【2020春改正】東北新幹線はやぶさ号増発ダイヤをもう少し深読み

新ダイヤで「はやぶさ29号」は東京14:28発の新函館北斗行きとなる この表示は北海道新幹線開通時の東京17:20発の時代に撮影

新ダイヤで「はやぶさ29号」は東京14:28発の新函館北斗行きとなる
この表示は北海道新幹線開通時の東京17:20発の時代に撮影

2020春のダイヤ改正東北新幹線は「東京⇔新青森間3往復増発、仙台→新青森1本延長増発」と輸送力を強化する。これに対して先月のダイヤ改正速報記事でも簡単に分析は行ったが、もう少し深掘りしてみたところ、特に下りの新函館北斗行きの運転時刻変更には様々な要素が含まれていることが分かった。

今回は、1/24(金)の時刻表2月号発売=特急・新幹線詳細ダイヤ発表を前に、改めて今わかる範囲での東北新幹線新ダイヤ分析を行いたい。

(なるべく分析過程も記した長い記事なので、必要に応じて目次から読みたい章に飛んでいただければ幸いである。要点だけ先取りしたい方は「増発ダイヤで何が変わるのか」の章をご覧いただきたい。)

参照するプレスリリース

昨年末に発表されたプレスリリースのうち、東北新幹線はやぶさ号の増発についての言及があったのはJRグループ全体JR東日本全体仙台支社盛岡支社秋田支社である。

特に秋田支社のプレスリリースは、増発および行き先変更列車が全て掲載されている他、「秋田〜新函館北斗間の所要時間短縮」「秋田新幹線「こまち」の列車名(号数)変更」について関係する全列車の時刻と共に掲載されている。さらに巻末には新青森駅を発着する全ての新幹線(はやぶさ・はやて号)の新時刻が掲載されており、部分的ではあるが新ダイヤ像を把握することができる。本記事で取り上げた新ダイヤの詳細時刻は、概ね秋田支社のプレスリリースを参照して判明した範囲のものである。

またこの他、JR北海道のプレスリリースには「新函館北斗駅での「北斗」との乗り換え時間短縮」が取り上げられている。新幹線部分のダイヤ変更をきっかけに生じるメリットであり、本記事ではこの点も取り扱いたい。

増発列車の詳細

さて、「東京⇔新青森間3往復増発、仙台→新青森1本延長増発」の具体的な時刻について見ていきたい。先に変化の少ない上りから簡単に説明し、下りについては詳細に分析を行う。

上り:既存スジ+はやぶさ号3本純増

東北新幹線2020春上り増発列車・運転区間変更列車(秋田支社プレスリリースより引用)

東北新幹線2020春上り増発列車・運転区間変更列車
(秋田支社プレスリリースより引用)

今回上りで増発になる3本は、全て新青森発東京行きの新規設定列車である。朝・昼・夕と時間帯も分かれている。既存のはやぶさ号の時刻変更は特に行われない上で、運転間隔が約1時間開いている箇所に挿入される形となる。現在この3列車と同時間帯(東京同時刻着)を走る臨時列車はいずれも週1回〜ほぼ毎日と比較的高頻度で運転されていたので、それなりに順当な定期列車昇格と言えるだろう。

停車駅は3本とも速達タイプで、八戸(20号は通過)・盛岡・仙台・大宮・上野のみに停車し、新青森→東京を3時間12〜15分で結ぶ。同時間帯に設定されていた臨時列車と比べても停車駅は少なくなっている。

下り:単なる増発だけでなく、はやぶさ号の行先変更・続行便多発!

東北新幹線2020春下り増発列車・運転区間変更列車(秋田支社プレスリリースより引用)

東北新幹線2020春下り増発列車・運転区間変更列車
(秋田支社プレスリリースより引用)

一方、下りは単純な増発ではなく、時刻変更や行き先変更(交換)を伴っている。

下りの増発・区間延長に相当するのは東京発7:00、14:28、15:28、16:28の4本である。このうち15:28発は、現在の15:44発仙台行きの運転区間延長相当である*1。東京毎時28分発というのは既存の臨時列車スジとしても比較的珍しいが*2、そこに停車駅も役割も新しい定期はやぶさ号を走らせることになる。

