ここが変だよ!中国鉄道時刻表vol.5を斬る

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中国鉄道時刻表vol.5が2019年11月23日より発行開始しました。

しかし中国鉄道時刻表には不十分な点がいくつもあり、はっきり言って日本人が旅行するのに使える時刻表とは思えません。

ただ冊子を作るだけでも相当な労力がかかります。同人誌を作成したことがある方、自費出版をした方はよくわかるかと思いますが、冊子を作るだけでも相当な労力がかかります。今私は中国地下鉄都市鉄道時刻表を作成していますが、フルコースで作ると160ページを超える見込みで、それを1人で捌いています(協力者募集しても誰も集まらないんだもん)。

この記事は中国国鉄に当たる中国鉄路の時刻表を書き記した中国鉄道時刻表をおとしめようや潰そうとしてとして書いているわけではありません。あくまで、親方しっかりしてください!と言う感じです。

ただ、中国鉄道時刻表には問題点が多く、はっきり言って読みにくいです。挙げればキリがありませんが、何が起こっているのか、何故そうなってしまったのかを中心に見ていきたいと思います。

そもそもどのようにして中国鉄道時刻表を制作しているのか

今回はことの経緯を説明するために、ある程度ざっくり書きたいと思います。

中国鉄道時刻表はvol.4以降、東京大学の中国鉄道時刻研究会サークルのメンバー約10名で作成しています。このうち中核となるのはA氏、B氏、C氏の3名です。

A氏は中国鉄道時刻研究会の代表で中国鉄道時刻表を作成しようと呼び掛けた発起人でいい方なのですが、こと本誌については特集や営業案内に終始しています。

一方、B氏はひとりで時刻表を制作するスキルがありますが(韓国鉄道時刻表v0l.4は本当に非の打ち所がないほど正確にできているのでオススメ)、中国鉄道時刻表はあまりにも膨大な路線を扱わなくてはならないため、路線図のみ制作しています。

またC氏は中国鉄道時刻表の時刻表本文を任されています。vol.3まではひたすら台割(ページ割り付け)のみだったのですが、vol.4以降は現地版の時刻表が廃刊になったためC氏が中国鉄路公式予約サイト12306から時刻データを収集するプログラムを1年がかりで作成しました。つまりvol.4以降の中国鉄道時刻表はC氏がいなければ発行できていないと言っても過言ではないでしょう。

このほか、特集や付録を制作するために様々な編集者がいます。

そんな彼らが列車別の時刻表を並べた現地の時刻表を並べただけでは分かりにくく、区間ごとの時刻を並べたものを作りたいということで作成したのが、中国鉄道時刻表です。

しかし編集者たちがそれぞれの担当のページで思い思いに自分のペースで書いているため、1つの雑誌と言うより合同誌を見ているかのような構成になっています。中国鉄路について知識が不十分な編集者も多い中、完全な縦割りを行ったことで中国鉄道時刻表でどのような変なことが起きているのか、見てみましょう。




変だよポイント1 冒頭から教授(制作と関係ない方)のお言葉

教授からのお言葉を頂戴できる、という点では同人誌としては画期的なことで、評価が高いと言ってもいいのだと思います。

が、その貴重なお言葉をvol.4のように巻末に掲載するのであれば当人の許可さえあれば問題ないと思いますが、1ページ目に制作に関与していないのに掲載してしまうとこの冊子はこのお言葉だけが唯一の頼りです。内容は保証できかねませんと言っているようなものです。

ではなぜこのような掲載をしようと考えたのでしょうか。1ページ目を作成したのはおそらくA氏ではないかと思いますが、通常冊子の販売促進にあたり、市販本では帯をつけて著名人の方のコメントをしれっと書くことがあります(要は客寄せパンダ)。これを模倣しようとしたようですが、帯をつけると製作費がかかってしまうため、費用節減のため表紙を開いた1ページ目に書くことにしたのではないでしょうか。

しかし、表紙を開いた1ページ目では購入時に見えないので販売促進効果は皆無ですし、この教授の知名度は東京大学関係者であればあるのかもしれませんが、東大と関係ない日本国民の99.9%以上の方は誰ソレ?レベルの人です。

はっきりいって冒頭に掲載した所で読者はこんなもの読みに来たんじゃないと思いますし、ほかのサークルからは(特に東大以外)なに調子に乗っているんだと思われかねません。

よって、教授のお言葉を載せるのは構いませんが、1ページ目に載せるのはやめるべきではないでしょうか。

変だよポイント2 路線図で高速鉄道以外の路線で高速線表記

中国鉄路では全国において高速列車CRHを運転しています。高速列車CRHで運転する車両は全ての形式でCRHから始まっているほか、高速列車CRHによる列車は列車番号でG、D、Cで始まる列車として運転しており、在来線列車とは一線を画していました。

