【JR西】“WEST EXPRESS 銀河”詳細発表・夜行列車の革命なるか?

スポンサーリンク

構想が発表されて以来、多くのファンに期待されている“WEST EXPRESS 銀河”。

JR西日本のプレスリリースにより、デビュー時期・運転区間の詳細が明らかになっています。

今までの観光列車とも在来線特急とも違う新しい体系のこの列車を考察していきます。

最初の運行区間は京都大阪⇔出雲

2020年5月8日の運行開始から同年9月までは、下り列車が京都発出雲市行、上り列車が出雲市発大阪行として運転され、週2往復程度としています。

下り列車については京都21時ごろ〜出雲市9時半ごろとされており、京都・大阪・神戸などで仕事終わりでも乗り込めるようなスケジュール設定ですね。

一方で、上り列車については出雲市16時ごろ〜大阪6時ごろとなっており、所要時間としては更に長くなっています。

2020年10月〜2021年3月にかけては、詳細は未発表なものの、関西と山陽を結ぶ昼行特急として運転予定であることが明らかにされました。

停車時間はかなり長い!?

おおよその運転時刻が明らかになった出雲方面の運行ですが、通常の特急列車として走行した場合=サンライズ出雲号などと比較すると、停車時間をかなり長く設定している印象です。

特に下り列車については朝食時・上り列車については夕食時に跨っていますので、それぞれの食事需要をどう満たすのかもポイントとなりそうです。

この区間では、2018年9月に「サンライズ出雲93号」が臨時列車として設定されたことがあり、この列車の設定背景こそが“WEST EXPRESS 銀河”の試金石なのではないかと推測する声もありましたが、見事に的中でしょう。

京都駅22時発→出雲市駅9時半着というスケジュールもこの列車にかなり近いものとなりました。

「サンライズ出雲93号」では、姫路駅・米子駅で“おもてなし”の一環として弁当類販売・駅そば延長営業・特産品販売などが併せて行われていました。

“WEST TRAIN 銀河”の車内外のイベントについても気になるところですね。

関西対島根・出雲方面の鉄道事情

関西圏から出雲方面は、鉄路は距離の割に不便さが目立ちます。

最短経路となりそうな山陰本線は単線非電化となっている為に直通特急はなく、鳥取・倉吉方面には智頭急行線経由のスーパーはくと号が直通しているものの、島根・出雲方面には岡山で伯備線経由のやくも号に乗り換える必要があり、所要時間も4時間程度必要です。

JR西日本エリアでは、東西方面の幹線として山陽新幹線や山陽本線がある一方、南北方向の移動が必要な路線については単線非電化ばかりと設備で大きく劣ります。

陽陰連絡で唯一の電化路線である伯備線がメインルートとなりますが、4時間かかって自由席でも1万円超え。

乗り換えの存在に加え、費用対速達性のバランスは芳しくありません。

山陽自動車道に加えて中国自動車道も存在する道路網は強く、昼行の路線バスで5時間半程度で閑散期だと5000円前後で設定されている日も多く存在します。

既存のアクセスの抜本的な改善は出来ないものの、列車自体に付加価値を与えることで伸びしろがある区間ではないでしょうか。

新幹線に並行する長距離特急

続いての運転区間である山陽方面ですが、こちらは東海道・山陽本線を一路西へ向かい、大阪と下関を結びます。

この区間の移動手段としては山陽新幹線が定番であり、在来線を使用して長距離移動するのは青春18きっぷユーザーくらいでしょう。

並行在来線が第三セクター化されるのが当たり前となっている昨今、新幹線と完全に競合する区間で長距離特急列車が設定されるのは異例ですね。

踊り子号の東京駅〜熱海・三島駅間、草津号の上野〜高崎駅間、JR九州の各特急の小倉〜博多・博多〜久留米・熊本〜八代などの競合している例こそあるものの、いずれも支線への乗り入れが前提の列車です。

全区間が競合している特急列車としては最近運転を開始したらくラクはりま号や、高崎線のスワローあかぎ号などの通勤特急がありますが、短距離特急です。

新幹線開業後も運行されていた長距離・全区間競合の列車としては、JR東日本・JR東海が運転していた特急東海号が存在したものの、既に廃止されています。

出雲方面については移動手段としても価値がある区間ですが、この山陽区間での運行については自社の大動脈と完全並行という明らかに不利な状況でどこまで利用者を生み出せるかが試されることでしょう。

移動することだけではなく、乗って楽しんでもらうという付加価値を付けることで新幹線とは違うターゲットを狙うという点で、“WEST EXPRESS 銀河”のポテンシャルが測られます。

なお、JR西日本の鉄道事業稼ぎ頭である山陽新幹線は、リニアの大阪延伸や北陸新幹線の全通が進んだ場合に利用状況が一変するという見方が有力です。

現在はローカル輸送と貨物輸送が中心な山陽本線。

完全並行の昼行特急で山陽本線の新たな活路を模索しているのかもしれませんね。

改造車の車齢から考える今後の展開

今回の改造ベースとなっているのは、京都エリアで波動用として活躍していた117系T2編成です。

新快速の看板車両として登場した117系ですが、車齢40年近くとなっており、いつ引退してもおかしくない車両です。

それにも関わらず、JR西日本では外装・内装に多額の費用を投じて大規模な改造を施してこの列車をデビューさせています。

推測の域を出ないものの、もし今回の“WEST EXPRESS 銀河”が成功した場合、定期検査施工時期などのタイミングで新型車両による置き換え・本数増加がされる可能性に期待が持てます。

一方、もし期待していた利用者数に届かなかった場合も、車両の老朽化として運転を打ち切ることが出来ます。

新しい運転体系の列車を投入する際に既存車両を改造する例は比較的多いですね。

夜行列車網の再構築に期待する声も

ブルートレイン衰退の背景に、高速バスに比べて高額だった運賃以外の寝台料金などが利用者離れを加速させたのではないかとも言われています。

一方で、電車化されたサンライズ出雲号は、ビジネスライクな設計にも関わらず女子旅などで話題を集めているのも皆様ご存知の通りです。

電車化・寝台料金不要の方式により大きな課題がいくつか解消されている一方で、深夜帯の駅員配置や保線作業間合いの確保などの解決すべき課題も考えられますね。

バス運転士不足が叫ばれている昨今、夜行列車の諸問題の解決が実現すれば、日本全国で新たな夜行列車網が再構築される可能性を秘めていると言えそうです。

従来の寝台特急より安い上に、乗車自体が楽しい列車であれば勝算はかなりあるのではないでしょうか。

“WEST EXPRESS 銀河”は今後のJR各社に革命をもたらすかもしれません。

関連記事はこちら

サムネイル画像;2019年3月のJR西日本プレスリリース画像より

コメント

  1. 371系あさぎり より:

    リニアが予定通り2027年に開業すれば、その頃にはサンライズ瀬戸・出雲に
    使われている285系は車齢30年を迎え、置き換えを考える時期になります。
    もしかしたらそれを見越して需要を測っているのではないでしょうか。

    個人的にはリニアが開業すれば、東京~名古屋間の運転は廃止しても良いと思います。
    代わりにリニアにリレーする形で、出雲や下関、松山に直通できれば利便性も高まると思います。