「増発区間」としては4本が「新青森まで」ということになっているが、実際にはさらに「新函館北斗行き」の列車設定が変更となっている。具体的には、東京10・14・15時台発の新函館北斗行き発車時刻が「10:20→10:44」「14:20→14:28」「15:20→15:28」と後ろ倒しになっている。なお、前者2本は新函館北斗の到着時刻も後ろ倒しになり、東京15時台発の新函館北斗到着時刻は変わらない。

また行き先変更ではないので上記の表には掲載されていないが、東京7:36発のはやぶさ(3)号が新ダイヤでは4分繰り上げて7:32発のはやぶさ5号となっており、同じ停車駅配置ながらも新青森到着時刻は11:00→11:52と8分早着になっている。

下り新函館北斗行きの新旧時刻比較

ここで注目したいのは、実質的に新函館北斗行きが時刻変更となった点である。東京発が後ろ倒しになったが、より詳細にどう変わったのかを見ていきたい。

東京10:20→10:44発
現15号 現17号   新17号 新19号
10:20 10:44 東京 10:20 10:44
11:54 12:17 仙台 11:54 12:17
12:38 一ノ関 12:38
12:37 13:05 盛岡 12:37 13:05
いわて沼宮内
二戸
13:05 13:34 八戸 13:05 13:34
七戸十和田
13:29 13:58 新青森(着) 13:29 13:57
13:31   新青森(発)   13:59
13:46   奥津軽いまべつ(着)   14:15
14:20   木古内(着)   14:48
14:33   新函館北斗(着)   15:01

まず東京10時台発。この2本は新青森までの時刻は(ほぼ)変化がなく、新青森-新函館北斗間の運転だけ後者に譲った形となる。なお東京10:44発は一ノ関停車便なので、一ノ関→北海道新幹線が1本で移動できる機会が増えるということにはなる*3

また北海道新幹線区間各駅の時刻は28〜29分後ろ倒しとなる。奥津軽いまべつ駅での10分以上の時刻変更は、開業以来初と思われる*4*5

新函館北斗行きの東京→新函館北斗の所要時間は4時間13分→4時間17分と一ノ関停車分だけ伸びるが、後述するように新函館北斗駅での北斗号接続時間が大幅に短縮となる。

東京14:20→14:28発
現25号   新27号 新29号
14:20 東京 14:20 14:28
15:54 仙台 15:54 16:03
16:37 盛岡 16:37 16:53
いわて沼宮内
二戸
17:05 八戸 17:05
七戸十和田
17:29 新青森(着) 17:29 17:41
17:31 新青森(発)   17:43
奥津軽いまべつ(着)  
木古内(着)  
18:28 新函館北斗(着)   18:40

続いて東京14時台発。14:20発はダイヤ改正後も新青森まで同停車駅・同時刻での運転となる。新設定の東京14:28発は八戸を通過し、北海道新幹線区間も現状を引き継ぎ途中駅は通過する。全体的に新函館北斗行きの時刻が後ろ倒しになり、八戸→新函館北斗の移動のみ乗車時刻が同じかつ乗り換えが必要になっている。

なお、東京14:20発の東京発は8分後ろ倒しだが、新函館北斗到着は12分遅くなっている。東京から新函館北斗までの所要時間で言うと4時間8分→4時間12分と4分増加している。停車駅が1駅減ったのに何故…という疑問が湧くが、盛岡-新青森間の所要時間を見ると八戸通過分はしっかり時間短縮されている。その一方で、仙台-盛岡間の所要時間(盛岡の停車時間含む)が7分伸びているのだ。これについては、後ほどもう少し深く考察したい。

東京15:20→15:28発
現27号   新31号 新33号
15:20 東京 15:20 15:28
16:54 仙台 16:54 17:03
17:37 盛岡 17:37 17:53
17:49 いわて沼宮内 17:49
18:02 二戸 18:01
18:14 八戸 18:12
18:27 七戸十和田 18:25
18:43 新青森(着) 18:39 18:43
18:45 新青森(発)   18:45
19:00 奥津軽いまべつ(着)   19:00
19:34 木古内(着)   19:34
19:47 新函館北斗(着)   19:47

そして東京15時台発。東京14時台発の場合と似た構造だが、細かい部分が若干異なっている。

東京15:20発の新青森までの停車駅は以前と同様、盛岡以北で各駅停車となる。しかし二戸以降で時刻が早まり、新青森には4分早く到着する。盛岡-新青森間を各駅に停車する列車の最速は2019年末時点では盛岡-新青森間1時間3分(下り2本)だったが、さらに1分短縮され1時間2分で結んでいる。それだけ現ダイヤでは余裕が確保されていたということでもある。

