京成の千原線は千葉中央―ちはら台間10.9kmの路線であり、千葉線の列車の約半数が乗り入れます。千葉線とは異なり全区間単線ですが、複線化用地は確保済みです。
千原線の前身は、千葉・市原ニュータウンのアクセス鉄道として京成電鉄グループが資本金の過半数を負担し設立させた第三セクターの千葉急行電鉄です。まず1994(平成2)年4月1日に千葉中央―大森台間4.2kmが開業し、その3年後にちはら台までの6.7kmが延伸されました(『鉄道ピクトリアル』1997年1月臨時増刊号)。
しかし、ニュータウンへの入居の遅れなどが影響して千葉急行電鉄の利用は伸び悩み、債務超過に陥って経営破綻し、1998(平成6)年10月1日をもって解散しました。同日に、筆頭株主だった京成電鉄が経営を引き継ぎ、現在に至ります。
佐藤信之「ニュータウン鉄道の挫折 千葉急行電鉄の事業譲渡について」(『鉄道ジャーナル』1998年11月号収録)によれば、千原線に関わる京成の負担は「600億円を要した阪神電気鉄道の震災復旧に匹敵する金額(災害復旧補助金が交付された)」とのことです。
千原線には、さらに南下して小湊鉄道の海士有木(あまありき)に至る計画がありますが、とてもそれを進めるどころの話ではありません。
千原線が特徴的なのは、京成の一路線となった後も千葉急行電鉄時代の運賃体系を引き継いでいることです。具体的には、運賃水準自体を高く設定するだけでなく、千葉線に直通する際の運賃を通算距離で計算せずに、千葉中央で打ち切って合算する形が採られています。
これは事実上別会社の路線を乗り継いでいるのと変わらない状態であり、利用客にとってはありがたくない話です。ただ、千原線が多額の累積赤字を抱えており、その解消の見通しが不透明である以上、路線単位での収支状況を明確化するのは重要なことです。その意味では、安易に運賃を一本化していないことはむしろ評価されるべきです。
2016(平成28)年の千原線の1日あたり駅別乗降人員は以下の通りです。各駅とも開業当初よりは大幅に増加していますが、絶対数としてはまだまだそれほどの水準ではありません。
千葉寺4,747人
大森台2,800人
学園前4,786人
おゆみ野4,870人
ちはら台5,716人
これに対して、学園前とおゆみ野から2km弱の地点にあるJR外房線の鎌取は1日40,748人の乗降人員があり、千葉中央を除く千原線全駅の合計値よりも多くなっています。鎌取はニュータウンの北の外れに位置しているものの、千葉駅までの普通運賃が200円と安く、強い競争力を持っています。
千原線も、特に需要の見込める京成千葉までの運賃を、千葉寺・大森台からは50円、学園前・おゆみ野・ちはら台からは70円を合算額より割り引いていますが、それでも例えば学園前―京成千葉間は320円+140円-70円=390円(切符購入の場合)と、鎌取―千葉間の倍近くになってしまいます。
ここは折衷策として、千原線と千葉線にまたがる際の運賃計算の分界点を千葉中央から京成千葉に変更するべきではないでしょうか。この場合、学園前―京成千葉間は320円まで下がります。
反面、京成千葉からJRの総武本線へ旅客が流出するリスクは高まりますが、それは千葉線を介して千原線と本線を直通する優等列車を設定することで対処すべき問題です。
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