しかし前号のvol.4発行直後の2019年1月5日ダイヤ改正より、中国鉄路では新型車両CR200JによるD列車を設定することになったのです(8月以降はウルムチ鉄路局管内でCR200JによるC列車も運転開始)。CR200Jは形式名にCR「H」のHがないことから在来線用車両であり、中国の報道でも復興号と称することはあっても高铁(高速列車)やCRHとして表記することはあり得ません。要はこれまで運転してきた在来線K列車などの置き換えによる所要時間短縮を図るための格上げ目的での設定です。このためこれまでの高速列車CRH乗り入れ線区とは異なり、高速新線の開業や既存路線の大規模改良はしていません。

つまり、CR200Jで運転する列車は高速列車ではありませんし、CR200Jの運転する線区は高速線ではありません。もっと言うと、今のところ高速列車専用線を走るCR200Jを用いた列車の運転はありません。にも関わらず、中国鉄道時刻表vol.5ではD列車またはC列車がCR200Jしか運用していない線区においても新幹線のような高速線表記をしてしまったのです。

確かに一部の検索サイトではG、D、C列車の全てを網羅する目的で高速列車路線図にCR200Jしか運転しない線区を書いていることはありますが、在来線列車であるK列車なども検索できるサイトでは高速列車路線図に表記していません。

また中国鉄路は中華人民共和国の掲げる中国特色的社会主義による全国の均等な発展を目指しています。2019年1月5日ダイヤ改正で線路改良をすることなく新型車両の投入により在来線にD列車やC列車を運転することになりましたが、今後全国に拡大し、ほぼすべての在来線でD列車かC列車を運転させようとしています。

つまり、ゆくゆくは中国鉄道時刻表のほぼ全てが高速線表記にするという選択を彼らはしたのです。そんなことして高速線表記する意味はあるのでしょうか?

もし在来線と高速線を分けて表記したいのであれば、高速列車ではないCR200JによるD列車やC列車の運転線区は高速線表記を取りやめるべきです。




変だよポイント3 時刻表本文の台割がことごとく最悪

中国鉄道時刻表の時刻表本文はvol.5全524ページ中430ページにも上り、時刻表の要ともいえるべき部分です。

が、その肝心の要の部分がことごとくヒドいのが中国鉄道時刻表なのです。

挙げればきりがないのですが、その中でも特にヒドい4点について挙げると、

  • 時刻表の並べ方に脈略がなく、次の支線を調べるには路線図に戻らないと調べられない。
  • 本線を本線の枝線扱いで書く。
  • 支線として分かれていてある程度離れると別の表に移るのに、なぜか一部だけ本線級の路線の枝線として書き見ずらくしている。
  • 2又どころか3又に分かれている区間を無理やり1つにまとめ、しかも最後は高速線と在来線を同じ表に書いて、実質5路線を1つの表にまとめてしまい何書いてるんだか本当にわからない。

などになります。

ではそれぞれどのようにヒドいのか見ていきましょう。

時刻表の並べ方に脈略がない

中国鉄道時刻表の台割は脈略がありません。なぜなら作成した路線図を基準にエリアで区切り、北京から近い順に並べただけなのです。

それが東北部方面のようにほぼ幹線は1つでそこから枝分かれしているだけであれば大きな問題にはならないのですが、北京以南では本当にただ並べただけ、隙間に押し込んだんだけという印象しかありません。

これにより、四縦四横級の中国の一大幹線である滬昆線・滬昆高速線が長沙・株州で分断されてしまい間に200ページ以上入ってしまっています。これは八縦八横級の主要幹線である京江線でも起きています。このような書き方をすると、どの路線が中国の一大幹線なのかわかりません。なお、JTB時刻表では長距離幹線は極力近くに書いているほか、JR時刻表でさえも会社境界がなければ原則続けて書きます。これは東海道・山陽本線から地方交通線の芸備線まですべて共通です。

そもそもJTB時刻表もJR時刻表もそうですが、時刻表本文は地図の並び順(九州→北海道)とは異なり、東京から西に向かい、日本海沿いを通って北に向かいますよね?そもそも中国鉄道時刻表の地図順に時刻表本文を掲載すること自体がおかしいのです。

ちなみにDブロックは華北ですが、京広線・広深港高速線が含まれています。彼らにとって広州や香港は華北ということのようです。ど素人にもほどがありますし、そんなレベルの知識で中国の鉄道を正しく語れるとは思えません。