そして東京15:28発は、東京14:28発同様に仙台発〜盛岡発で若干時間を要しながら、盛岡-新青森間は無停車で新青森に到着する。そして新青森到着時刻以降・終点新函館北斗到着までは、ダイヤ改正前の東京15:20発新函館北斗行きの時刻と全く変わらないものとなっている。東京15:20発の新青森到着時刻が早められたのはそのためであると考えられる*6

東京から新青森-新函館北斗間で見れば、単純に8分の所要時間短縮となっている。また、いわて沼宮内-七戸十和田間各駅から北海道新幹線方面へは、発車時間が0〜2分前倒しになった上で乗り換えが必要になった。

東京毎時28分発の運転時分について

東京14:28発、15:28発の新設定の新函館北斗行きが仙台-盛岡で所要時間が膨らんでいる点について、もう少し考えてみたい。

実は、似たような運転時分の列車が現在臨時列車で存在している。それは今回のダイヤ改正で増発(定期列車化)する東京16:28発の列車*7である。この列車は仙台18:03発・盛岡18:47着/18:51発で、仙台-盛岡間の所要時間が他のはやぶさ号(39分)より4分遅い43分となっており、また盛岡でこまち号切り離しがあるわけでも無いのに4分間停車している。東京14:28発、15:28発はこれに倣った上でさらに盛岡発車までにもう2分費やしている。

このようになった理由は2つ考えられる。一つは「やまびこ号追い抜き制約」、もう一つは「秋田新幹線からの接続」だ。後者の秋田新幹線の説明は後の章に譲るとして(たらい回し気味で申し訳ない)、ここでは、やまびこ号との関連を見てみたい。

以下、新規設定の東京14:28発、15:28発付近について同様のダイヤになるのであろうという予想を踏まえながら、東京16:20・16:28発のはやぶさ号が前のやまびこ号を追い抜く部分のダイヤを見る。

 ※現ダイヤ

12/29・30

やまびこ

57号

はやぶさ

31号

はやぶさ

399号

東京 15:36 16:20 16:28
仙台 17:39 17:54 18:03
古川 17:52
くりこま高原 18:02
一ノ関 18:10着
18:14発

(18:12)
水沢江刺 18:25
北上 18:32着
18:35発

(18:34)
新花巻 18:43
盛岡 18:54 18:33 18:47

上の表は、はやぶさ399号が運転された2019年12月29・30日の時刻である。この2日間だけ、やまびこ57号は北上・新花巻の発車時刻が1分遅く設定され上記のようなダイヤになっている。なお括弧書きで記したはやぶさ号の途中駅通過時刻は、やまびこ号停車時刻から割り出した推測である。

定期列車の仙台-盛岡間各駅停車のやまびこ号盛岡行きは、一ノ関で定期(東京毎時20分発)はやぶさ号を待避するダイヤとなっている。下りで宇都宮や福島等から新青森方面に向かう場合には、仙台での片接続を利用できるような形だ*8

問題は、続行のはやぶさ(399)号がどうやってやまびこ号を追い抜くかである。仙台時点で9分離れているが、4分程度の続行ならまだしも、さすがにやまびこ号を一ノ関でもう9分待たせる訳にはいかないだろう。では次の駅で…と思うところだが、水沢江刺駅には通過線がなく、追い抜きができない。よって、はやぶさ(399)号の速度を落とした上で北上で追い抜いているのが現状である。逆にやまびこ号を盛岡まで先着させるとなると、最速で18:51頃到着だとすれば、はやぶさ(399)号の盛岡到着をさらに6分以上ほど遅らせる必要があり、そこまでいくと既存のはやぶさ号に比べて10分ほど遅くなってしまうことになる。(なお現在、他の時間帯の東京毎時28分発の臨時はやぶさ号は、古川・一ノ関・北上に停車することで14分遅くなっており、定期やまびこ号は盛岡に先着できている。)

以上が、東京時点で8分差だった2本のはやぶさ号が盛岡到着時点で14分差にまで開くカラクリである。プレスリリースに「やまびこ号の時刻変更」などの文言は特になかったことから、おそらく盛岡行きやまびこ号のスジは現状とほぼ同じで、上記表のようなダイヤパターンになると予想される(あるいはやまびこ号の速度向上により盛岡に先着する可能性も0ではない)。なお盛岡での長時間停車については、「秋田新幹線からの接続」が関わると思われるので、そちらで後述する。

