昨年10月のことになりますが、米原の鉄道総研・風洞技術センター内に留置されている新幹線高速試験車両の一般公開に行ってきました

昨年、このイベントへ行こうとしたところ、ちょうど台風が直撃して敢え無く中止になってしまったことから、一年越しのリベンジとなりました

 

このイベントの開催されたのが、昨年の10月なので既に4ヶ月も経過してしまっていることに自分でも驚きを禁じ得ませんが、徐々に昨年のネタを消化していきたいと思っています

ということで、新快速に揺られて滋賀県の北の方、米原駅へとやって来ました

 

イベント会場は米原駅から歩いてすぐ近くのところにあって、人だかりができていることもあって、まず迷うことはなさそうです

ここには、300X・WIN350・STAR21とJR各社の新幹線高速試験車両が展示されており、それぞの先頭車両が計3両、ここ米原の地でのんびりと余生を送っています

 

 

たった3両とはいえ、間近で見ると思ったよりも迫力があります

こうした車両の存在なくして、500系やE5系はこの世に生まれなかったわけですから、そう考えるとここにいる車両たちは新幹線高速化への道を切り拓いた”偉大な先駆者”といえそうです

 

ちなみに、この写真は終了間際に撮影したので、ほとんど人が写っていませんが、私が入場した時はどの車両も見学者が列を成していました

なお、列に並ぶ必要があるのは、運転席を見学する場合だけで、車内は自由に見学できるようになっています

 

ただ、人が多いからといって、せっかく年に1度の特別公開に来たので、運転席を見学しない手はありません

私も大人しく列に並んで、自分の順番を待つことにしました

それでは、STAR21→WIN350→300Xの順に、各車の様子を紹介していきます

 

ちなみに、STAR21は"STAR"の部分ですが、これは新幹線の未来を照らす星になって欲しいという願いを込めて命名されたわけではなく、Superior Train for Advanced Railway toward the 21st centuryの頭文字から命名されています

 

 

 

 

 

ここに保存されているのは、東京方の先頭車両952-1で、どことなく京成のAE100形に似ているようにも見えます

また、JR東日本の車両でありながら、製造元が川崎重工や日立製作所ではなく、JR東海との関係が深い日本車両というのも少々意外ですね

 

 

列に並んでいると、係の人から各自に見学証が配られました

この見学証ですが、きちんと車両をモチーフにしたスタンプが刻印されているデザインとなっており、しかも各車両ごとにオリジナルデザインの見学証が用意されるほど力が入ってます

 

 

 

それでは見学証を携えて、いざ運転席の内部を拝見することにしましょう

既に第一線を退いた車両のため、レバー類を前後に動かすことくらいしかできませんが、小さい頃に図鑑で見た空間が目の前に広がっているわけですから、何だか不思議な気分ですね

 

なお、運転席の見学はどの車両も1人あたり60秒に制限されていますが、写真を撮るだけならこれだけでも十分です

続いて、一般の車両なら客室が設置されている部分へ向かいます

 

 

 

 

 

当たり前ですが、試験車両なので座席の類は一切設置されていません

これだけを見ると、運転席以外にあまり見どころが無くて退屈になりそうですが、壁面に当時の新聞記事の切り抜きや登場当時の貴重な写真が展示されているので、ここまで足を運んだ甲斐がありました

 

 

STAR21はデッキも見学できたのですが、ここだけを見ると営業用の車両と見分けがつきませんし、それに雰囲気もそこはかとなくE2系などと似通っているような気もします

 

 

 

 

 

 

次は、JR西日本が生み出したWIN350を見学したいと思います

ちなみに、このWIN350の"WIN"もSTAR21と同じく語呂合わせになっており、West Japan Railway's Innovation for the operation at 350km/hの部分を組み合わせた愛称となっています

 

他の車両が純然たる試験車両なのに対して、こちらはあくまでも500系のプロトタイプ扱いになっているのが300XやSTAR21との大きな違いです

とはいっても、営業運転に供されたことはないので、試験車両であることに変わりはありません

 

 

列に並んでいると、係の人から見学証を渡されたのですが、こちらもきちんとWIN350のスタンプが押された専用デザインになっています

一般公開が年に1度しかないにもかかわらず、かなり気合が入っていますね

 

ついでに、記念乗車証みたいなカードを配布してもらえるといい記念になるのですが、さすがにそこまで高望みしてはいけませんね

 

 

登場した平成初期は最先端だったであろう運転席も、令和に見るとクラシカルな雰囲気さえ漂っています

その形状から察するにモニタ装置にはブラウン管が用いられており、この車両の生まれた時代を物語っています

 

 

乗務員扉にはW0の編成番号が…半ば存在を忘れ去られているかのような表情で…刻まれていました

500系の量産車にはW1から番号が振られているので、本来であればこのW0がプロトタイプの証として燦然と輝いているはずなのですが、文字がかすれてうらぶれた様子が垣間見えます

 

 

 

こちらもSTAR21と同じく、客室内に登場時の経緯や新聞記事が掲示されており、たいへん貴重な資料なだけに、見ていて飽きることがありません

WIN350の名が示すように、当初は350㎞/hでの営業運転を目標としていたものの、諸般の事情から量産車では300㎞/hに落ち着きましたね

 

 

 

 

 

最後になりましたが、閉館時間も迫ってきたところで、300Xの車内へ足を踏み入れたいと思います

車内を軽く見学するだけなら、さほど時間はかかりませんが、運転席の内部を見学したり、資料にじっくり目を通したりしていると、入場から退場まで2時間ほどを要しました

 

さて、300Xと言えば何と言っても国内最速443㎞/hを達成した車両としてあまりにも有名な存在ですが、ここには博多方の先頭車である955-1が保存されています

また、この車両で特筆すべき点は、製造を三菱重工が担っている点です

 

鉄道車両において、電装品に三菱電機の部品が艤装されているケースは数多くあれど、三菱重工が車体の製造を行った新幹線車両はこれが唯一の例かと思われます

理由としては、6両編成の300Xの中でこの955-1のみ、航空機の技術をベースに製造されたことが影響しているようです

 

 

そして、STAR21にWIN350にも用意されていたオリジナル見学証ですが、もちろん300Xにも用意されていました

簡単なデザインとはいえ、なかなか鉄ちゃん心がくすぐられますね

 

 

300Xの運転席ですが、こちらは製造時期が近い300系にかなり似ていますね

こちらの300Xですが、これまでに紹介した上記の試験車両とは異なり、車内に座席が設置されています

 

 

 

少々古めかしい形状に、ふかふかな座面のクッション材、それにフットレスト…どこかで見覚えのある座席が並んでいると思えば、これはまごうことなき100系の普通席ではありませんか

予期しない事態に内装ヲタクの私としては、運転席の見学時を超える今日一番のテンションですよ

 

 

背面テーブルに掲示されている編成図を確認すると、8号車1階にカフェテリアが設置されているので、100系G編成からこちらに移植された座席であることが窺い知れます

まさかこんなところで懐かしい100系の座席に対面することになろうとは思いもよりませんでした

 

 

会場を出ると、ちょうど目の前に近江鉄道の線路があったので、ちょいと待ってこちらも撮影しておくことにしました

しばし線路際で待っていると、雲一つない湖北の秋空の下を800系が快走していきました

 

この米原の鉄道総研の一般公開については、一般公開が年に1度しかないことや、展示車両がN700系やE5系のように営業運転に供される華のある車両ではなく、新幹線試験車両というマイナーで地味で存在故に、あまりネット上に記事が出回っていないので、この記事が参考になれば幸いです