京成千葉線の実態 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

京成電鉄の千葉線は、京成津田沼で本線から分岐して千葉中央に至る12.9kmの路線です。千葉線の開業自体は成田へ向かう本線よりも早かったのですが、社名が「京葉」ではなく「京成」であることが物語っているように、あくまでも支線として扱われてきました。

 

 

特に、1972(昭和47)年に総武快速線が開業してからは、京成千葉線は千葉市と東京都心部を結ぶ都市間鉄道としての機能を事実上失ってしまいました。現在は全列車が各駅停車で、本線との直通列車も限定的です。

 

2006(平成18)年12月からは系列会社の新京成電鉄の列車が、松戸から京成津田沼を介して千葉中央まで直通運転を開始しました。ただし、新京成からの片乗り入れであり、京成の車両は新京成線には入りません。

 

この影響もあって、昼間時に10分毎に走る列車の半数が直通を行うに留まっています。もっとも、直通しない列車同士も昼間時は京成津田沼の同一ホームで接続するため、それほど不便ではありません。

 

新京成線は、終点の松戸を含めた全駅が千葉県内にあり、県都である千葉市へは一定の需要があります。松戸―京成津田沼―千葉中央間は60分強を要しますが、それでも最速かつ最安のルートであり、JRとは異なる輸送領域を開拓することに成功しています。

 

今後はこれを京成との相互直通へと発展させ、昼間時の全列車を直通させることが望まれます。京成千葉線は一部の駅を除いてホーム有効長が6連分しかなく、かつて新京成線に存在した8両編成は入線できませんでしたが、現在は6両編成に統一されているため、この点でもハードルは低くなっています。

 

一方で、対東京における京成千葉線の競争力は向上しないままです。2016(平成28)年の1日あたり駅別乗降人員(右のJRの数値は乗車人員の2倍・太字は快速停車駅)は以下の通りであり、JRの総武本線に圧倒的な差をつけられていることが分かります。

 

京成津田沼58,518人・津田沼207,404人

京成幕張本郷15,579人・幕張本郷56,594人

京成幕張8,124人・幕張31,460人

検見川(けみがわ)3,928人・新検見川46,010人

京成稲毛6,913人・稲毛101,028人

みどり台7,227人・西千葉45,442人

西登戸(にしのぶと)2,577人

新千葉1,792人

京成千葉28,118人・千葉210,410人

千葉中央17,287人

 

京成千葉駅は、1967(昭和42)年の開設当初からJR発足までの間、「国鉄千葉駅前」を名乗っていましたが、まさにその通りの力関係であり、駅名改称後もこれは変わっていません。

 

京成の本線は津田沼から成田への最短ルートをたどっているため、この区間では逆にJRより優勢です。しかし、成田市の居住人口約13.3万人に対し、千葉市は県庁所在地の政令指定都市だけあって約97.5万人と、7倍以上の規模です。そこから派生する旺盛な輸送需要が他社に流れ続けるのを黙って眺めていてよいものでしょうか。

 

首都圏の大手私鉄は輸送力の面でJRに及ばず、過密運転を伴う朝ラッシュ時にはスピード面でも大きく差をつけられています。京浜急行の横浜―品川間や京王八王子―新宿間がその典型ですが、運転間隔に余裕のある昼間時には優等列車を高速で運転し、JRと互角に渡り合っています。初めから競争を諦めている京成千葉線とは気構えが異なります。

 

客単価の高い昼間時の競争力を高めることは経営戦略としても重要です。また、週休二日制の浸透などにより定期券から回数券などへの切り替えが見られる昨今では、朝ラッシュ時にはJRに歯が立たなくても、帰宅時の片道需要を取り込める可能性が高まっています。座席指定券を発行する「京急ウィング号」や「京王ライナー」などはその好例です。

 

京成も成田方面では成田スカイアクセス線を開業させ、「スカイライナー」を私鉄最高の160km/hで運転したり、その間合い運用で本線経由の「モーニングライナー」「イブニングライナー」を走らせたりといった積極策を展開していますが、千葉線にはその恩恵が及んでいません。

 

「スカイライナー」が成田スカイアクセス線に移ったことで本線のダイヤが組みやすくなった今こそ、本線と千葉線を直通する優等列車を設定すべきです。

 

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