東京毎時28分発のはやぶさ号をもっとスムーズに走らせられないか…という気もしてくるが、ひとまず現状のやまびこ号のダイヤを変化させず、また東京発24・32分は上越・北陸方面の列車がよく使用し36分には次の盛岡行きやまびこ号がある…となると、この辺りが総合的にちょうど良いものと考えられる。

増発ダイヤで何が変わるのか

引き続き、全て下り方面の話である。

今回の改正で東北新幹線の下りダイヤでは「はやぶさ号の(東京時点)8分続行」「新函館北斗行き列車の時刻後ろ倒し」という、単なる増発ではないやや大胆なダイヤ設定が行われる。またそれは、先述のような若干の所要時間増を受け入れてでも実施される。

このようなダイヤ設定には複数の効果・メリットが存在するので、以下でそれを説明したい。

効果1:新函館北斗行きの運転間隔是正

まず、東京10時台発の新函館北斗行きが10:20発から10:44発に変更となったことによる効果の一つとして、「前後の新函館北斗行きとの運転間隔が均等化された」と言うものが挙げられる。下の新旧ダイヤ比較表も参考にご覧いただきたい。

2020年3月13日までの新函館北斗行き・主な停車駅の時刻(東京発9〜12時台)

 現ダイヤ 東京発 仙台発 盛岡発 新青森 新函館北斗
はやぶさ11号 9:36 11:08 11:48 12:37 13:34
はやぶさ15号 10:20 11:54 12:37 13:31 14:33
はやぶさ21号 12:20 13:54 14:37 15:37 16:30
運転間隔 44-120 46-120 49-120 54-126 59-117

2020年3月14日からの新函館北斗行き・主な停車駅の時刻(東京発9〜12時台)

 新ダイヤ 東京発 仙台発 盛岡発 新青森 新函館北斗
はやぶさ13号 9:36 11:08 11:48 12:37 13:34
はやぶさ19号 10:44 12:17 13:05 13:59 15:01
はやぶさ23号 12:20 13:54 14:37 15:37 16:30
運転間隔 68-96 69-97 77-92 82-98 87-89

前提として、東京10時台発は30分弱後ろ倒しになるが、その前後の列車の時刻は今回のダイヤ改正で変わらない。

前後の列車を含めると、今までは東京発新函館北斗行きの列車が東京9:36・10:20・12:20発という発車時刻であり、10:20発から12:20発まで2時間開いていた。これが東京9:36・10:44・12:20発となることで、9:36の後は1時間ほど開くものの、その次は1時間36分間隔にまで縮まっている。

また停車駅や速度差(東京9:36発は新函館北斗への最速達列車)の影響もあり、盛岡・新青森あたりになると均等化の影響はより大きく出ており、現在のダイヤでは2時間以上開く箇所もあるのに対し、新ダイヤでは概ね1時間半間隔と言えるレベルになる。新函館北斗着視点だとほぼ完全に等間隔となる。

もちろん、時刻が後ろ倒しになることにより「今まで新函館北斗に14:33に着けたのに15:01着となってしまう」という面は存在する。プレス時点では詳細時刻は発表されていないが、接続するはこだてライナーも後ろ倒しになり、函館着も同様に約30分後ろ倒しにはなるだろう。ただし詳しくは後述するように、接続する札幌方面への特急列車「北斗」号は変わらない(新函館北斗での待ち時間短縮)という意味では是正されたと言える。

効果2:続行運転による新函館北斗行き混雑緩和

東京14:20発、15:20発、16:20発に続行するような形で14:28発、15:28発、16:28発が設定された。特に新函館北斗行きが14:20発・15:20発から14:28発・15:28発の後続側に移っているのがポイントである。

新青森新函館北斗まで行くはやぶさ号でも、実際に一番混雑するのは東京(大宮)-仙台間である。はやぶさ号は全車指定席の列車であるのに対してこの区間で指定席満席になる恐れがあるため*9、東京や上野・大宮から北海道新幹線方面までの利用者が(特に発車直前で)指定券を取れないというリスクが存在している。そこで、相対的に近距離(仙台、あるいは盛岡・新青森まで)へ少しでも早く行きたい利用者が先行東京20分発の列車に集まりやすいダイヤすることで、遠距離(新函館北斗)への乗客が指定券が取れないリスクを下げることができる。

