阪急の花屋敷駅 (→雲雀丘花屋敷駅) から新花屋敷 (今の川西市あたり) の間で運行されたのが歴史上の嚆矢といわれています。新花屋敷とは、この付近に温泉が湧き、それを活用して宿泊施設や遊園地を設置した、アミューズメント施設なんですが、駅から施設までに当時のバスでは登坂が出来ない急勾配があったので、そこへのアクセスとして民間の事業者が運行を始めたのですが、施設自体が全然 (経営的に) 振るわず、1932年に休業、廃業の憂き目に遭い、トロリーバスもお役御免になります。

 

都市交通としてのトロリーバスは、花屋敷のトロリーバスが廃止になった同じ年に京都で運行されたのが最初。当時のバスは今と比較にならないほどの非力さで、路面電車を敷設するのよりもコスト的に些かリーズナブルであることから、次世代交通機関と期待は大きかったようです。その後、順不同ではあるけど、川崎市、横浜市、東京都、大阪市、名古屋市・・と拡充していきます。

しかし、前述のモータリゼーションの影響で、次々に廃止になり、最後まで残った横浜市が1972年に廃止になり、大都市におけるトロリーバスはその歴史に幕を閉じます。

 

大阪市のトロリーバスですが、計画自体は1933年からありましたが、戦争や他事業者との協議等で開通に時間を要し、計画から20年後の1953年に大阪駅-神崎橋間でようやく開業しました。以降、市電とバッティングしないように路線を拡大していき、7系統8路線まで増えました。東京都が4系統しか運行されなかったのを見れば、大阪の方が需要があったと思いますが、都電の場合は23区中に路線を張り巡らせていたので、被らない場所を探せなかったのが路線拡大が出来なかった理由じゃないかと思います。特に山手線内は都電に席巻されていたので、明治通りをメインに路線が敷かれました。

 

モータリゼーションの影響で路面電車やトロリーバスが廃止になったというのは、先程来からお伝えしていますが、東京も横浜も名古屋も大阪も地下鉄の整備を推し進めて、川崎と京都はバス転換に踏み切りました。大阪は万博開催中の1970年6月までに廃止になっています。

トロリー1系統ですが、守口車庫が起点で国道1号線を南下し、野江や都島といった住宅地を経由、天六を掠めて大阪駅に立ち寄った後、十三や加島を通って、神崎橋に至る路線です。守口から天六までは今の大阪メトロ谷町線と被り、またトロリー2系統も大阪駅まで完全にバッティングしています。

東京都のトロリーバスは全て廃車になりましたが、横浜市や大阪市のトロリーバス車両はそれぞれの営業所や工場で保存されています。

 

東京も “要らぬ” 変貌を遂げていますが、大阪は2025年の大阪万博に向けてこれからさらに変わっていくことでしょう。

 

【 「Then」 の画像提供】

ウ様

【参考文献・引用】

週刊歴史でめぐ鉄道全路線 公営鉄道・私鉄第5号 大阪市営地下鉄 (朝日新聞出版社 刊)

ウィキペディア (トロリーバス、大阪市営トロリーバス)