ちなみに中国国鉄旅客営業路線一覧表では公式資料である里程表の順序を記載しています。もし中国国鉄旅客営業路線一覧表をA氏が作成しているとすると、A氏もC氏のヒドい台割に頭を悩ませているのかもしれません。

並行する全くの別路線を同表に書き、本線を支線扱いする

b01/b02表には京滬高速線・石済客専線・合蚌高速線の3線を掲載しています。合蚌高速線は京滬高速線の支線扱いであり全列車が京滬高速線に直通しているため何の問題もありませんが、石済客専線は京滬高速線に並ぶ主要幹線四縦四横の路線で、本線級の路線を本線の支線として記載してしまっているのです。これほど中国の鉄道路線を愚弄することはありません。

またその理由も本当にヒドく、京滬高速線と石済客専線が徳州東と済南市内をともに通るだけだからです。済南市内の連絡線を通して直通する列車はほとんどなく、徳州東は両線の線路がつながっていないにもかかわらず、両線を同じ表に書くのは強引にもほどがあります。もはや中国鉄道時刻表の同じ区間を走る列車を同一表に載せるというコンセプトを完全に裏切っています

日本に置き換えるなれば北陸新幹線が新大阪まで延伸した際に別線だけど東海道新幹線と北陸新幹線が京都と新大阪をともに通るから同じ表に書こうというのと同じです。そんな分かりにくい時刻表読みたいですか?東京~大宮間で線路を共用してる東北新幹線と上越新幹線が別ページ記載であることを考えれば、いかに強引なことをしているのかが日本の時刻表ファンにも分かると思います。

こんなことを平然とできるC氏が不思議すぎますし、こんなおかしなことを他の誰も止めないのです。東京大学を出ていてそれぞれ個々のハイスペック要素は持っていますが、自分の欠点は気づきもしないしチームワークもないから周りも指摘しようともしないみたいですね。

なぜわざわざ片方は本線の枝線、もう片方は単独路線として書いた…

c41/c42表は主に杭深線について記載していますが、主要都市内で複数の主要駅がある場合にはその支線も掲載しています。

しかし、このうち支線の1つである竜漳線は主要都市内で完結する支線ではなく、多くがc37/c38表に記載の贛瑞竜線に直通しています。また贛瑞竜線は高速列車CRH的には盲腸線にあたり、直通する全高速列車CRHが竜漳線に直通しています。

だったら竜漳線も贛瑞竜線同様c37/c38表記載でいいじゃん。別に竜漳線をc41/c42表に書く必要はないしその方が杭深線が見やすくなるわけだし。

3又5路線を無理に同一表に入れる

もうこのレベルまで行くと文章で説明してもトンチンカンになるだけなので、図説します。

要は、f31/f32表は以下の5路線を無理やり入れています。

中国鉄道時刻表では、本線と支線を分かりやすくするために時刻表本文で支線は1段下げて表記します。しかし、柳州で3又に分けられてしまうと、支線と支線を連続して記載することになり、非常に読みにくく初見で読めるものではありません。

また、柳州~南寧間は高速線(赤)と在来線(黒)の掲載が離れてしまっていて、こちらも時刻表本文で見ると何がなんだがさっぱりわかりません(理解するのに5回以上読みなおしたほど)

無理に分かりにくくして何か楽しいんですかね。東大卒の天才にだけ読めても日本国民の99%以上を占める東大関係者以外の人たちが読みにくければ読者は離れると思いますけど。

なぜこのような台割になってしまったのか

ここまで読まれた方はお気づきかもしれませんが、残念ながらC氏は時刻をデータとしてしか見ることができず、ただ北京から近い順に並べているだけなのです(それをA氏がC氏にしかできない職人芸と捉えているのも問題なのだが)。はっきり言ってC氏は時刻表の台割を気にかけようという意思は全くないと言って過言ではありません

そもそも時刻表とJR時刻表の台割の違いについて比較したのが50年以上の歴史の中で2019年11月に私が行ったのが史上初のようなので、そもそも台割を気にしなくてもテキトーに時刻表を並べておけばいいと考えていたのかもしれませんが、

高速列車が走り出す前は列車ごとに1往復ずつ時刻表を眺めたって読むことができたのは、長距離列車が多く1泊2日以上運転する列車が多かった中国では線区別に書くよりも列車ごとに並べた方が分かりやすく、同じページで1つの列車を完結できるというメリットがありページを移動する手間がなく列車全体を見渡すことができたのです。

かえって区間別に引きちぎりすぎて、全体像が見通せない。それが今の中国鉄道時刻表です。果たして中国鉄道時刻表は短距離旅行のための時刻表でしょうか?区間別にこだわりすぎてはいませんか?