また、等間隔の挿入(今の臨時スジである東京44分発のような形)ではなく続行に近い形での運転となっていることで、「ほぼ1列車」として総合的に輸送力が増強される、という形になっている。座席定員は盛岡まで約1.6倍*10新青森まで2倍となる。また2列車で停車駅が分担されており、東京20分発が八戸(など盛岡-新青森間)に停車し、新青森で東京28分発の新函館北斗行きに接続するという形になっている。例えば元々八戸などから新函館北斗まで1本で移動していた乗客には乗り換えの手間が増えたものの、移動可能性の維持かつ新函館北斗行き列車の速達性確保を達成している。

なお続行列車設定の時間帯について、より混雑しやすい時間帯としては東京17〜19時台の夕ラッシュ時が挙げられ、実際に指定席も埋まりやすい印象はあるが、この時間帯は既に特に仙台以南の区間で定期列車・臨時列車ともに多数設定されているという側面がある。一方で東京14・15時台というのは、パターン以外の列車=代替手段が少ない他、新函館北斗で北斗号に乗り換えられる最終時間帯であったり、函館にちょうど良い時間帯(19~20時台)に到着する、といった面がある。

効果3:北海道方面への所要時間短縮

新函館北斗での乗り換え時間短縮列車(JR北海道プレスリリースより引用)

新函館北斗での乗り換え時間短縮列車(JR北海道プレスリリースより引用)
この他「東京15:20発、新函館北斗19:47着」が「新函館北斗20:13発、札幌23:40着」に接続していたのが、
東京・札幌発時刻のみ変わり「東京15:28発、新函館北斗19:47着」が「新函館北斗20:13発、札幌23:39着」に接続となる。

今回、新函館北斗行きの運転時刻が後ろ倒しとなったが、3本とも新函館北斗では今までと運転時刻のほとんど変わらない北斗号に接続する。

これによるメリットは主に2つあり、「新函館北斗での長かった乗り継ぎ時間の短縮」「本州から札幌方面への所要時間短縮」という点である。

新函館北斗での長かった乗り継ぎ時間の短縮」は上記画像つまりJR北海道のプレスリリース通りであるが、新幹線から(現スーパー)北斗15号への乗り継ぎが39分→12分、(現スーパー)北斗21号への乗り継ぎは42分→30分となる。新函館北斗での新幹線から北斗号への乗り継ぎは、下り北海道方面の場合は10分台の場合もあれば40分近くかかっているケースもあるのだが*11、今回はその中でも特に乗継時間の長かった2パターンにおいて短縮される形となった。

「本州から札幌方面への所要時間短縮」というのは、北斗号での各停車駅の到着時刻がほぼ変わらない(せいぜい数分程度の違いである)一方、新幹線乗車時刻が全体的に後ろ倒しになっていることによる結果である。東京や仙台からもそうだが、より全体の所要時間が短く北海道方面への代替手段の少ない盛岡や新青森からでも8〜28分程度の短縮になるのは大きい。

効果4:秋田新幹線から北海道方面への接続改善

秋田から新函館北斗への所要時間の変化(秋田支社プレスリリースより引用)

秋田から新函館北斗への所要時間の変化(秋田支社プレスリリースより引用)

そして秋田支社のプレスリリースで大きく取り上げられ、北海道・盛岡支社でも一部言及されている点として、「秋田から新函館北斗への所要時間短縮」が挙げられる。このカラクリとしては、(増発や行先変更で新たに設定された)新函館北斗行きの盛岡発車時刻が今までよりも遅くなったことで、今までより1時間遅いこまち号から、短時間の乗り換えで新函館北斗行きに接続できるというものである。

元々秋田→盛岡→新函館北斗(+主な新青森行き定期列車)の盛岡乗継時間の多くが約50分と非常に長くなっている*12ことを考えると、接続時間が短くできるならそれに越したことはない状況ではあった。今回、秋田新幹線内の(定期列車の)時刻はほぼ全く時刻変更がないようだが(秋田支社プレスの別表より)、そこで一部新函館北斗行き列車の時刻が後ろ倒しになるにあたり、せっかくなら接続できるようにしたものと思われる。

