「大津線」とは、京阪電気鉄道の京津線（御陵―浜大津間7.5km）と石山坂本線（石山寺―坂本間14.1km）の総称であり、京阪本線をはじめとする「京阪線」と区別されます。
かつての京津線の営業区間は京津三条―浜大津間11.1kmでしたが、1997（平成9）年10月11日、京都市営地下鉄東西線の開通に合わせて京津三条―御陵間が廃止され、京阪線から孤立する形になりました。
翌12日以降は、京津線の列車が御陵から東西線の京都市役所前まで直通するようになりました。現在は太秦天神川までの乗り入れが主となっています。
東西線開業前の大津線は、輸送人員・収入ともに京津三条―京阪山科間で大津線全体の約半分を担っていました。東西線乗り入れと引き換えに収益区間の大部分が廃止されたため、大津線の輸送人員と収入は激減し、赤字が大幅に拡大しました。
その後、ワンマン運転の実施などによる経費削減が進められて収支は改善傾向にあるものの、2009（平成21）年度の時点で依然として年間約13億円の赤字を計上しています（『鉄道統計年報』）。西鉄貝塚線の同じ年の赤字額が約2億円と報告されているので桁違いの金額です。
にもかかわらず大津線の存続が可能なのは、京阪線からの内部補助が行われているためです。しかし、内部補助には、赤字線単独での経営改善意欲を低下させる側面があります。「大津線唯一の収益区間の廃止」という形で、これはすでに現実のものとなっています。
そうした負の連鎖を繰り返さないためにも、将来的には大津線の分社化を行うことが望まれます。実際、京阪は2004（平成16）年秋を目途に大津線を分社化する構想を打ち出したことがあります。ところが、現在に至るまで進展はなく、無期延期へと方針転換した節があります。
そのことを間接的に示しているのが、2018（平成30）年3月17日に行われた京阪大津線の駅名変更です。具体的には、4つの駅が以下のように改称されています。
・浜大津→びわ湖浜大津
・別所→大津市役所前
・皇子山→京阪大津京
・坂本→坂本比叡山口
この中で注目すべきは「皇子山→京阪大津京」です。これは隣接するJR湖西線に合わせたものであり、接続駅であることを明確にするために、いずれは必要とされた改称です。ただ、それがこのタイミングでなされたのは意外でした。
駅名の改称は、該当駅と隣接駅の駅名板だけでなく、各駅の運賃表などの更新を伴うため、馬鹿にならない費用を要します。分社化を行うのなら、それに合わせて実施するのが適切な対応です。にもかかわらず現社名を冠した駅名を付したのは、当面の間分社化を行う予定がないからだと判断せざるを得ないのです。
また、石山坂本線用の600形・700形車両は主に京阪線の旧標準色を、京津線用の800系車両は水色を基調とした独自の車体色をまとっていましたが、駅名の改称と前後して京阪線の新標準色と同じ塗り分けに改められつつあります。
京津線800系車両
このことからも、大津線があくまでも京阪の直営であることを明確化しようとする意向が感じられます。しかし、路線が分断された状態でそれを進めるのは、本末転倒のように思われてなりません。
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