カメラを向けた山際の向こうに煙が見えた時の緊張感は半端なく、微かにドラフトが聞こえて来る頃に興奮は頂点に達するのです。
ピントは良いか?露出は良いか?
ファインダーを覗き最後の確認
カーブを曲がって来た!
少し震える手でレリーズを握りしめる。
フイルムを巻き上げ 一枚 また一枚とシャッターを切る
少しの不安
もう成るようにしかならない
急に降り出した雪で辺りは雪化粧を始め、雪で視界も少し悪くなっていたのに気づいたのはC57が通り過ぎた後からでした。
峠を登るC57は歩くくらいのスピードで
吐き出す煙は真っ直ぐに上がります。
谷間を渡る風は意地悪で
一瞬にしてC5711の煙は横に流れてしまいました。
生野峠を越えるC57は、峠道を一歩・一歩と踏みしめるような確実な足取りで25‰の連続急勾配を登り、見ている者に大いなる感動を与えてくれたものでした。
決して復活蒸機では再現できない光景です。
撮 影 : 1972年冬