ところで今回新たに接続になったパターンのうち、盛岡16・17時台の接続時刻が(ホーム移動を伴うと思われるのに対し)5分という最小限の時間となっている。こまち号の秋田到着時刻は以前と変わらず、はやぶさ29号・33号の盛岡発車時刻は16:53、17:53となっている。

このはやぶさ29号・33号(東京14:28発・15:28発)は、先述のように仙台-盛岡の所要時間が長く設定れている列車である。この2列車の盛岡到着時刻は、現在の東京16:28発臨時列車を基にすると早くて16:47、17:47と予測され(※正式時刻発表後に確認予定)、発車時刻として既に開示されている16:53、17:53までさらに6分のズレがある。その理由は上記の図を元にすると秋田新幹線からの最低限の接続時間を確保するためだと考えることもできないだろうか。

盛岡で6分停車、あるいはスピードをさらに落とした上で盛岡に到着となると、はやぶさ号としての速達性には若干疑問が残ってしまうものの、秋田新幹線の接続や先行列車(東京14:20・15:20発の元々新函館北斗行きだった新青森行き)に追いつかないようにすることを考えると、この設定が落とし所になるのだと思われる。

なお、はやぶさ29号・33号は北上で盛岡止まりのやまびこ号を追い越すことになると思われるが、そのやまびこ号の盛岡到着時刻の予測は現ダイヤを元にすると16:54〜、17:54〜頃となり、新函館北斗行きにギリギリ乗り継げないような時刻にはなる。あるいは、少し速度向上してはやぶさ29号・33号に追いついてしまったり、そもそも盛岡まで逃げ切る列車となる可能性もないわけではないが、その場合には「新たにやまびこ号から新函館北斗行きに乗り継げる」という旨がプレスリリースに掲載されそうな気がするので、少々可能性は低そうだ。

まとめ

以上、今春の東北新幹線の増発・時刻変更列車について、特に下りのダイヤ設定について詳しく分析してきた。上りの単純な3本増発に比べて、下りは続行運転や新函館北斗行きの後ろ倒しなど大胆な設定をすることにより、北海道方面など特定の移動パターンに対して特に便利になるような設定を狙ってきた印象がある。

今回は変更対象の列車に対して細かく見てきたが、臨時列車なども含めた新幹線の全時刻が発表された後に、改めて終日のダイヤ全体のバランスを見て分析できればと思う。

*1:元々、多客時を中心に盛岡・新青森行き臨時列車として運転されることは多かったが、本改正で運転時刻を変更して定期化されたような形だ。

*2:直近(2019年度冬季)の臨時列車だと12:28・13:28・14:28・15:28発は古川・一ノ関・北上に停車するはやぶさ号で、いずれも年末年始の数日ずつ運転された。他時間帯の28分発だと、やまびこ号の臨時や定期便も走る。

*3:一ノ関停車の北海道新幹線直通列車は、他に仙台⇔新函館北斗間の区間運転列車1往復がある

*4:青函トンネル速度向上時に、はやて100号新青森行きの運転時間帯自体がやや早まった際の6分前倒しならあった。

*5:また、これによる津軽二股駅での在来線接続列車は、JR津軽線のダイヤ変更が無ければ特に変化しない。

*6:なお東京15:28発の盛岡-新青森間の所要時間は50分と、この区間の無停車便の最速47分、1時間前東京14:28発の48分よりは長くなっており、前の列車を精一杯速く走らせても詰まってしまうという見方もできる。

*7:はやぶさ399号。12月29・30日運転で、新はやぶさ37号が通過する二戸・八戸にも停車していた。

*8:上りの盛岡始発やまびこ号ははやぶさ号を福島で待避するので、新青森方面から福島・宇都宮等へは仙台で別のやまびこ号に乗り換えるような形となる。

*9:一応、満席時に発売される立席特急券はある。

*10:末端車両やグリーン車グランクラス、こまち号車両の4列シートなど単純な比較はできないが、17両(こまち込み)→27両(増発分は増結なし)という想定である。

*11:ちなみに上り東京方面の乗り継ぎは、比較的均等に30分前後確保されている。北斗号は多くの区間で単線を通る特急であり、恒常的な遅延をある程度考慮しているためと思われる。

*12:ちなみに逆方向の新函館北斗→盛岡→秋田も乗り継ぎ時間が約50分である。上りは新青森からの単純増発なので、新青森→盛岡→秋田なら接続改善になりそうだ。