この解決法はいたって簡単。中国鉄道時刻表にも掲載している中国鉄路公式の里程表の順序通りに時刻表を並べればいいだけ。こんな一文で済む極めて簡単なことをなぜ彼らはできないのでしょうか?

ただ唯一C氏がかわいそうだと思うのは、締め切り直前に何日も連続して徹夜して時刻表本文を作成していること。そもそもC氏がデータ取得のプログラムを構築する偉業はありますが、時刻表を正しく作成する能力はないと言わざるを得ないでしょう。そんな人に冊子の8割以上の作成を1人に任せ何日も徹夜させて〆切重視で冊子を作成しようとしたら並べただけになってしまうのもおかしくはありません。なぜ分担しようとしないのでしょうか(ちなみにJTB時刻表では各線の部ごとに担当者を分けている)。台割を私に振らせたら相当見やすくできるのに…

B氏が全て作る韓国鉄道時刻表(特にvol.4)はそんなことないんだけどなぁ…

変だよポイント4 列車編成表はスペースを使う割に内容がうすい

列車編成表と言うと、列車の編成を横に並べてそれぞれの設備について並べるのが通例です。

しかし中国鉄道時刻表ではvol.4より車両ごとに縦に並べ、11ページも費やしています。vol.3までのように横に並べておけば4ページ程度で済むものを、わざわざ資源をムダ遣いして記載しているのです。

乗降口やお手洗いの位置があるのは良いですが、なぜ車内にいるときに一番長い時間居るはずの座席についての情報が薄いんだろう。

はっきり言って座席数を記載しても高速列車CRHは自由席がないので意味がほとんどありません。むしろ何人掛けの座席が並んでいるかの方がよほど重要です(もっともシートピッチや座席幅の記載まであればベスト)。

要するに、編成表が中途半端に細かすぎて何を言いたいのか分からないんです。座席等級を見たいのならJTB時刻表やJR時刻表のように1文字略号で横に記載するべきですし、座席図にするならきちんと書いてほしい(その移行期なのかもしれませんが)。結果編成の全体像がわからなくなっています。

このほか、営業案内に高速列車の料金表が早見表も含めて一切なく、実際に時刻表を利用して中国鉄路を利用するように作られてるとは思えません。読者を置いてけぼりにしてただ並べる、それが中国鉄道時刻表の実態です。

一応同誌は同人誌として発行していますが、同人誌ってみんなで共有して盛り上がるところまでが役割であって、自己満足の欲求を満たすためだけのものではないはずなんだけど…


なぜ公表するに至ったのか

そもそもこれらの問題は、vol.5で新規発生した教授の推薦のお言葉の1ページ目記載問題以外はほぼvol.4以前からある問題であり、中国鉄道時刻研究会には2度ほどメールで改善点の要望をメールで送付しています(最近では2019年3月に実施)。

そのメールを確認するのは代表のA氏なのですが、A氏に聞く耳がないわけではありません。表紙の中国国鉄10万キロの記載では各版ごとにどれくらい伸びたのか分からないから11万キロに変えてみてはどうかとか、表番号総覧で一部区間しか開業していない路線が引けないと指摘したらvol.5より一部未開業の表記を追加するなど、改善が図られている部分もあります。これらのページはA氏が担当している範囲だからできることだとだと思われますが、繰り返しになりますがA氏は良い人です。

しかし自分の関わっていない部分については、A氏から各担当の編集者に伝えていないのか伝えていてもみんな無視してしまうのかわかりませんが、少なくとも中国鉄道時刻表本文に反映していないのは事実です。せっかく中国の鉄道を日本にみなさんに知らせるチャンスなのに、自ら潰してはもったいないと思いませんか?

そうなると中国鉄道時刻研究会にメールで指摘しても限界があり、もはやメールで指摘するだけでは困難であると判断、公にすることでB氏やC氏などほかのメンバーにも伝わるのではないかと思い記事にしています。

はっきり言って現状では中国鉄道時刻表を積極的に薦めようとは思えないし、今後検討している韓国鉄道時刻表に地方別会社線として首都圏電鉄・地下鉄の時刻表本文を作成し掲載しようという気にはなれません。

私は中国鉄道時刻表編集者名簿に載っている人ではあるのですが、今回の掲載にあたり除名になったとしたら中国鉄道時刻研究会はその程度のサークルだということを物語るにほかなりません。

今後中国鉄道時刻表が日本人に読みやすい時刻表になることを祈ります。

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