京都市営地下鉄との利害調整 | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

大津線直通客に対して東西線側が乗継割引を拡大した場合、直通客一人あたりから得られる東西線の運賃収入は減少します。しかし、それによって直通客数の増加が見込まれるので、東西線側の総収入も、むしろ増える可能性があります。

 

その影響は、前回述べた理由により、三条京阪(特定2区)を基準として推計するのが妥当です。なお、割引の対象から外れる東西線京都市役所前以西への直通客は減収には影響しませんが、ここでは考慮に入れないものとします。

 

『都市交通年報』によれば、大津線と東西線の1日あたり直通定期客は、1998年度が6,780人、2012年度が2,848人です。大津線の定期客の通勤:通学比率は約6:4なので、1998年度は通勤定期客4,068人・通学定期客2,712人、2012年度は通勤定期客1,709人・通学定期客1,139人と推計されます。

 

以上より、東西線が大津線直通の通勤定期客から得る1日あたりの収入は、2012年度が8,820円(京阪乗継時の特定2区1ヵ月通勤定期運賃)×1/60(片道1日分)×1,709人= 約25万円と推計されます。これを1998年度の水準に戻した場合は、6,300円×1/60×4,068人 = 約43万円となり、約18万円増加します。

 

一方、大津線と東西線の1日あたり直通定期外客(普通客)は、2012年度が1日あたり2,732人です。また、浜大津で石山坂本線と京津線を乗り継ぐ定期外客は1,823人ですが、この旅客がJRに乗り換えたり大津線内で利用を完結したりすることは立地上考えにくいので、そのほとんどが東西線への直通客であると推測されます。

 

仮に2,732人の6割が石山坂本線発着、4割が京津線発着であると想定した場合、東西線が大津線直通の定期外客から得る1日あたりの収入は、2,732人×0.6×260円=約43万円、2,732人×0.4×(260円-50円)=約23万円、合計約66万円となります。

 

1日あたり直通定期外客数が1998年度の水準に戻れば4,571人となりますが、割引額を130円に拡大すれば4,571人×130円=約59万円となり、約7万円の減収となります。

 

ただ、定期客収入と合わせれば約11万円の増収です。よって、大津線直通客に対する乗継割引の拡大は、大津線側だけでなく東西線側の総収入をも増加させる可能性が高いのです。

 

しかし、「山科の相互利用」が大津線にもたらす1日約123万円の増収は、そのまま東西線の減収に直結するので、トータルでは東西線の収入は約112万円(年間約4億円)減ることになります。これを補うには、『京都市高速鉄道事業経営健全化計画案』の資料で公表された基準から考えて、1日6,000人程度の増客が必要です。

 

この増客・増収は、「京阪線との乗継割引の設定」によって達成されるべきです。即ち、「山科の相互利用」の見返りとして、三条京阪で京阪線と京都市営地下鉄を乗り継ぐ際に、京阪線側が一方的に乗継割引を行うようにするのです。

 

乗継割引額は普通運賃を80円引き(京阪線初乗り運賃160円の50%以内)、1ヵ月通勤定期運賃を2,050円引き(1km区間4,100円の50%以内)とし、京阪線の京都府内各駅を設定範囲とするのが妥当です。ただし、効果が不十分であれば、さらなる拡充もあり得ます。

 

これによって、京阪線が京都市営地下鉄を援護し、京都市営地下鉄が大津線を援護するという関係が構築されることになり、京阪線が間接的に大津線を援護することにもなります。従来の内部補助とは異なり、大津線の経営改善の動機づけが強まるとともに、京阪線の利用者にとっても地下鉄乗継時の運賃が値下げされるメリットがあります。

 

書籍のご案内

【大手私鉄軌道線活性化の意義】 (詳細)
データ本:330円 (税込)

 

【フリーゲージトレインの復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【北海道新幹線の復興計画】 (詳細)
データ本:275円 (税込)/ 紙本:605円 (税込・送料別)

 

[都会のローカル線の復興計画] (詳細)

データ本:324円 (税込)/ 紙本:770円 (税込・送料別)

 

【不都合な停車駅 36選】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:880円 (税込・送料別)

 

【各駅停車がローカル線を滅ぼす】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【軌道系都市交通の復興計画(前篇)】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【軌道系都市交通の復興計画(後篇)】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【高加減速車と多扉車の復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【ダブルデッカーの復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【遠近分離ダイヤの復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【振子車両の復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【前面展望車の復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【関空アクセス鉄道の復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【鉄道ジャーナリズムの復興計画】 (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

[転換クロスシートの復興計画] (詳細)

データ本:330円 (税込)/ 紙本:770円 (税込・送料別)

 

【「復興計画」の時刻表集(完全版)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:880円 (税込・送料別)

 

【寝台車と食堂車の復興計画(前篇)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【寝台車と食堂車の復興計画(後篇)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:682円 (税込・送料別)

 

【鉄道デザインの復興計画】  (詳細) アンチ水戸岡派必読の書
データ本:330円 (税込)/ 紙本:770円 (税込・送料別)

 

【「関西鉄道」の復興計画(前篇)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【「関西鉄道」の復興計画(後篇)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)

 

【関西経済の復興計画(鉄道篇)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:729円 (税込・送料別)


【京阪神間直通輸送の復興計画】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:770円 (税込・送料別)

 

【阪和間直通輸送の復興計画】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:770円 (税込・送料別)


【関西私鉄王国の復興計画(上巻)】  (詳細)
データ本:330円 (税込)/ 紙本:616円 (税込・送料別)

【関西私鉄王国の復興計画(中巻)】  (詳細)
データ本:330円(税込)/ 紙本:682円(税込・送料別)

【関西私鉄王国の復興計画(下巻)】  (詳細)
データ本:330円(税込)/ 紙本:682円(税込・送料別)

鉄道コム